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by nicoxz

豪ライナスがサマリウム分離成功、脱中国依存へ前進

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はじめに

オーストラリアのレアアース大手ライナス・レアアースが、マレーシアの工場で重希土類の一種であるサマリウムの分離に初めて成功しました。当初は2026年4月の生産開始を予定していましたが、前倒しでの達成となります。

サマリウムは高性能磁石や防衛装備品に不可欠な戦略物資です。これまで中国がほぼ全量の供給を握ってきた重希土類の分野で、中国以外の企業が商業規模での分離に成功した意義は極めて大きいです。本記事では、この成果の技術的・地政学的な意味と、今後のレアアースサプライチェーン再構築の動きを解説します。

ライナスのサマリウム分離成功の全容

マレーシア工場での歴史的マイルストーン

ライナス・レアアースは、マレーシア東部パハン州ゲベンに置く分離精製施設で、サマリウム酸化物の初回生産に成功しました。アマンダ・ラカーズ最高経営責任者(CEO)は声明で「非常に重要なマイルストーンだ」と述べています。

この成功により、同社が分離・生産できる重希土類酸化物はジスプロシウム、テルビウムに続いて3種類に拡大しました。ライナスは中国以外で唯一、商業規模で重希土類の分離精製を行える企業であり、その製品ラインナップの拡充は西側諸国のサプライチェーンにとって大きな前進です。

拡張計画と今後のロードマップ

同社は今後2年間にわたり、処理能力を段階的に拡大する計画です。年間処理能力は最終的に5,000トン規模を目指しています。さらにユーロピウム、ホルミウム、イッテルビウム、エルビウムなど他の重希土類元素の生産についても、商業契約の確保を条件に検討を進めています。

また、ライナスはマレーシア政府から操業ライセンスの10年間更新を取得しており、長期的な事業基盤も確保しています。原料はオーストラリア西部のマウント・ウェルド鉱床から調達しており、採掘から精製まで一貫したサプライチェーンを構築しています。

サマリウムが戦略物資である理由

軍事・防衛分野での重要性

サマリウムは、サマリウムコバルト(SmCo)磁石の主要原料です。SmCo磁石はマイナス55度から300度という極端な温度環境でも磁力を維持できる特性があり、通常のネオジム磁石では対応できない過酷な条件下で使用されます。

具体的には、ジェットエンジン、ミサイル誘導システム、レーダー、ソナーなどの軍事装備品に不可欠です。米国の防衛大手ロッキード・マーチンはサマリウムの主要な消費者であり、F-35戦闘機1機あたり約23キログラムのSmCo磁石が使われています。

産業用途の広がり

軍事以外でも、サマリウムは医療用MRI装置、航空宇宙産業、高性能モーター、精密センサーなど幅広い分野で活用されています。特に宇宙空間での使用では、放射線耐性と温度安定性が求められるため、SmCo磁石の需要は今後も拡大する見通しです。

2027年からは米国の防衛調達規則が強化され、中国由来の素材への依存が制限されます。こうした規制の動きが、中国以外でのサマリウム供給能力の確保を一層急がせています。

中国依存からの脱却が急務に

中国の輸出規制がもたらした危機感

2025年4月、中国政府はジスプロシウムやテルビウムなど7種類の重要な重希土類の輸出規制を実施しました。さらに2026年1月には、軍民両用品目の対日輸出を禁止する措置を発表しています。これにより、重希土類の安定調達がこれまで以上に困難になりました。

かつて中国からの輸入が9割を占めていた日本の重希土類調達は、官民を挙げた多角化努力により6割程度まで低下しています。しかし依然として高い依存度にあり、サプライチェーンの脆弱性は解消されていません。

各国の対応策と新たな供給源

日本政府は、南鳥島沖の排他的経済水域で発見されたレアアース泥の開発を加速させています。2026年1月には試掘が開始され、2028年から2030年頃の本格採掘を目指しています。日米両政府は首脳会談で南鳥島のレアアース共同開発を確認する方向で調整を進めています。

米国でも、ペンタゴンがサマリウムとガドリニウムの国内生産能力回復に向けた契約を締結しています。年間300トン規模のモジュール式生産施設の建設を目指すプロジェクトが進行中です。

注意点・展望

ライナスの成功は画期的ですが、中国の圧倒的なシェアを短期間で覆すことは困難です。中国は採掘から精製、加工、製品化まで垂直統合されたサプライチェーンを数十年かけて構築しており、この優位性はすぐには揺らぎません。

また、新たな鉱山開発や精製施設の建設には多額の投資と時間が必要です。環境規制への対応も課題であり、マレーシアではライナスの操業に対して地元住民から環境への懸念が示されてきた経緯もあります。

今後の焦点は、ライナスが生産規模を計画通りに拡大できるかどうかです。商業ベースでの安定供給が実現すれば、日本やオーストラリア、米国を中心とした「脱中国」のレアアースサプライチェーンが本格的に動き出すことになります。

まとめ

ライナス・レアアースによるサマリウムの分離成功は、中国一極集中だったレアアースのサプライチェーンに風穴を開ける歴史的な一歩です。防衛装備品やハイテク産業に不可欠な戦略物資の供給源が多様化することで、日本を含む西側諸国の経済安全保障が強化されます。

今後は南鳥島沖の開発や米国の国内生産回復と合わせて、レアアースの「脱中国依存」がどこまで進むかが注目されます。企業や投資家にとっても、レアアース関連の動向は引き続き重要なテーマとなるでしょう。

参考資料:

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