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by nicoxz

公明票9千〜2.5万が勝敗分ける衆院選、自民vs中道の接戦区争奪戦

by nicoxz
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はじめに

2026年1月、日本の政治地図を大きく塗り替える出来事が起きました。立憲民主党と公明党が新党「中道改革連合」を結成し、2月の衆議院選挙で選挙協力を行うことで合意したのです。これにより、1999年から26年間続いた自民党と公明党の連立政権は完全に終止符を打ちました。

この政局変化の核心にあるのが「公明・創価学会票」の行方です。日本経済新聞の試算によれば、1選挙区あたり9千〜2.5万票という公明・創価学会の組織票が、自民党と中道改革連合のどちらに流れるかで、接戦区の勝敗が決まります。これまで自民党を支えてきた「生命維持装置」とも呼ばれた組織票が、今回は自民党にとって最大の脅威となる可能性があります。

本記事では、公明・創価学会票の実態、自公選挙協力の歴史、そして2026年衆院選における争奪戦の構図を詳しく解説します。

公明・創価学会票の実態と規模

1選挙区あたり9千〜2.5万票という実力

日本経済新聞の試算によると、公明党と支持母体である創価学会の組織票は、1選挙区あたり9千〜2.5万票の規模です。この数字は、接戦区においては当落を左右する決定的な要因となります。

全国規模で見ると、2024年10月の衆議院選挙で公明党は比例代表で約596万票を獲得しました。これは1996年の小選挙区比例代表並立制導入以降、初めて600万票を下回った数字ですが、それでも日本最大の組織票であることに変わりはありません。創価学会の公称会員数は800万世帯とされていますが、実際の活動会員は200〜300万人と推定されています。

組織票の特性:固い票と配分力

公明・創価学会票が他の組織票と異なるのは、その「固さ」と「配分力」です。一般的な支持政党の浮動票と異なり、創価学会員は高い投票率で特定候補に投票します。また、公明党の指示に従って、小選挙区では自民党候補(または協力候補)に、比例代表では公明党に投票するという「配分」が可能です。

この配分力により、公明党は少ない候補者数でも効率的に議席を確保でき、同時に協力政党の候補者を当選させることができます。これが26年間にわたって自公連立が維持されてきた最大の理由です。

自公選挙協力の歴史と仕組み

1999年の連立開始

自民党と公明党の連立政権は1999年10月、小渕恵三内閣のもとで発足しました。背景には、1998年7月の参議院選挙で自民党が大敗し、参議院で過半数を失ったことがあります。当時の自民党官房長官・野中広務氏が公明党を連立に引き込み、「比例代表で公明党に票を流す」という約束が交わされました。

この選挙協力の仕組みは以下の通りです。

公明党側の協力:

  • 衆院小選挙区の大半で候補者を擁立せず、自民党候補を支援
  • 創価学会員に自民党候補への投票を呼びかけ
  • 参議院1人区でも自民党候補を支援

自民党側の協力:

  • 衆参の比例代表で公明党に票を流す
  • 公明党が擁立する小選挙区では自民党が支援
  • 政策面で公明党の主張を一定程度反映

26年間で培われた相互依存関係

この協力体制は26年間にわたって維持され、2009年の民主党政権誕生後も崩れませんでした。自民党にとって公明・創価学会票は「生命維持装置」とまで言われるようになり、特に都市部の接戦区では公明党の支援なしでは当選が困難な状況が生まれました。

逆に公明党にとっても、自民党との連立により政権与党としての地位を確保でき、政策実現の機会を得られるという利点がありました。軽減税率の導入、教育無償化の拡大など、公明党が重視する政策が実現した背景には、この連立関係があります。

2026年衆院選の構図:公明票争奪戦

立憲民主党と公明党の新党結成

2026年1月15日、立憲民主党の野田佳彦代表と公明党の斉藤鉄夫代表が党首会談を行い、新党結成で合意しました。翌16日には新党名を「中道改革連合」(略称「中道」)と発表し、高市早苗首相の保守政権に対抗する中道勢力の結集を打ち出しました。

新党の選挙戦略は以下の通りです。

  • 公明党は小選挙区から撤退し、比例代表に注力
  • 立憲民主党は比例代表の名簿で公明党候補を優先
  • 小選挙区では立憲候補を公明・創価学会票が支援
  • 基本政策として「食品消費税ゼロ」を掲げる

自民党への影響試算

複数のメディアが公明党の協力喪失による自民党への影響を試算しています。

日本経済新聞の試算:

  • 公明党の協力がなければ、自民党は小選挙区の約2割で苦戦
  • 1選挙区あたり約2万票の公明票が失われる

時事通信の試算:

  • 1選挙区1万票の公明票が立憲候補に流れた場合、35選挙区が逆転
  • 自民党は小選挙区132議席→97議席に減少
  • 立憲民主党は104議席→139議席に増加

日本テレビの試算:

  • 2024年選挙データから、最大50選挙区で自民党が敗北の可能性
  • これは自民党の小選挙区勝利数(132議席)の約4割に相当

地域別の影響:都市部が最激戦区に

公明・創価学会票の影響が最も大きいのは都市部です。創価学会の組織が強い地域は以下の通りです。

最激戦が予想される地域:

