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by nicoxz

ファミマ新社長に小谷建夫氏就任へ、5年ぶりトップ交代の狙い

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はじめに

ファミリーマートは2026年1月16日、代表取締役社長の交代人事を発表しました。3月1日付で小谷建夫取締役(61歳)が社長に昇格し、現社長の細見研介氏(63歳)は親会社である伊藤忠商事の常務執行役員に復帰します。

ファミリーマートの社長交代は5年ぶりとなります。細見社長のもとで進められてきた衣料品販売の強化やリテールメディア事業の立ち上げが軌道に乗るなか、経営体制を刷新して次のステージへ進む判断がなされました。

本記事では、新社長となる小谷氏の経歴と強み、細見社長時代の実績、そしてファミリーマートが目指す今後の成長戦略について解説します。

新社長・小谷建夫氏の経歴とアパレル業界での実績

伊藤忠商事での歩みと繊維事業の経験

小谷建夫氏は1964年6月17日生まれ、京都市出身です。大阪大学経済学部を卒業後、1988年に伊藤忠商事へ入社しました。入社後は繊維部門でキャリアを積み、繊維原料事業部や伊藤忠インドネシアでの駐在を経験しています。

2012年からはブランドマーケティング第一部長として、伊藤忠グループのアパレルブランド戦略を担いました。この時期に培った消費者視点でのブランド構築やマーケティングの知見が、後のキャリアの基盤となっています。

レリアン・エドウインでの経営手腕

2017年には婦人服ブランド「レリアン」の代表取締役社長に就任しました。レリアンは50代以上の女性をターゲットとした高品質な婦人服で知られるブランドです。小谷氏は顧客層のニーズを捉えた商品開発と販売戦略で業績の安定化に貢献しました。

2022年4月には、ジーンズメーカー大手のエドウインの代表取締役社長に転じます。エドウインは「503」シリーズなどで知られる国内有数のデニムブランドです。小谷氏はブランド価値の再構築と販売チャネルの見直しを進め、アパレル不況のなかでも競争力の維持に努めました。

第8カンパニープレジデントとしてファミマを管掌

2023年4月からは伊藤忠商事の第8カンパニープレジデントに就任しています。第8カンパニーはファミリーマートを中核とする生活消費分野を管掌する部門です。この役職でファミリーマートの経営に深く関与し、グループ全体の戦略策定に携わってきました。

今回の社長就任は、すでにファミリーマートの事業を熟知した立場からの登板となります。アパレル業界で培った消費者インサイトの把握力と、商社マンとしての事業開発能力の両面が期待されています。

細見研介社長時代の実績と改革

日商35カ月連続プラスの達成

細見研介社長は2021年3月にファミリーマートの社長に就任しました。伊藤忠商事による2020年の実質完全子会社化を受け、経営の自由度を活かした改革を推進してきました。

その成果として、1店舗あたりの1日売上高(日商)は35カ月連続で前年同月を上回る実績を記録しています。「マーケットイン」の発想で顧客ニーズを捉えた商品戦略と販促施策を徹底した結果です。プライベートブランド商品の比率向上も収益性の改善に寄与しました。

リテールメディア事業の急成長

細見社長時代の最大の成果の一つが、リテールメディア事業の立ち上げと急成長です。店内に設置したデジタルサイネージ「FamilyMartVision」は、2026年2月末時点で全国10,800店舗への設置完了を予定しています。

1週間の最大リーチ数は約7,700万人に達し、テレビや雑誌に匹敵する広告媒体へと成長しました。細見社長は「想像以上の反響で、海外企業からの注目も非常に高い」と述べており、将来的には事業規模500億〜1,000億円も視野に入れています。

ファミペイの拡大と金融事業の基盤構築

決済・ポイントアプリ「ファミペイ」の累計ダウンロード数は約3,000万件に拡大しました。2025年上半期の新規ダウンロード数は前年同期比124%と好調を維持しています。

