Duolingo英語テスト、カンニング対策で「耳スキャン」導入
はじめに
語学学習アプリを提供する米Duolingo(デュオリンゴ)が、英語能力試験「Duolingo English Test(DET)」において、新たな不正防止策として「Ear Scan(耳スキャン)」を導入しました。2026年1月20日に発表されたこの対策は、受験者に試験開始前に両耳をスマートフォンで撮影させ、小型イヤホンなどの音声受信デバイスを使用していないことを確認するものです。
近年、小型化・高性能化が進むワイヤレスイヤホンなど、カンニングに悪用されるデバイスが登場し、オンライン試験の不正行為は巧妙化しています。本記事では、Duolingoの新対策の詳細と、オンライン試験を取り巻く不正対策の最新動向について解説します。
Ear Scan(耳スキャン)の仕組み
試験前に両耳を撮影
Ear Scanは、すべての受験者に対し、試験開始前にスマートフォンのカメラを使用して両耳をスキャンすることを必須とする対策です。左右それぞれの耳を、カメラから少し離れた位置と近づけた位置の両方で撮影し、耳の中にイヤホンや音声を聞き取るための補助機器などが装着されていないかを確認します。
機械学習とスマートフォンに搭載されたセンサーを組み合わせた独自技術により、不正デバイスの使用を検知する仕組みです。特定の端末に依存しない設計となっており、受験者が使用するさまざまなスマートフォンで試験セキュリティを確保できるとしています。
既存のセキュリティ対策との組み合わせ
Duolingo English Testは2016年のローンチ以来、受験者の利便性と試験の信頼性の両立を重要な設計思想に掲げてきました。これまでもセカンドカメラやルームスキャン(部屋のスキャン)など、受験環境全体をチェックするテスト環境の監視を実施しています。
今回導入されたEar Scanは、これらの既存対策に加えて、より細かい部分での不正を検知する役割を担います。公平で安心な試験環境を実現するため、複数の対策を組み合わせた多層的なセキュリティ体制を構築しています。
Duolingo English Testとは
オンラインで完結する英語能力試験
Duolingo English Testは、自宅などからオンラインで受験できる英語能力試験です。受験料は70米ドル(約1万1000円)で、TOEFLやIELTSなどの従来の試験と比較して安価に設定されています。試験時間は約1時間で、結果は48時間以内に発行されるスピーディさも特徴です。
問題は4万5000以上のデータベースから出題され、受験者の回答に応じて出題内容が調整されるアダプティブ方式を採用しています。現在、世界6000以上の教育機関でDETのスコアが受け入れられており、留学や進学の際の英語能力証明として広く認められています。
利便性と信頼性の両立が課題
オンライン試験は受験会場に行く必要がなく、好きな時間に受験できるという利便性があります。一方で、監視者がいない環境での受験となるため、不正行為をいかに防ぐかが大きな課題となっています。Duolingoはこの課題に対し、テクノロジーを活用した監視システムで対応しています。
オンライン試験における不正行為の実態
多様化するカンニングの手口
オンライン試験で発生する代表的な不正行為には、机の上に置いた参考書や、別のモニターに表示したWebサイト、手元のスマートフォンなどを使って答えを調べながら解答する「カンニング」があります。
また、Webカメラの死角に協力者が潜み、答えを教えたり一緒に問題を解いたりする「第三者の介入」も問題となっています。さらに深刻なのは、スクリーンショット機能や外部のカメラで試験問題を撮影し、SNSなどで拡散・販売する「問題の漏洩」です。受験者本人になりすまして第三者が試験を受ける「替え玉受験」も報告されています。
小型デバイスの高度化
今回Duolingoが対策を強化した背景には、カンニングに使用されるデバイスの小型化・高性能化があります。ワイヤレスイヤホンは年々小さくなり、耳の奥に装着すれば外からは見えにくいものも登場しています。
こうした小型イヤホンを使えば、試験中に外部から音声で解答を受け取ることが技術的には可能です。Ear Scanは、このような最新のカンニング手口に対抗するために導入された対策といえます。
AI監視技術の最新動向
AIを活用した不正検知
オンライン試験のカンニング防止には、さまざまなAI技術が活用されています。物体検知AIは、受験者がテストを受ける環境を検出し、カンニングペーパーや同じ部屋にいる人物の存在を確認します。画面認識AIは、パソコンの別タブで解答を検索するカンニング行為を検出します。
目線検知AIは、問題が表示されている画面以外を頻繁に見ているような不自然な動きを発見し、注意喚起やテストの強制終了を行うことができます。AIは「PC画面から頻繁に視線が外れる、誰かと話すように口元が動く、手元で不審な動きがある」といった行動パターンを分析し、カンニングの可能性を検知します。
具体的なAI監視サービス
NTT東日本とイー・コミュニケーションズが共同開発した「Remote Testing AIアナリスト」は、オンライン試験の映像を録画し、AIが自動で不正を検知するシステムです。人の目線や動きを自動解析し、カンニング以外にも替え玉受験、複数人での受験、電話を用いた他人からのアドバイスなど、さまざまな不正を検知することができます。
ヒューマネージが提供する「TG-WEB eye」は、顔認識技術や行動分析を通じて不正行為の可能性を検出するオンラインAI監視型Webテストです。採用試験などで導入が進んでいます。
生成AIを悪用したカンニングへの対策
ChatGPTなどの生成AIが登場し、新たなカンニング手法として懸念されています。ChatGPTは米国の経営学修士課程(MBA)の最終試験で合格点を獲得したり、日本の大学入学共通テストの英語問題で77点を取ったことが話題になるなど、その解答能力の高さが証明されています。
対策として、プロクタリングソフトウェアの導入やタブ切り替えの禁止、監視カメラ、音声録音などが挙げられます。また、PCカメラと別に第二のカメラを利用することで監視範囲を拡大し、生成AIを使った不正行為の検出も可能になっています。
注意点・今後の展望
AI監視の限界と人間の目の重要性
AIを活用した監視システムには課題もあります。AIは膨大な作業を同じ水準で繰り返すことに長けていますが、人間のように微妙な挙動や表情の機微を判断するには限界があります。すべての監視を完全にAIに任せるのは現時点では難しいのが実情です。
有効な解決策として、試験中の様子を録画し、試験終了後に人間が映像を確認する「人間の目との併用」が推奨されています。Duolingoも機械学習による自動検知と人間による確認を組み合わせた体制を取っています。
不正対策と受験者体験のバランス
不正対策を強化すればするほど、受験者にとっては手続きが煩雑になるというトレードオフがあります。Ear Scanの導入により試験前の準備にかかる時間は増えますが、公平な試験環境を守るためには必要な措置といえるでしょう。
オンライン試験の普及とともに、不正対策技術も進化を続けています。試験運営者と不正行為者のいたちごっこは今後も続くと予想されますが、テクノロジーの進歩により、より効果的かつ受験者に負担の少ない対策が開発されることが期待されます。
まとめ
Duolingoは、英語能力試験「Duolingo English Test」において、カンニング対策として「Ear Scan(耳スキャン)」を導入しました。受験者は試験開始前にスマートフォンで両耳を撮影し、小型イヤホンなどの音声受信デバイスを使用していないことを確認されます。
小型化・高性能化が進むカンニングデバイスに対抗するこの対策は、既存のルームスキャンやセカンドカメラと組み合わせて、試験の公平性を守る多層的なセキュリティを構築しています。オンライン試験の信頼性を確保するため、テクノロジーを活用した不正対策は今後も進化を続けていくでしょう。
参考資料:
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