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by nicoxz

NY原油が100ドル再接近、タンカー炎上で市場混乱

by nicoxz
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はじめに

2026年3月12日、国際原油市場に再び激震が走りました。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物が一時前日比11%高の1バレル97.19ドルまで急伸し、100ドルの大台に迫りました。ブレント原油は100ドルを突破し、2022年8月以来の高値を記録しています。

イラク領海付近でタンカーが攻撃を受けて炎上し、ペルシャ湾全体で船舶への攻撃が激化していることが直接の引き金です。ゴールドマン・サックスが「史上最大の供給ショック」と表現するこの危機の全容と、世界経済への影響を解説します。

タンカー攻撃の連鎖が市場を揺るがす

3月12日の被害状況

3月12日、イラク南部のバスラ沖で外国籍タンカー2隻が正体不明の攻撃を受け、うち1隻が炎上しました。被弾したタンカーの1隻は、イラク産燃料油を積載していた「Safesea Vishnu」と特定されています。

さらに同日夜、ペルシャ湾内で3隻の外国籍船舶が新たに攻撃を受けました。過去2日間で合計6隻の船舶が被弾するという異常事態です。イラク当局はバスラの石油ターミナルでの操業を停止する判断に追い込まれました。

ホルムズ海峡の通航激減

ホルムズ海峡を通過する船舶は激減しています。3月10日にホルムズ海峡を通過して原油・石油製品を運び出したタンカーはわずか3隻で、通常の約35隻から90%以上の減少です。

3月1日のイラン革命防衛隊による最初のタンカー攻撃以来、国際海運大手のマースクやハパックロイドは中東航路を停止しました。ホルムズ海峡は世界の原油輸送量の約2割に当たる日量約1500万バレルの原油と500万バレルの石油製品が通過する要衝であり、その事実上の封鎖は世界のエネルギー供給に甚大な影響を与えています。

原油価格の乱高下と「史上最大の供給ショック」

価格推移のタイムライン

2月末のイラン攻撃開始以降、原油価格は乱高下を繰り返しています。主な動きを振り返ります。

3月1日にホルムズ海峡で最初のタンカー攻撃が発生し、原油価格が急騰を開始しました。3月6日にはブレント原油が100ドルに迫り、WTI先物は一時22%高の111ドル台を記録する場面もありました。3月8日にはG7が備蓄放出を含む「必要な措置を講じる用意がある」と表明し、一時的に価格が下落しました。

3月10日にはIEAが4億バレルの過去最大規模の緊急備蓄放出を発表しましたが、市場の沈静化には至りませんでした。そして3月12日、タンカー炎上を受けてWTIが97ドル、ブレントが100ドルを再び突破しました。

ゴールドマンの警告

ゴールドマン・サックスはこの供給途絶を「史上最大の供給ショック」と位置づけ、原油価格の見通しを引き上げました。現在のペルシャ湾からの輸出減少は日量1620万バレルに達しており、1973年の石油危機、1980年のイラン・イラク戦争、1990年のイラクによるクウェート侵攻時の供給減少をいずれも上回る規模です。

株式市場への波及

ダウ平均739ドル安

原油高と景気後退懸念の高まりを受け、3月12日の米国株式市場は全面安となりました。ダウ平均は739ドル(1.56%)安の4万6677ドルで取引を終え、2026年の最安値を更新しました。S&P500は1.52%安、ナスダック総合は1.78%安と主要3指数がそろって大幅下落しています。

セクター別の明暗

セクター別では明暗がくっきり分かれています。エネルギーセクターはWTI原油の週間35%急騰という歴史的な価格上昇を受けて大幅高となりました。一方で、消費裁量品、航空、製造業セクターは軒並み売られています。

航空会社は燃料費の20〜30%増加に直面し、海運会社はバンカー燃料費の高騰で収益が圧迫されています。製造業は原材料コストの上昇を価格転嫁できるかが焦点となっています。

金融セクターにも波及

注目すべきは、大手金融機関のプライベートクレジットファンドが投資家の解約制限(ゲート条項)を発動したことです。流動性への懸念が金融セクターにまで広がっており、リーマンショック後に見られた連鎖的な信用収縮の再来を警戒する声も出始めています。

日本経済への影響

エネルギー安全保障の試練

日本はエネルギー輸入の約9割を海外に依存しており、そのうちの大部分がペルシャ湾を経由しています。ホルムズ海峡の事実上の封鎖は、日本のエネルギー安全保障にとって戦後最大級の試練です。

原油高、円安、景気減速の「三重苦」に直面するリスクが指摘されています。原油価格の上昇は電気料金やガソリン価格を押し上げ、家計を圧迫します。企業にとっても、輸送コストと原材料コストの同時上昇は収益を大きく悪化させる要因です。

注意点・展望

原油価格の今後を左右する最大の変数は、ホルムズ海峡の通航再開時期です。3月12日、イランの新最高指導者がホルムズ海峡の閉鎖を「圧力のツール」として維持すると宣言しており、早期の正常化は困難な情勢です。

IEAによる過去最大の備蓄放出は一定の抑制効果を持つものの、日量1600万バレル超の供給途絶を完全に補うことはできません。備蓄の放出は有限であり、長期化すれば備蓄の枯渇というさらなるリスクも浮上します。

一方で、トランプ大統領が「戦争は終わりに近づいている」とのシグナルを発した3月9日には市場が一時的に反発しており、外交的解決への期待も完全には消えていません。投資家は地政学リスクと外交進展の両方のシナリオに備える必要があります。

まとめ

WTI原油が97ドルに達し100ドルに再接近した3月12日の市場は、ホルムズ海峡危機がいまだ収束の兆しを見せていないことを改めて突きつけました。タンカーへの攻撃は激化しており、世界のエネルギー供給は1970年代の石油危機を超える規模の途絶に直面しています。

ダウ平均739ドル安が示すように、原油高の影響はエネルギー市場にとどまらず、消費、金融、製造業など幅広いセクターに波及しています。日本を含む世界経済にとって、この危機の行方は2026年の景気見通しを左右する最大のリスク要因です。

参考資料:

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