購買データを活用したターゲティング広告や、メーカーごとの「ブランドページ」展開など、アプリを起点とした新しいビジネスモデルが確立されつつあります。さらに、JCB加盟店で利用可能なリアルカードの発行も予定されており、利用可能箇所は国内外4,900万カ所に拡大する見込みです。

ファミリーマートが目指す成長戦略

コンビニ×金融×デジタルの融合

今回の社長交代の背景には、従来のコンビニエンスストア事業に金融やデジタルを組み合わせた「新しい成長の好循環」を加速させる狙いがあります。

1日あたり約1,500万人という巨大な消費者接点を活かし、商品販売だけでなく、広告・メディア事業、金融事業といった新規ビジネスを拡大しています。これらの事業が相互に相乗効果を生み出すことで、従来のコンビニの枠を超えた収益構造の構築を目指しています。

「メディア企業」としての新たな位置づけ

細見社長は東洋経済のインタビューで「もはや小売りではなくメディア企業だ」と語っています。この言葉は、ファミリーマートのビジネスモデルが大きく変化していることを示しています。

店舗網とデジタルサイネージ、アプリを組み合わせることで、メーカーと消費者をつなぐ広告プラットフォームとしての機能が強化されています。リテールメディア事業では、5年後に事業利益100億円という目標を掲げており、すでに「5合目」に到達したとされています。

異業種連携による巨大リテールメディアネットワーク構想

ファミリーマートは、コンビニエンスストアだけでなく、ドラッグストア、スーパーマーケット、ホームセンターといった異なる小売業とのアライアンス(連合)形成を進めています。目標は合計流通総額約10兆円規模の巨大リテールメディアネットワークの構築です。

この構想が実現すれば、メーカーは一つのプラットフォームを通じて多様な業態の店舗に広告を配信できるようになります。消費者にとっても、よりパーソナライズされた情報や特典を受け取れるメリットがあります。

注意点・今後の展望

アパレル出身社長への期待と課題

小谷新社長はアパレル業界での経験が長く、コンビニ業界の実務経験は限定的です。ただし、第8カンパニープレジデントとしてファミリーマートの経営を管掌してきた実績があり、事業への理解は深いと見られています。

細見社長時代に軌道に乗せた各種施策を着実に実行しつつ、消費者視点でのブランド構築という自身の強みをどう活かすかが注目されます。

コンビニ業界の競争激化

コンビニ業界では、セブン-イレブンを擁するセブン&アイ・ホールディングスが創業家によるMBO提案への対応に追われ、ローソンも三菱商事のもとで戦略を練り直しています。各社ともデジタル化と新規事業の開拓を急いでおり、競争は激化しています。

ファミリーマートがリテールメディア事業で先行しているアドバンテージをどこまで維持・拡大できるかが、今後の業界地図を左右する可能性があります。

伊藤忠商事グループ内での位置づけ

伊藤忠商事にとって、ファミリーマートは連結業績を支える重要な子会社です。2023年度には過去最高益を達成しており、グループ全体の成長戦略の中核を担っています。

細見社長が伊藤忠の常務執行役員に復帰することで、グループ内での連携がさらに強化される可能性もあります。商社のネットワークを活かした商品調達やサプライチェーン最適化の深化が期待されます。

まとめ

ファミリーマートの5年ぶりの社長交代は、細見社長時代に軌道に乗せた事業改革を次のステージへ進めるための経営判断です。新社長の小谷建夫氏は、アパレル業界での豊富な経験と、第8カンパニープレジデントとしてファミリーマートを管掌してきた実績を持ちます。

今後は、リテールメディア事業のさらなる拡大、ファミペイを軸とした金融事業の成長、そして異業種連携によるプラットフォーム化が焦点となります。コンビニ業界の競争が激化するなか、「メディア企業」としての新たな成長モデルを確立できるかが問われています。

参考資料:

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