藤井聡太とAI将棋、「強くなるためのパートナー」と進化する研究

by nicoxz

はじめに

将棋界の絶対王者・藤井聡太七冠は、AIをどのように活用しているのでしょうか。「強くなるためのパートナー」—藤井七冠はAIとの関係をこう表現しています。

AIの実力が棋士を凌駕するようになった10年ほど前から、藤井七冠はAIを研究に取り入れてきました。一方で、「AIが示す情報を無批判に受け取ると、思考力がかえって落ちるリスクもある」とも語っています。

2025年、将棋界には新たな変化が訪れました。伊藤匠王座の誕生です。藤井七冠のAI研究に引けを取らない研究量で、新世代の台頭が始まっています。本記事では、AI全盛時代の将棋界と、トップ棋士たちの進化について解説します。

藤井聡太のAI活用法

「強くなるためのパートナー」

藤井聡太七冠はAIについて、「強くなるためのパートナーという感覚」と語っています。AIの優れた知見を自分で取り入れ、実力を高めていきたいという意識で活用しているとのことです。

具体的には、判断力を高めることと、序盤から中盤にかけての定跡をより深く掘り下げることの2つの目的でAIを使用しています。

AI研究という「土俵」

藤井七冠の強さの一つは、「AI研究」という土俵で相手に負けない自信を持っていることです。序盤の定跡研究でリードを奪い、中盤以降でその差を広げていく—これが藤井将棋の必勝パターンの一つとなっています。

タイトル戦の相手も当然AIで研究していますが、藤井七冠の研究の深さと精度は群を抜いています。

思考力低下のリスクも認識

しかし藤井七冠は、AIの情報を無批判に受け取ることの危険性も認識しています。「AIが示す情報を無批判に受け取ってしまうと、自分自身の思考力がかえって落ちてしまうリスクもあると感じています」と述べています。

AIの評価値を見て最善手を覚えるだけでは、本質的な理解には至りません。なぜその手が良いのかを自分で考え、理解することが重要だという姿勢です。

伊藤匠王座の台頭

藤井と「微差」を保ち続けた異質の挑戦者

2025年の王座戦で、伊藤匠叡王が藤井聡太王座を破り、新王座に就きました。Z世代同士の頂上決戦は、伊藤新王座の勝利で幕を閉じました。

伊藤王座の特徴は、いくら指し手が進んでも「ぴったり微差を保ったまま藤井六冠の背中に付いてくる」という、これまでのタイトル戦挑戦者とは異質のスタイルでした。藤井七冠のAI研究を上回る、あるいは同等の研究量で対抗したのです。

藤井六冠と伊藤二冠の時代

伊藤匠の王座獲得により、将棋界の勢力図は藤井六冠と伊藤二冠が全8タイトルを分け合う形に変化しました。若き二人のライバル関係が、将棋界の新時代を形作っています。

伊藤王座もまた、AIを駆使した研究で知られています。「ポスト藤井聡太」の呼び声も高まっています。

「ハイブリッド型」の台頭

伊藤王座は、AI研究と自身の読みを融合させた「ハイブリッド型」の棋士と評されています。AIの示す手を参考にしながら、自分なりの解釈を加えて指し手を選ぶスタイルです。

AI全盛時代において、単にAIの最善手を暗記するだけでなく、人間の創造力と組み合わせることの重要性を示しています。

AI全盛時代の将棋界

振り飛車の見直し

興味深い動きとして、AIが不利と評価する戦法「振り飛車」がトップ棋士の間で見直されています。近年、積極的に採用する棋士が現れ、藤井聡太七冠とのタイトル戦でも指される局数が増えました。

AIの評価では劣勢とされる戦法でも、人間同士の対局では有効な場合があります。AI全盛の世で、人間の創造力を探る好例といえます。

先手有利の傾向強まる

将棋AIの進化に伴い、先手有利の傾向が強まっています。2025年の「世界コンピュータ将棋選手権」決勝リーグでは、先手勝率が73%を超えました。

プロ棋戦全体の先手勝率は52〜54%程度ですが、上位棋士同士の対戦に限ると先手勝率が上昇する傾向があります。AI研究が進むほど、先手の有利が顕在化する可能性があります。

スパコン「富岳」で研究したい

佐々木勇気八段は「スパコン『富岳』で将棋を研究したい」と語っています。より高性能なコンピュータを使うことで、さらに深い研究が可能になるという発想です。

棋士のAI研究は、使用するハードウェアの性能にも左右されます。研究環境の差が、棋力の差につながる時代になりつつあります。

2026年の展望

タイトル戦の行方

2026年も藤井聡太を中心としたタイトル争いが続きます。伊藤匠王座との再戦も予想され、若き二人の覇権争いが将棋界を盛り上げるでしょう。

藤井七冠が失った王座を取り戻すのか、伊藤王座がさらにタイトルを増やすのか—注目の対決が続きます。

AIと人間の共存

将棋界は、AIと人間が共存するモデルケースとなっています。AIを研究に活用しながら、最終的には人間同士が盤上で知恵を競う。その過程で生まれる創造的な将棋が、ファンを魅了し続けています。

藤井七冠が語る「パートナー」としてのAI—この関係性は、将棋に限らず、AIと人間の協働のあり方を示唆しているのかもしれません。

まとめ

藤井聡太七冠はAIを「強くなるためのパートナー」として活用しながら、思考力低下のリスクも認識するバランス感覚を持っています。2025年には伊藤匠王座が誕生し、藤井六冠と伊藤二冠がタイトルを分け合う新時代が到来しました。

AI全盛時代の将棋界では、AIの評価値だけでなく、人間の創造力や判断力が改めて問われています。振り飛車の見直しなど、AIの「常識」に挑戦する動きも出てきています。

2026年、藤井聡太と伊藤匠のライバル対決が将棋界をさらに熱くするでしょう。AIと共に進化する棋士たちの戦いから、目が離せません。

参考資料:

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