三井住友銀行がAIオペレーター導入、邦銀初の24時間対応
はじめに
三井住友銀行は2026年2月18日、生成AIを活用した顧客対応サービス「SMBC AIオペレーター」を2月25日から提供開始すると発表しました。個人向け総合金融サービス「Olive」の問い合わせ窓口に導入され、土日祝日を含む毎日24時間、AIが電話応対する仕組みは邦銀で初めてです。
従来のコールセンターでは、営業時間外や混雑時に顧客が待たされるケースが課題でした。生成AIの進化により、音声で自然な対話ができるAIオペレーターが実用段階に入ったことで、銀行のカスタマーサポートは大きな転換点を迎えています。本記事では、SMBC AIオペレーターの仕組みや対応範囲、開発体制、さらに銀行業界全体のAI活用の動向を解説します。
SMBC AIオペレーターの概要と特徴
人間に近い自然な対話を実現
SMBC AIオペレーターの最大の特徴は、従来の自動音声応答(IVR)とは異なる「人間らしい対話能力」です。通話相手の口調や言葉遣いに応じて、言い回しや声のトーンを自動的に調整します。
さらに注目すべき機能として、AIが回答中に相手から話しかけられた場合、回答を中断して発言を聞く「割り込み対応」があります。通常のAI音声システムでは、AIが話している間は利用者の発言を受け付けないケースが多く、これが「機械的で不自然」という印象につながっていました。SMBC AIオペレーターではこの課題を克服し、人間同士の対話に近いスムーズなやり取りを実現しています。
加えて、通話に混じる雑音の影響を抑える仕組みも備えています。外出先や騒がしい場所からの電話でも、正確に音声を認識して適切な回答を生成できます。
対応範囲と運用体制
第一段階として、Oliveに関する一般的な照会業務から対応を開始します。具体的には以下の内容が対象です。
- Oliveのサービス内容に関する質問
- 年会費の確認
- 各種キャンペーンや特典の概要説明
- 申込・切替に関する手続きの案内
これらはいずれも本人確認が不要な一般的な照会です。一方で、口座残高の確認や振込手続きなど本人確認が必要な業務や、複雑な相談については、従来通り有人オペレーターが対応します。AIと人間が役割分担する「ハイブリッド体制」を構築することで、顧客の利便性と安全性の両立を図っています。
受付時間は毎日24時間で、土日祝日も含みます。深夜や早朝、休日にOliveの利用方法を確認したい場合でも、待ち時間なく回答を得られるようになります。
開発体制と技術基盤
3社連携による開発プロジェクト
SMBC AIオペレーターは、三井住友銀行、日本総合研究所(日本総研)、日本IBMの3社が連携して開発しました。各社の役割は明確に分かれています。
日本総研はプロジェクト全体を統括し、三井住友銀行の既存システムとの円滑な連携を実現しました。金融業務とシステムの両方に精通する日本総研だからこそ、銀行の業務フローに即したAIオペレーターの設計が可能でした。
日本IBMは、AI基盤の構想策定から設計、開発までを担当しました。最新の生成AI技術と音声技術を組み合わせた「ハイブリッドアプローチ」を採用し、精密なチューニングを行っています。IBMは三井住友銀行とは長年にわたる協業関係があり、過去にもコールセンター業務へのAI導入を共同で進めてきた実績があります。
自律的な情報検索と回答生成
技術面で特筆すべきは、AIオペレーターが自ら膨大な参照データを検索し、質問に対する回答を生成する点です。あらかじめ用意されたシナリオに沿って応答するのではなく、顧客の質問内容を理解した上で、関連する情報を動的に検索して最適な回答を組み立てます。
この仕組みにより、想定外の質問や複合的な問い合わせにも柔軟に対応できます。従来の「メニューから選択してください」という画一的な対応から脱却し、顧客が自然な言葉で質問できる環境を整えました。
Oliveサービスの成長とAI導入の背景
500万アカウント突破と急拡大する顧客基盤
Oliveは2023年3月にサービスを開始した三井住友銀行の個人向け総合金融サービスです。銀行口座、クレジットカード、デビットカード、ポイント払いの機能を1枚のカードに集約し、スマートフォンで一元管理できることが特徴です。
サービス開始から約半年で100万会員を突破し、2024年2月には200万会員、2025年3月には500万アカウントを達成しました。利用者の半数が20代以下という若年層中心の構成も特徴的です。三井住友銀行はサービス開始から5年で1,200万アカウントという目標を掲げており、今後も急速な会員増加が見込まれます。
