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by nicoxz

豪レアアース株が急騰、脱中国依存で注目集まる理由

by nicoxz
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はじめに

オーストラリアのレアアース(希土類)関連株が急激な上昇を見せています。中国以外で世界最大のレアアース生産企業であるライナス・レアアース(ASX: LYC)の株価は、2026年に入ってから年初来で約225%上昇しました。この急騰の背景には、中国による輸出規制の強化があります。

日米をはじめとする主要国が、レアアースの安定供給に向けて最低価格保証や長期契約を導入し始めたことで、中国以外の供給元への期待が高まっています。本記事では、豪レアアース株急騰の要因と、今後のサプライチェーン再編の行方を解説します。

中国の輸出規制が引き金に

2026年1月の対日規制強化

2026年1月6日、中国商務部は軍民両用(デュアルユース)品目の対日輸出を即日禁止する措置を発表しました。中国政府系メディアは、特定のレアアース関連製品について対日輸出許可の審査厳格化を検討していると報じています。

みずほリサーチ&テクノロジーズの試算によると、レアアース輸出規制が3か月続いた場合の生産減少額は約6,600億円、1年間続けば損失額は約2.6兆円に達するとされています。日本の製造業にとって、レアアースは電気自動車(EV)のモーターや風力発電タービンなどに不可欠な素材であり、供給途絶のリスクは極めて深刻です。

レアアース市場における中国の支配力

中国は世界のレアアース生産の約60%、精製加工の約90%を占めています。日本のレアアース輸入における中国依存度は、2010年の約90%から現在約60%まで低下していますが、依然として高い水準にあります。こうした状況下で、中国が輸出規制を「経済的威圧」の手段として使う可能性が、各国の危機感を一段と高めています。

ライナスの業績急回復と戦略的地位

利益が13倍に急増

ライナスの2026年上半期(2025年7月〜12月)の業績は劇的な改善を見せました。売上高は前年同期の2億5,430万豪ドルから4億1,370万豪ドルへと62%増加しました。純利益は前年同期の590万豪ドルから8,020万豪ドルへと13倍以上に急増しています。EBITDAも3,810万豪ドルから1億5,240万豪ドルへと約4倍に拡大しました。

この業績改善は、レアアース価格の上昇と生産量の拡大が重なった結果です。西オーストラリア州マウントウェルド鉱山の拡張工事が完了し、マレーシアの加工施設では初めて重希土類の生産を開始しました。

中国依存からの脱却を支える唯一の存在

ライナスは中国以外で唯一、レアアースの採掘から分離精製までを一貫して行える企業です。この戦略的な立ち位置が、地政学リスクの高まりとともに投資家からの注目を集めています。同社のアマンダ・ラカーズCEOは「公正な価格制度の導入によって、成長と投資を追い続けられる」と述べ、事業拡大への自信を示しています。

日米が最低価格保証で支援を本格化

日本との長期契約延長

2026年3月10日、ライナスは日本の「日豪レアアース(JARE)」との供給契約を2038年まで延長することで合意しました。この契約の特筆すべき点は、ネオジム・プラセオジム(NdPr)に対して1キログラムあたり110米ドルの最低価格(フロアプライス)を設定したことです。

さらに、価格が150米ドルを超えた場合のアップサイド共有メカニズムも導入されました。JAREはライナスが生産する重希土類の少なくとも半分を購入することも約束しています。年間5,000メトリックトンのNdPrを安定的に確保することで、日本の産業界にとってはサプライチェーンの予見性が大幅に向上します。

米国防総省との供給合意

ライナスは米国防総省(DoW)とも拘束力のある基本合意書を締結しました。この合意に基づき、米国防総省は約9,600万米ドルを投じて軽希土類および重希土類の酸化物を調達します。4年間の供給契約であり、米国の国家安全保障とサプライチェーンの強靱性を確保する狙いがあります。

MPマテリアルズへの米国政府投資

米国内のレアアース生産企業であるMPマテリアルズにも、米国防総省は4億米ドルを投じて出資し、10年間にわたる最低価格保証を付与しました。テキサス州では2026年中にレアアース磁石の製造施設が稼働を開始する予定です。将来的には年間1万メトリックトンの磁石生産能力を持つ「10X施設」も建設予定であり、米国初の採掘から磁石製造までの一貫サプライチェーンが実現に向かっています。

国際的な連携の加速

G7と資源国の枠組み

日米欧の主要国は「重要鉱物サプライチェーン強靱性に関する戦略的パートナーシップ」を2026年2月に発足させました。G7と資源国が連携して中国依存からの脱却に取り組む枠組みです。オーストラリアもこの枠組みに参加し、資源供給国としての役割を強化しています。

南鳥島のレアアース泥開発

日本独自の取り組みとしては、南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)で発見されたレアアース泥の開発があります。推定埋蔵量は約1,600万トンで、世界第3位に相当する規模です。2026年1月には探査船「ちきゅう」による試掘が開始されており、将来的な国産レアアースの供給源として期待されています。

注意点・展望

レアアース株の急騰には注意すべき点もあります。ライナスの上半期利益はアナリスト予想の1億1,200万豪ドルを下回る8,020万豪ドルでした。生産拡大には時間がかかり、中国の圧倒的な加工能力を短期間で代替することは困難です。

また、中国が輸出規制を緩和した場合、レアアース価格が急落する可能性もあります。2025年にはレアアース関連銘柄が急騰後に急落した経験があり、投資家にとっては価格変動リスクへの備えが必要です。

一方で、日米の最低価格保証制度は、こうした価格下落リスクを軽減する画期的な仕組みです。NdPrの110米ドルというフロアプライスが西側サプライチェーンの標準として定着すれば、新規鉱山開発への投資判断がしやすくなり、長期的な脱中国依存を後押しするでしょう。

まとめ

豪レアアース株の急騰は、単なる投機的な動きではなく、地政学的なサプライチェーン再編という構造的な変化を反映しています。中国の輸出規制をきっかけに、日米が最低価格保証や長期契約で中国以外の供給元を本格的に支援し始めたことが、ライナスをはじめとする非中国系レアアース企業の成長期待を生んでいます。

レアアースの安定供給は、EVや再生可能エネルギー、防衛装備品など幅広い産業の競争力に直結する問題です。今後も日米豪を軸とした「脱中国依存」の動きは加速していくと見られます。

参考資料:

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