公明党票は1選挙区2万票:中道改革連合と自民の争奪戦
はじめに
2026年1月16日、日本の政界を揺るがす新党が誕生しました。立憲民主党と公明党による「中道改革連合」です。この新党発足により、約25年続いた自公連立が解消され、2026年2月27日公示見込みの衆院選は、かつてない構図で争われることになります。
最大の焦点は、公明党とその支持母体である創価学会の組織票の行方です。日本経済新聞の試算によれば、1選挙区あたり9千〜2.5万票とされるこの票は、接戦区では当落を分ける「命綱」となってきました。この記事では、中道改革連合の発足が選挙戦に与える影響を、組織票の動向と接戦区への影響を中心に分析します。
中道改革連合の発足:25年続いた自公連立の終焉
新党結成の経緯
2026年1月15日、立憲民主党の野田佳彦代表と公明党の斉藤鉄夫代表が会談し、新党結成で合意しました。翌16日には正式に「中道改革連合」という党名が発表されています。
新党発足の背景には、高市早苗首相が率いる自民党政権の右傾化への危機感があります。斉藤代表は「右傾化に傾く政治状況の中で、中道の大きな塊を作る必要がある」と述べ、野田代表も「自民党の右傾化を食い止めるため、中道を分厚くする」と決意を表明しました。
公明党は2025年に自民党の高市総裁誕生を受けて、約25年続いた自公連立を解消していました。高市政権の保守色の強い政策に対抗するため、公明党はリベラル寄りの立憲民主党との連携に舵を切ったのです。
新党の規模と構成
中道改革連合は、衆議院議員のみで構成される特殊な形態を取っています。立憲民主党の148人と公明党の24人、計172議席が新党に参加する見込みです。この規模は、自民党の196議席に迫るものであり、政権交代を視野に入れた布陣といえます。
一方、参議院議員と地方議員は引き続き従来の党に所属します。これは、新党発足を急ぐ中で、全組織の統合を待つ時間的余裕がなかったことを示しています。
基本政策の方向性
中道改革連合は、綱領案で以下の5つの柱を掲げています。
- 持続的経済成長への政策転換
- 新たな社会保障モデル構築
- 包摂社会の実現
- 現実的な外交・防衛政策と憲法改正論議の深化
- 不断の政治改革と選挙制度改革
具体的な政策としては、食料品にかかる消費税率をゼロにすることを柱に据えています。ただし、赤字国債に頼らない財源確保を前提としており、高市首相の「責任ある積極財政」とは一線を画す姿勢です。
外交・防衛では、高市政権が進める安保政策強化に対し、中国との対話を重視する方針を示しています。これは、公明党の平和主義的な基盤を反映した政策といえます。
公明・創価学会票の影響力:接戦区を左右する組織票
組織票の規模と特徴
公明党の選挙における強さは、その支持母体である創価学会の組織票にあります。創価学会からの票は600万票を超えており、「他とは比べものにならないほど大きな影響力」を持っています。
1選挙区あたりでは、日本経済新聞の試算によれば9千〜2.5万票の公明・創価学会票があるとされます。この票は、全国津々浦々に広がる学会組織によって効率的に配分されており、「的確な得票の割り振り」が公明党・創価学会の強みです。
学会組織の末端は「ブロック」と呼ばれる単位で、1ブロックは10〜20程度の学会員世帯で構成されます。この緻密な組織網が、高い投票率と得票効率を実現してきました。
自民党への影響:接戦区の2割が苦戦に
自民党にとって、公明票の喪失は深刻な打撃となります。自民党の小野寺五典前政調会長は「激戦区、接戦区においては少なからず影響はある」と懸念を表明しています。
複数のシミュレーション結果が、この危機感を裏付けています。2024年衆院選で自民党候補が小選挙区当選した132選挙区のうち、52選挙区で当選者が入れ替わる可能性があるとの試算もあります。さらに、別の10選挙区では得票差が5ポイント以内の接戦となり、当落線上に下がるとされています。
自民党は「小選挙区の現職のうち2割が苦戦する可能性がある」という深刻な状況に直面しているのです。
票の移動がもたらす「4万票差」のインパクト
公明票の影響は、単に自民党候補からの流出だけにとどまりません。1選挙区あたり約2万票の公明票が自民党から中道改革連合の候補に移動すると仮定すると、自民候補と野党候補の間で4万票分の得票差が生じます。
これは、接戦区においては致命的な差です。2024年衆院選では、多くの選挙区で1〜2万票の差で当落が決まりました。公明票の移動は、こうした接戦区の勢力図を一変させる可能性があります。
組織票の課題:減少と高齢化