問い合わせ増加への対応策
会員数の急拡大に伴い、コールセンターへの問い合わせも増加しています。特に若年層はスマートフォンでの手続きに慣れている反面、金融サービスの仕組みについては不明点を問い合わせるケースが少なくありません。
従来のコールセンターでは、営業時間が平日日中に限られることが多く、仕事や学校のある利用者にとってはアクセスしにくい状況でした。AIオペレーターの導入により、時間帯を問わず問い合わせができるようになり、急増する顧客基盤への対応力を強化します。
銀行業界におけるAI活用の最新動向
メガバンクの取り組み
銀行業界全体でAI活用は加速しています。三井住友フィナンシャルグループは、グループ内の従業員向けにAIアシスタント「SMBC-GAI」をすでに導入しており、業務効率化に活用しています。今回のSMBC AIオペレーターは、社内向けのAI活用を顧客向けサービスに発展させた形です。
グループ会社の三井住友カードでは、ソフトバンク傘下のGen-AX社が開発した自律思考型AIオペレーター「X-Ghost(クロスゴースト)」を導入しています。年間600万件の問い合わせのうち、2028年度までに業務量の約70%をAIエージェントに置き換える計画を掲げています。
地方銀行にも広がるAI導入
AI活用はメガバンクだけにとどまりません。京都銀行は2025年2月に生成AIを活用した文書検索・回答機能を全従業員約4,300人に展開し、年間8,000時間の業務削減を見込んでいます。山陰合同銀行も生成AIを活用したコンタクトセンターの効率化に着手しました。
コールセンターのAI化は、人手不足が深刻な地方銀行にとって特に重要な課題です。顧客対応品質を維持しながらコスト削減を実現できるAIオペレーターは、規模を問わず金融機関にとって有力な選択肢となっています。
注意点・展望
現時点での制約
SMBC AIオペレーターは、現段階ではOliveの一般的な照会に限定されています。口座操作や個人情報に関わる手続きには対応しておらず、これらは引き続き有人オペレーターが担当します。AIが誤った情報を伝えるリスクも完全にはゼロにできないため、重要な手続きについては必ず公式サイトや有人窓口で確認することが大切です。
また、高齢者などAIとの会話に不慣れな利用者への配慮も求められます。有人オペレーターへの切り替えがスムーズにできる体制が、利用者の安心感を左右する重要なポイントです。
今後の拡大方針
三井住友銀行は今後、対応範囲をOlive以外のサービスや、本人確認を伴う業務にも段階的に拡大していく方針です。銀行業界全体で見ると、2026年以降はAIが処理・記録・要約・分析・改善を一つの回路としてつなげる「完全統合オペレーション」への進化が予測されています。AIは単なる便利ツールではなく、コンタクトセンターの運用インフラそのものになる時代が近づいています。
まとめ
三井住友銀行の「SMBC AIオペレーター」は、邦銀初となる24時間365日対応のAI電話窓口です。日本総研と日本IBMの技術を結集し、人間に近い自然な対話を実現しました。500万アカウントを超えるOliveの急成長に対応するため、まず一般的な照会業務から導入を開始します。
銀行のコールセンターは今、AIによって大きく変わろうとしています。利用者にとっては「いつでも気軽に問い合わせできる」環境が整うメリットがあります。一方で、AIの回答精度や高齢者への配慮など、実用化に伴う課題にも注目が必要です。まずは2月25日のサービス開始後、利用者の反応と運用実績を見守りたいところです。
参考資料:
- 三井住友銀行、「AIオペレーター」導入 24時間365日”人間らしく”電話対応へ - ITmedia NEWS
- 生成AIを活用した新たな顧客対応サービス「SMBC AIオペレーター」の提供開始について - 日本IBM
- 生成AIを活用した新たな顧客対応サービス「SMBC AIオペレーター」の提供開始について - 日本総合研究所
- 三井住友銀行 Oliveに「AIオペレーター」導入 24時間365日の自動対応を実現 - ビジネス+IT
- 個人のお客さま向け総合金融サービス「Olive」 サービス開始から2年で500万アカウントを突破 - PR TIMES
- ソフトバンク傘下Gen-AXが仕掛ける「コールセンターのAI化」。三井住友カードは7割自動化へ - Business Insider Japan
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