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by nicoxz

サプリ過剰摂取の実態と健康リスクを徹底解説

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はじめに

健康維持や栄養補給を目的にサプリメントを利用する人が増えています。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、日本人のサプリメント利用率は男性で21.7%、女性で28.3%に上り、特に50〜60代の中高年層で利用率が高い傾向があります。市場規模も1兆円を超えるなど、サプリメントは日本人の日常生活に深く浸透しています。

しかし、「食品だから安全」という認識のもとで適切な摂取量を意識しないまま利用を続けるケースが少なくありません。2026年3月、東邦大学の研究チームがサプリメントの過剰摂取に関する大規模調査の結果を公表し、利用者の約2割が摂取目安量を超えていたという実態が明らかになりました。本記事では、この調査結果の詳細と過剰摂取がもたらす健康リスク、さらには安全にサプリメントを利用するためのポイントを解説します。

東邦大学の調査が示す過剰摂取の実態

約2割が摂取目安量を超過

東邦大学医学部の朝倉敬子教授、杉本南助教らの研究グループは、サプリメント利用者の購買履歴データを活用した調査を実施しました。この研究は国際学術誌「Interactive Journal of Medical Research」に2026年3月19日付で掲載されています。

調査対象は、主要なサプリメント25製品のいずれかを過去3か月以内に購入し、過去1か月以内または定期的に使用していた18〜74歳の日本人成人2,002人です。インターネット調査を通じて購買履歴と摂取行動のデータを収集しました。

その結果、2,002人のうち18.5%にあたる371人がメーカーの定める1日あたりの摂取目安量を超えて摂取していたことが明らかになりました。ほぼ5人に1人という割合は、決して少なくない数字です。

耐容上限量の超過も多数確認

さらに深刻な問題が、「耐容上限量」の超過です。耐容上限量とは、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」で定められた指標で、健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限を意味します。日本ではビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン、葉酸、カルシウム、リン、亜鉛、銅など11の栄養素に耐容上限量が設定されています。

過剰摂取が確認された371人のうち、耐容上限量が定められている栄養素を含む製品を使用していた297人を分析したところ、そのうち約62%にあたる184人が少なくとも1つの栄養素でサプリメント由来の摂取量だけで耐容上限量を超えていました。食事からの摂取分を加えると、実際にはさらに多くの人が上限を超えている可能性があります。

過剰摂取しやすい人の特徴

研究では、過剰摂取に関連する要因も分析されています。50〜64歳の中高年層、フルタイムまたはパートタイムの有職者、錠剤タイプのサプリメント(特に単一の水溶性ビタミン錠剤)の利用者、6か月以上の長期利用者、そして意図的に推奨量より多く摂取する傾向のある人で過剰摂取のリスクが高いことがわかりました。

中高年層で過剰摂取が多い背景には、加齢に伴う健康不安から複数のサプリメントを併用するケースが増えることや、長期利用の中で「もう少し多く摂れば効果が上がるのではないか」という誤った期待が生まれやすいことが考えられます。

過剰摂取がもたらす具体的な健康リスク

脂溶性ビタミンの蓄積リスク

サプリメントの過剰摂取で特に注意が必要なのが、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)です。水溶性ビタミンは余剰分が尿として排出されやすいのに対し、脂溶性ビタミンは体内の脂肪組織や肝臓に蓄積されるため、長期間にわたる過剰摂取で深刻な健康障害を引き起こす可能性があります。

ビタミンAの過剰摂取では、急性の場合は脳脊髄液圧の上昇による頭痛や吐き気、嘔吐が生じることがあります。慢性的な過剰摂取では、皮膚の乾燥や剥脱、骨の変化、筋肉痛、疲労感などが報告されています。特に妊婦がビタミンAを過剰に摂取すると、胎児の催奇形性リスクが高まることが知られており、妊娠を計画している女性は特に注意が必要です。

ビタミンDの過剰摂取は高カルシウム血症を引き起こすリスクがあります。血中のカルシウム濃度が異常に上昇することで、食欲不振、吐き気、多尿、腎機能障害などの症状が現れることがあります。

ミネラルの過剰摂取による影響

ミネラル類の過剰摂取にも注意が必要です。亜鉛を長期にわたって大量に摂取すると、銅の吸収が阻害されて銅欠乏症を引き起こし、貧血や免疫機能の低下、神経障害などが生じる可能性があります。胃腸の不調も一般的な症状として知られています。

なお、2025年版の「日本人の食事摂取基準」では、鉄については耐容上限量の設定が見送られました。胃腸症状を除き、過剰摂取と健康障害との定量的な関係が明確でないためとされていますが、医師の指示に従わない個人の判断でのサプリメントによる鉄の摂取は控えるべきとの指摘がなされています。

