米「壮絶な怒り」作戦の全容、イラン報復能力9割減の衝撃
はじめに
2026年2月28日、米国とイスラエルはイランに対する大規模な軍事作戦を開始しました。「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」と名づけられたこの作戦は、イランの軍事施設・核関連施設・指導部を標的とし、開始から1週間で約2,000の標的が攻撃されています。
衛星画像からはミサイル発射装置や軍港などの大規模な破壊が確認され、米軍の発表によるとイランの弾道ミサイル攻撃は初日と比べて90%減少しました。一方で、イランは中東全域に報復攻撃を展開しており、紛争の行方は依然として不透明です。本記事では、作戦の全容と現時点での戦況を整理します。
「壮絶な怒り」作戦の展開
作戦開始と初期攻撃
2月28日未明、イスラエルは「獅子の雄たけび」作戦、米国は「エピック・フューリー」作戦として同時にイランへの攻撃を開始しました。米宇宙軍とサイバー軍がまずイランの通信網を遮断し、その後、周辺基地と2隻の空母から100機以上の航空機が発進して空爆を実施しました。海軍は巡航ミサイル「トマホーク」でイラン南部の拠点を攻撃しています。
最初の12時間だけで900を超える空爆が行われ、イスラエルは政治・軍事指導者を、米国は弾道ミサイルおよび核関連施設を主な標的としました。この攻撃により、イランの最高指導者ハメネイ師が死亡したことが確認されています。
衛星画像が示す破壊の実態
Planet Labs社の衛星画像からは、イラン各地の軍事施設の甚大な被害が明らかになっています。ケルマーンシャーのミサイル基地では、施設に関連するほとんどの建物が破壊され、地下トンネルの入口にも攻撃が加えられていることが確認されました。
ハメネイ師の邸宅への精密攻撃は、イラン安全保障の上層部が集まる会議を標的にしたとイスラエル当局が明らかにしています。米軍は潜水艦を含む17隻のイラン艦船を破壊したとも発表しており、海上戦力にも大きな打撃を与えています。
イランの報復攻撃と能力低下
初期の大規模報復
攻撃開始直後、イランは大規模な報復に出ました。イスラエル、UAE、カタール、クウェート、バーレーン、ヨルダン、サウジアラビアの7カ国と洋上艦船に対し、約420発のミサイルとドローンを発射しました。バーレーンのジュフェール地区にある米海軍第5艦隊司令部も複数回にわたりミサイル攻撃を受けています。
特に注目されたのは、カタールのアル・ウデイド空軍基地北方に位置するアル・ホール戦略レーダー施設への攻撃です。衛星画像からは、推定3億ドル規模の米軍ミサイル防衛レーダーに被害が生じたことが確認されています。
9割減少の背景
しかし、作戦開始から1週間が経過した3月6日時点で、イランの弾道ミサイル攻撃は初日と比較して90%減少し、ドローン攻撃も83%減少したと米軍が発表しています。この急激な減少には複数の要因が指摘されています。
第一に、米国とイスラエルの継続的な攻撃がイランの弾道ミサイル備蓄・発射装置・関連施設を効果的に破壊していることです。第二に、発射準備をしているイラン部隊が米イスラエルの航空機に発見・攻撃されるリスクが高まっていることが挙げられます。第三に、残存ミサイルを温存するためにテヘランが意図的に発射を抑制している可能性も分析されています。
地域への波及と継戦能力
ホルムズ海峡の封鎖
紛争の影響はエネルギー供給にも直結しています。ホルムズ海峡の船舶通航はほぼ停止状態に陥り、石油タンカーを含む約150隻の貨物船が足止めされています。世界の石油供給の約2割が通過するこの海峡の封鎖は、原油価格の急騰を引き起こし、国際商品市場に大きな混乱をもたらしています。
イランの継戦能力
イランは兵士数で地域有数の軍事大国であり、正規軍約61万人に加え、革命防衛隊約19万人の兵力を保有しています。弾道ミサイルの発射能力は大幅に低下しましたが、通常戦力や非対称戦闘能力がどの程度温存されているかは不透明です。
また、レバノンのヒズボラやイラクの親イラン民兵組織といった代理勢力のネットワークも依然として活動を続けており、紛争の長期化・拡大のリスクは排除できません。
今後の展望と注意点
停戦の見通し
攻撃開始から7日目を迎えても収束の兆しは見えていません。ハメネイ師の死亡によりイランの指導体制は大きく揺らいでおり、トランプ大統領は後継候補に関する発言も行っていますが、交渉の窓口すら定まっていない状況です。
国際社会では停戦を求める声が高まっていますが、米議会でのトランプ大統領の戦争権限を制限する動議は否決されており、軍事作戦の継続に法的障害はありません。民間人の被害も拡大しており、赤新月社は600人以上の民間人死亡を報告しています。
エネルギー市場と世界経済への影響
ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、世界のエネルギー供給に深刻な影響を及ぼします。原油・天然ガス価格の高騰は各国の物価上昇を加速させ、世界経済の減速要因となる可能性があります。日本を含むアジアの石油輸入国は、代替調達先の確保が喫緊の課題です。
まとめ
米国の「壮絶な怒り」作戦は、イランの軍事インフラに壊滅的な打撃を与え、ミサイル報復能力を9割減少させるという顕著な軍事的成果を上げています。衛星画像が示す破壊の規模は、この作戦が冷戦後最大級の軍事作戦の一つであることを物語っています。
しかし、紛争は依然として進行中であり、ホルムズ海峡の封鎖による世界経済への影響、民間人被害の拡大、地域の不安定化など、深刻な課題が山積しています。軍事的優位が政治的解決につながるかどうかは、今後の外交交渉にかかっています。
参考資料:
- Iran war: What is happening on day seven of US-Israel attacks? - Al Jazeera
- US says Iran missile attacks down 90% after strikes from B-2 bombers - Al Jazeera
- 2026年イスラエルとアメリカ合衆国によるイラン攻撃 - Wikipedia
- Analysis: Why Iran’s ballistic missile launches are declining - FDD’s Long War Journal
- Everything we know on the seventh day of the US and Israel’s war with Iran - CNN
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