一方で、公明・創価学会票にも課題があります。2024年10月の衆院選では、公明党の比例代表得票は約596万票で、前回より約114万票少なく、1996年以降初めて600万票を割りました。
また、近年の新宗教は信者減少と高齢化が進んでおり、組織票の動員力は徐々に低下しています。都議選では、池田大作名誉会長の出生地である大田区を含む複数の「聖地」で現職候補が落選するなど、かつてない厳しい結果も出ています。
若い世代では「創価学会員=公明党支持」の構図にも変化が見られ、組織票の基盤は以前ほど盤石ではありません。
2026年衆院選の展望:選挙戦略と争点
中道改革連合の選挙戦略
中道改革連合は、衆院選の比例代表で統一名簿を作成し、小選挙区では旧公明党側が候補擁立を見送り、旧立憲民主党側の候補を支援する形での選挙協力を行います。
この戦略により、公明票を効率的に中道改革連合の候補に集約できます。また、立憲民主党の基盤が弱い地域でも、創価学会の組織網を活用した票の掘り起こしが可能になります。
斉藤代表は「新党の候補者がいない地域では人物本位で応援する。自民と全面対決する党を作るつもりはない」と述べ、柔軟な姿勢も示しています。これは、自民党内の穏健派や無党派層にも訴求する戦略といえます。
自民党の対応:「高市効果」でカバーできるか
自民党は、高市政権の高い内閣支持率を武器に反転攻勢を狙っています。高市首相は公明票の流出をカバーするため、参院選で参政党や国民民主党に奪われた層の取り戻しを図っています。
解散時期としては、2026年6月の通常国会会期末が有力視されています。初の本予算やスパイ防止法などの重要法案の成立を実績とし、「高市内閣としての明確な実績」をアピールする戦略です。
しかし、公明票の喪失を完全にカバーできるかは不透明です。自民党の鈴木俊一幹事長は中道改革連合を「基本政策が後回しになった選挙互助会のような組織だ」と批判していますが、有権者にこの主張が響くかは未知数です。
維新と国民民主の動き
日本維新の会は、高市政権との閣外協力を進めており、自民党寄りの姿勢を強めています。一方で、この姿勢が「自民の補完勢力」と見なされ、支持率の下落を招いているとの分析もあります。
国民民主党は、立憲民主党との選挙区調整を模索していましたが、公明党との新党結成により、その枠組みは白紙に戻りました。国民民主党は独自路線を打ち出す必要に迫られています。
注意点・展望:政策の具体化と政界再編の行方
政策面での課題
中道改革連合には、政策面での課題も残されています。特に、安全保障法制や原発政策では、立憲民主党と公明党の間に隔たりがあります。
公明党は平和安全法制(安保法制)に賛成してきた一方、立憲民主党は一貫して反対してきました。また、原発についても、公明党は段階的廃止を主張してきたのに対し、立憲民主党は即時廃止に近い立場です。
これらの政策をどう調整するかが、新党の実効性を左右します。選挙後、政権を担う際には、これらの違いが表面化する可能性があります。
有権者の反応と「中道」の定義
「中道」という概念自体が曖昧であり、有権者に明確なメッセージとして伝わるかも課題です。政治アナリストの伊藤惇夫氏は「『中道』とは何かが有権者に伝わるかが重要」と指摘しています。
消費税減税や社会保障改革といった具体的政策で、自民党や維新との違いを明確にする必要があります。単なる「反高市」では、有権者の支持を広げることは難しいでしょう。
政界再編の可能性
2026年衆院選の結果次第では、さらなる政界再編が進む可能性もあります。自民党が過半数を割り込めば、維新や国民民主との連立が模索されるでしょう。逆に、中道改革連合が躍進すれば、政権交代が現実味を帯びます。
いずれにせよ、公明票の行方が選挙結果を大きく左右することは間違いありません。接戦区での得票動向が、日本の政治の方向性を決めることになります。
まとめ
立憲民主党と公明党による「中道改革連合」の発足は、自民党の選挙戦略に大きな打撃を与えています。1選挙区あたり9千〜2.5万票とされる公明・創価学会票の移動は、接戦区の勢力図を一変させる可能性があり、自民党は小選挙区の2割で苦戦が予想されます。
2026年2月27日公示見込みの衆院選では、中道改革連合と自民党による「公明票争奪戦」が結果を左右します。高市政権の高支持率と、中道改革連合の組織票。この二つの力がぶつかり合う選挙戦は、日本の政治の新たな時代を切り開くことになるでしょう。
有権者にとっては、政策の中身を見極め、日本の将来を選択する重要な機会です。組織票の動向だけでなく、各党の政策を比較し、投票行動につなげることが求められています。
参考資料:
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