インフレ恩恵のゼネコン株、中東緊迫でも鹿島に再評価の機運
はじめに
2026年3月4日の東京株式市場で、日経平均株価は一時2,600円を超えて急落しました。中東情勢の緊迫化と原油高による企業業績への悪影響が警戒される中、ほぼ全面安の展開となっています。
しかし、すべてのセクターが同じ打撃を受けるわけではありません。インフレが追い風となる建設・ゼネコンセクターは、原油高局面でも構造的な強みを維持しています。特に、スーパーゼネコン大手の中で出遅れ感のある鹿島建設(1812)に再評価の機運が高まっています。
中東緊迫と日本株の大幅下落
3月4日の市場動向
4日の東京株式市場で日経平均は2,033円(3.6%)安の大幅続落となり、歴代5番目の下げ幅を記録しました。Bloombergによると、原油高でインフレ懸念が高まり、債券も大幅安となる「トリプル安」の様相を呈しました。
下落の背景には、米国・イスラエルによるイラン攻撃の長期化懸念があります。ホルムズ海峡の事実上の封鎖により原油価格が急騰し、企業業績への悪影響が広く警戒されています。建設株にも売りが出て、東証株価指数(TOPIX)の業種別指数の建設は前日比で下落しました。
原油高が企業業績に与える影響
原油高は製造業を中心に幅広い業種のコスト増要因となります。エネルギーコストの上昇は運送費や原材料費に波及し、利益率を圧迫します。一方で、建設業界にとってインフレは必ずしもマイナスではなく、むしろ追い風となる構造を持っています。
ゼネコンのインフレ恩恵メカニズム
建設コスト上昇の受注残への反映
建設業界特有の強みは、インフレを受注価格に転嫁できる仕組みにあります。2024年度以降、ゼネコン各社は不採算案件の消化を進め、インフレを織り込んだ単価での受注残に置き換えてきました。つまり、過去の低い単価の案件が完工し、高い単価で受注した案件に入れ替わることで、利益率が構造的に改善しています。
楽天証券の分析によれば、鹿島建設は5期連続の増収増益を予想し、当期利益は過去最高を更新する見通しです。2026年3月期の第3四半期連結業績は、売上高2兆1,460億円(前年同期比5.9%増)、営業利益1,718億円(同81.6%増)と大幅な増収増益を達成しています。
旺盛な建設需要の持続
建設需要を支える要因は複数あります。工場の新設・増設、都市再開発、データセンター建設など、案件は豊富です。さらに、2026年度から始まる新たな5か年計画「第1次国土強靱化実施中期計画」は総額20兆円規模の事業内容で、建設業界にとって中長期的な追い風となります。
公共投資は底堅く推移し、企業の設備投資も増加傾向が続いています。NEXT FUNDSの分析では、2025年度以降もゼネコン各社の好決算が期待できるとされています。
鹿島建設の再評価ポイント
他のスーパーゼネコンとの比較
スーパーゼネコン4社(鹿島建設、大林組、大成建設、清水建設)の中で、鹿島建設は株価の上昇幅で出遅れ感があると指摘されてきました。大林組が大幅増配を発表するなど、株主還元強化への期待が建設セクター全体に広がる中、鹿島の動向にも注目が集まっています。
鹿島建設は2026年3月期の通期経常利益を2,000億円と予想しており、8期ぶりの過去最高益更新が見込まれています。株探の報道によると、同社は配当も20円増額しており、株主還元の姿勢を強めています。
海外事業の成長ポテンシャル
鹿島建設の特徴の一つは、海外事業の規模です。北米やオセアニア、東南アジアを中心にグローバルな事業展開を行っており、国内市場だけに依存しない成長基盤を持っています。ダイヤモンド・オンラインの分析では「ゼネコン大手4社の5年後」で鹿島が一歩リードするとの見方も示されています。
中東情勢の緊迫は日本国内の建設需要には直接的な影響を与えにくく、むしろインフレ環境が建設価格の上昇と利益率の改善につながるため、ゼネコン株のディフェンシブな側面が注目されています。
注意点・展望
リスク要因の認識
ゼネコン株にもリスク要因はあります。第一に、資機材価格の高止まりと労務費の上昇です。特に一部の地域・職種では人手不足が深刻で、労務費の上昇が利益を圧迫する可能性があります。
第二に、2026年3月期の好業績には「特需」的な側面があるとの指摘です。設計変更の獲得や完工が例年以上に重なったことが業績を押し上げており、2027年3月期にはこれらの要因が減じる可能性があります。
第三に、中東情勢が一段と悪化した場合、建設資材の一部(鉄鋼、セメントなど)の調達コストがさらに上昇し、既存の受注残の利益率を圧迫するリスクもあります。
投資判断のポイント
短期的には市場全体のリスクオフの流れからゼネコン株も売り圧力を受けますが、中長期的にはインフレ環境での受注単価改善と旺盛な建設需要が支えとなります。大林組の増配をきっかけにゼネコン各社の株主還元強化への期待が高まっており、出遅れ感のある鹿島建設に資金が向かう可能性があります。
まとめ
中東情勢の緊迫化で日本株市場が大幅下落する中、ゼネコンセクターはインフレ恩恵という構造的な強みを持っています。建設コスト上昇を受注価格に転嫁できる仕組みと、旺盛な国内建設需要が業績を支えています。
スーパーゼネコンの中で出遅れている鹿島建設は、8期ぶりの過去最高益更新が見込まれ、株主還元の強化も進んでいます。相場全体の混乱が落ち着いた際に再評価される候補として、注目しておく価値があるでしょう。
参考資料:
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