  • 東京:8選挙区
  • 神奈川:6選挙区
  • 埼玉:5選挙区
  • 千葉:3選挙区
  • 大阪、愛知など

これらの選挙区では、もともと自民党と野党候補の票差が小さく、公明票の動向が決定的な影響を与えます。例えば、2024年の衆院選で自民党候補が1万票差以内で勝利した選挙区は複数あり、こうした選挙区では公明票が野党に流れれば確実に逆転します。

公明票の行方:不透明な要素も

組織票の「転換」は容易ではない

ただし、公明・創価学会票が即座に立憲民主党候補に流れるかは不透明です。専門家が指摘する課題は以下の通りです。

組織的な課題:

  • 選挙協力には通常、数カ月の政治学習会や組織固めが必要
  • 自民党議員と創価学会員の間には長年の人間関係が存在
  • 立憲民主党の政策に対する学会員の理解が不十分

思想的な距離:

  • 創価学会は平和主義・中道政治を志向
  • 立憲民主党は革新系との連携もあり、政策面でのすり合わせが必要
  • 憲法改正、安全保障政策などで温度差

このため、多くの選挙区では事実上の自主投票となり、公明票が分散する可能性も指摘されています。

高市政権の支持率という変数

もう一つの変数は、高市早苗首相の高い支持率です。日本経済新聞の世論調査によると、高市内閣の支持率は2025年12月時点で75%に達し、10月の内閣発足から70%台を維持しています。

この高支持率は、自民党候補にとって追い風となります。公明票が失われても、無党派層や保守系の浮動票を獲得できれば、接戦区でも勝利できる可能性があります。逆に、選挙までに支持率が低下すれば、公明票の喪失が致命傷となりかねません。

政治地図の塗り替えと今後の展望

「中道改革連合」が第一党となる可能性

時事通信の試算では、選挙協力が奏功すれば、新党「中道改革連合」が第一党となる可能性も示されています。30選挙区超で逆転が起これば、政権交代のシナリオも現実味を帯びます。

ただし、これには以下の条件が必要です。

  • 公明・創価学会票の大部分が立憲候補に流れること
  • 立憲民主党の既存支持層が新党に賛同すること
  • 無党派層が中道勢力を支持すること

自民党の対応策

自民党は公明票の喪失を補うため、以下の戦略を取ると見られます。

組織戦略:

  • 維新の会との選挙協力を強化
  • 地方組織の総動員と訪問活動の徹底
  • 業界団体票の掘り起こし

政策アピール:

  • 高市政権の実績(防衛力強化、経済安保など)を強調
  • 保守層の危機感を煽り投票率向上を図る
  • 減税や給付など、有権者に直接利益をもたらす政策の提示

2026年以降の政界再編シナリオ

2026年衆院選の結果次第で、日本の政治地図は大きく変わる可能性があります。

シナリオ1:自民党単独過半数維持 高市政権の高支持率が維持され、公明票喪失の影響を最小限に抑えた場合。自民・維新連立で安定政権が続く。

シナリオ2:自民党過半数割れ、連立政権維持 自民党が過半数を失うものの、維新との連立で政権維持。政策面で維新の影響力が増大。

シナリオ3:中道改革連合が第一党、政権交代 公明票が立憲候補に大量に流れ、30選挙区超で逆転。野田佳彦氏が首相に就任し、中道政権が誕生。

シナリオ4:ハング・パーラメント(宙づり議会) どの勢力も安定多数を確保できず、連立交渉が難航。短命政権の繰り返しとなる。

注意点と有権者の視点

組織票に振り回されない政治選択を

公明・創価学会票の争奪戦は政局の焦点ですが、有権者にとって重要なのは組織票の動向ではなく、各政党の政策です。中道改革連合の「食品消費税ゼロ」、自民党の「防衛力強化」、維新の会の「身を切る改革」など、政策の実現可能性と自分の価値観を照らし合わせて投票することが大切です。

メディアの報道に注意

選挙前の情勢調査や試算は、あくまで過去データに基づく予測です。実際の選挙では、候補者個人の知名度、地元での活動実績、選挙戦での発信力などが影響します。また、投票日直前の情勢で無党派層の投票行動が大きく変わることもあります。

投票率が結果を左右

過去の衆院選では投票率が50%台にとどまるケースが続いています。組織票の影響が大きくなるのは、無党派層の投票率が低いためです。投票率が上がれば、組織票の影響は相対的に小さくなり、より多様な民意が反映されます。

まとめ

2026年2月の衆議院選挙は、26年間続いた自公連立の終焉により、公明・創価学会票の争奪戦が最大の焦点となります。1選挙区あたり9千〜2.5万票という組織票が、自民党と新党「中道改革連合」のどちらに流れるかで、接戦区の勝敗が決まります。

試算では、自民党は小選挙区の2割〜4割で苦戦し、最悪の場合は第一党の座を失う可能性も示されています。一方で、高市政権の高支持率や、公明票の転換の難しさなど、不透明な要素も多くあります。

結果がどうなるにせよ、この選挙は日本の政治地図を大きく塗り替える可能性を秘めています。組織票の動向に注目しつつも、有権者一人ひとりが政策を吟味し、自らの判断で投票することが、健全な民主主義の実現につながります。

参考資料:

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