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by nicoxz

ナイキ株が13%安、ホルムズ危機で最も売られた銘柄

by nicoxz
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はじめに

2026年3月12日、ダウ工業株30種平均は前日比739ドル安の4万6677ドルで取引を終えました。イラン情勢の緊迫で原油価格がブレント原油で100ドルを突破し、市場全体にリスク回避の動きが広がりました。

この大幅安の中で、ダウ構成銘柄の「負け組」として際立っているのがナイキです。2月27日の米軍によるイラン攻撃開始から10営業日連続で下落し、株価は2月末比で13%安に沈みました。同期間のダウ平均の下落率5%を大きく上回る水準です。

なぜナイキがこれほどまでに売り込まれたのか。原油高がもたらす消費者心理の冷え込みと物流コスト上昇という二重の逆風を分析します。

ダウ平均739ドル安の衝撃

3月12日の市場全体

3月12日の米国市場は全面安の展開でした。ダウ平均は739ドル(1.56%)安、S&P500は1.52%安の6672ポイント、ナスダック総合は1.78%安の2万2311ポイントで取引を終えています。

この下落を引き起こした直接の要因は、ペルシャ湾北部のイラク領海付近で外国籍タンカー2隻が攻撃を受けて炎上したことです。さらに一晩で3隻の船舶がペルシャ湾内で被弾し、ここ2日間で合計6隻の船舶が攻撃を受ける事態となりました。

これを受けてWTI原油先物は一時前日比11%高の97.19ドルまで急伸し、ブレント原油は100ドルを突破しました。

IEA備蓄放出も効果なし

国際エネルギー機関(IEA)が4億バレルという過去最大規模の戦略石油備蓄放出を発表しましたが、市場の沈静化には至りませんでした。ホルムズ海峡の通航量が通常の1日約35隻から3隻にまで激減しており、日量約1620万バレルの原油供給が途絶えている状況では、備蓄放出だけでは焼け石に水です。

ナイキが「最も売られた銘柄」になった理由

消費者の財布を直撃する原油高

ナイキが大きく売られた最大の理由は、原油高が消費者の購買力を直接圧迫するためです。米国のガソリン価格は3月に入り前月比21%上昇し、1ガロン3.54ドルに達しました。ブレント原油が100ドルを超えたことで、さらなる値上がりが見込まれています。

ガソリン代の上昇は、消費者の可処分所得を奪います。生活必需品への支出が増える中で、真っ先に削られるのがスニーカーやスポーツウェアといった「消費裁量品(ディスクレショナリー)」です。ナイキはまさにこのカテゴリーの代表銘柄であり、原油高の局面では構造的に売られやすい立場にあります。

物流コストの急上昇

ナイキのビジネスモデルは、ベトナムやインドネシアなどアジアの生産拠点から世界中の消費者に製品を届けるグローバルサプライチェーンに依存しています。ホルムズ海峡の事実上の封鎖により、国際海運大手のマースクやハパックロイドはすでに中東航路を停止しました。

これにより、アジアから欧州・中東への海上輸送ルートが大幅に迂回を強いられ、輸送日数の増加と運賃の高騰が同時に発生しています。原油価格の上昇はバンカー燃料(船舶燃料)のコストも押し上げるため、ナイキの利益率にはさらなる圧迫要因となります。

もともと抱えていた構造的課題

ナイキの株価下落は、イラン情勢だけが原因ではありません。同社は2022年9月以降、4年連続で株価が下落しており、2025年末時点でピークから約57%下落していました。

主な構造課題としては、中国市場での販売不振、在庫過剰による値引き販売の常態化、HokaやOnといった新興ブランドとの競争激化が挙げられます。2026年2月27日には、3億ドルの税引前費用計上を伴うリストラ計画も発表しており、投資家の信頼回復には至っていません。

イラン情勢の悪化は、こうした既存の弱点を持つナイキに追い打ちをかける形となりました。

他のダウ構成銘柄との比較

エネルギー関連は「勝ち組」

同じダウ構成銘柄でも、セクターによって明暗が大きく分かれています。シェブロンは原油高の恩恵を直接受け、3月11日には1.14%上昇しました。エネルギーセクター全体ではWTI原油が週間で35%という歴史的な急騰を記録する中、株価は大幅に上昇しています。

消費関連は軒並み軟調

一方、ウォルマートやアメリカン・エキスプレスなど消費者向けのダウ構成銘柄は軒並み軟調です。ガソリン価格の上昇が個人消費を冷え込ませるとの懸念から、消費裁量品セクター全体に売り圧力がかかっています。

ゴールドマン・サックスやキャタピラーも大きく下落しており、景気後退リスクへの警戒感が金融・製造業セクターにも波及しています。

注意点・展望

ナイキ株の今後を占う上で、いくつかの重要な変数があります。

第一に、ホルムズ海峡の通航再開の時期です。イランの新最高指導者がホルムズ海峡の閉鎖を「圧力のツール」として維持すると宣言しており、短期的な正常化は期待しにくい状況です。

第二に、原油価格の推移です。ゴールドマン・サックスは原油価格の見通しを引き上げており、「史上最大の供給ショック」とまで表現しています。原油高が長期化すれば、ナイキへの逆風も続きます。

ただし、一部のアナリストはナイキ株をむしろ「逆張りの買い機会」と評価しています。3月11日にはウォール街から「型破りな格上げ」を受けており、現在の株価水準が悲観を織り込みすぎているとの見方もあります。

まとめ

ナイキの10営業日続落・13%下落は、イラン情勢が「エネルギー」と「消費」の二重経路で株式市場に影響を与えていることを象徴しています。原油高→ガソリン高→消費減退という連鎖と、海上輸送コスト上昇による利益率圧迫が、消費裁量品の代表銘柄であるナイキを直撃しました。

投資家は、イラン情勢の進展と原油価格の推移を注視しつつ、個別銘柄のファンダメンタルズも冷静に見極める必要があります。ナイキが「売られすぎ」なのか、それとも構造的な業績悪化を織り込んでいるのか、慎重な判断が求められる局面です。

参考資料:

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