東邦大学の調査で超過が多かった栄養素

今回の東邦大学の調査では、特にマグネシウム、ナイアシン、ビタミンAの各栄養素において、過剰摂取者の多くが耐容上限量を超えていたことが報告されています。ナイアシンの過剰摂取では皮膚の紅潮(フラッシング)、消化器症状、肝機能障害などのリスクが指摘されています。

複数のサプリメントを併用している場合、同じ栄養素が複数の製品に含まれていることに気づかず、結果的に過剰摂取となるケースも少なくありません。例えば、マルチビタミンと個別のビタミンサプリを同時に摂取している場合、特定の栄養素が重複して過剰になるリスクがあります。

紅麹問題を契機に進む制度改革

小林製薬の紅麹サプリメント問題

サプリメントの安全性に対する社会的関心が急速に高まったのは、2024年3月に発覚した小林製薬の紅麹サプリメント問題がきっかけです。紅麹を原料とするサプリメントの摂取により、腎障害を中心とする深刻な健康被害が多数報告され、入院者は240人以上、相談件数は延べ9万件を超える大きな社会問題となりました。

この問題の原因物質としてプベルル酸などの青カビ由来の化合物が指摘され、製造過程における品質管理の不備が明らかになりました。「サプリメントは食品だから医薬品より安全」という消費者の認識が根本から問い直される事態となったのです。

機能性表示食品制度の改正

紅麹問題を受けて、消費者庁は2024年9月1日に機能性表示食品に関する制度改正を施行しました。主な改正点は以下の通りです。

まず、サプリメント形状の機能性表示食品に対して、GMP(適正製造規範)に基づく製造管理が義務化されました。GMPとは、原料の受け入れから最終製品の出荷に至るまでの全工程において適正な製造管理と品質管理を求める基準です。これまでは「推奨」にとどまっていたGMPが「義務」へと格上げされた形です。完全施行は2年間の経過措置期間を経て2026年9月1日からとなります。

さらに、機能性表示食品により発生したと考えられる健康被害について、医師の診断がある場合はすべて報告することが義務付けられました。これにより、健康被害の早期発見と迅速な対応が可能になることが期待されています。

安全にサプリメントを利用するための注意点

摂取目安量を守ることの重要性

今回の東邦大学の研究が示す最も重要なメッセージは、メーカーが定める摂取目安量を守ることの大切さです。「多く摂ればより効果がある」という考えは誤りであり、過剰摂取はかえって健康を損なうリスクを高めます。

特に錠剤やカプセルの形状をしたサプリメントは、通常の食品と比べて特定の栄養素が高濃度で含まれています。食品安全委員会も、サプリメント形状の健康食品は通常の食品よりも容易に過剰摂取につながりやすいと注意喚起しています。

複数サプリメントの併用に注意

複数のサプリメントを同時に使用している場合は、含まれる栄養素の重複に注意が必要です。マルチビタミンと個別のビタミンやミネラルのサプリメントを併用すると、意図せず特定の栄養素の摂取量が耐容上限量を超えてしまう可能性があります。

利用中のサプリメントの成分表示を定期的に確認し、同じ栄養素が複数の製品に含まれていないかチェックすることが推奨されます。

食事からの栄養摂取を基本に

サプリメントはあくまで「補助」であり、バランスの良い食事が栄養摂取の基本です。通常の食品から栄養素を過剰に摂取するリスクは比較的低いとされていますが、サプリメントを加えることで上限を超えやすくなります。まずは食生活の見直しを行い、不足している栄養素を特定した上で、必要に応じてサプリメントの利用を検討するという順序が重要です。

持病がある場合や医薬品を服用中の場合は、サプリメントとの相互作用のリスクもあるため、医師や薬剤師に相談してから利用することが望ましいでしょう。

まとめ

東邦大学の研究により、日本のサプリメント利用者の約5人に1人が摂取目安量を超えて利用し、そのうち約6割が耐容上限量も超えているという実態が明らかになりました。特に中高年層や長期利用者でリスクが高く、脂溶性ビタミンやミネラルの過剰摂取は深刻な健康障害につながる可能性があります。

2024年の紅麹問題を機に制度改革も進んでいますが、消費者自身がサプリメントのリスクを正しく理解し、摂取目安量を守ること、複数製品の併用に注意すること、そして食事からの栄養摂取を基本とすることが何より大切です。健康のために摂るサプリメントが、かえって健康を損なうことのないよう、正しい知識に基づいた利用を心がけましょう。

参考資料:

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