法政大が東京家政学院中高を系列校化へ 私学再編の新モデル
はじめに
法政大学と東京家政学院が、2027年度から同学院の中学校・高等学校を法政大学の系列校にすることで基本合意しました。校名は「法政大学千代田三番町中学・高校」に変更される予定です。
大学を持つ学校法人の中高を、別の大学が系列校として取り込むという形態は極めて異例です。18歳人口の急減が目前に迫るなか、有力私立大学と伝統ある中高の双方がメリットを得られる新しい連携モデルとして注目されています。
この記事では、今回の系列校化の具体的な内容、両校にとっての狙い、そして私学再編の今後について詳しく解説します。
系列校化の具体的な内容
校名変更と推薦入学枠の新設
今回の合意により、東京家政学院中学校・高等学校は2027年度から「法政大学千代田三番町中学・高校」に校名を変更します。千代田区三番町という都心の立地を校名に冠することで、法政大学との結びつきと都心アクセスの良さの両方をアピールする狙いがあります。
最大の目玉は、法政大学への推薦入学枠が設定される点です。現在の法政大学の付属校である法政大学中学高等学校(三鷹市)、法政大学第二中・高等学校(川崎市)、法政大学国際高等学校(横浜市)と同様に、系列校としての内部進学ルートが確保されます。これにより、受験生や保護者にとって大きな魅力となることが見込まれます。
経営体制の刷新
学校の経営体制も大きく変わります。法政大学付属校の校長経験者が新たに校長に就任する予定です。さらに、東京家政学院の理事会メンバーの3分の1を法政大学の関係者が占めることになります。
この体制により、法政大学の教育方針やノウハウが中高の運営に直接反映される仕組みが整います。ただし、学校法人としての東京家政学院は存続するため、完全な合併ではなく「共同経営」に近い形態といえます。
共学化の検討
現在、東京家政学院中学校・高等学校は女子校として運営されています。系列校化に伴い、男女共学化も検討されていることが明らかになっています。共学化が実現すれば、より幅広い生徒層の獲得が可能になり、法政大学への安定的な学生供給にもつながります。
両校にとっての戦略的メリット
法政大学の狙い:学生確保の「供給源」拡大
法政大学は現在、3つの付属校を運営しています。しかし、2027年以降の18歳人口の急減を見据えると、付属校・系列校の拡充は大学経営にとって重要な戦略です。
文部科学省の資料によれば、大学進学者数は2026年度の約65万人をピークに減少に転じ、2040年度以降は50万人程度になると推計されています。この減少幅は現在の約23%減に相当し、多くの大学にとって深刻な学生確保の問題となります。
MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)をはじめとする有力私大にとっても、安定した入学者確保は最重要課題です。付属校・系列校からの内部進学者を増やすことは、大学の教育品質を維持しながら定員を確保する有効な手段といえます。
さらに、千代田区三番町という都心の一等地に系列校を持つことは、ブランド力の強化にもつながります。法政大学のメインキャンパスがある市ヶ谷エリアとも近接しており、大学と中高の連携授業なども展開しやすい地理的条件が整っています。
東京家政学院の狙い:有力大学との連携で生き残り
一方の東京家政学院にとっても、今回の提携は生き残り戦略の要です。1923年(大正12年)に設立された家政研究所を前身とする同学院は、約100年の歴史を持つ伝統校ですが、近年は中高・大学ともに定員割れの状況が続いていました。
少子化の進行により、知名度や特色が十分でない中小規模の私立校は年々厳しい経営環境に置かれています。2024年度時点で、入学定員充足率が100%未満の私立大学は全体の59.2%に達しており、2校に1校以上が定員割れという状況です。
法政大学という有力ブランドとの連携により、東京家政学院は入学者増と教育内容の充実を同時に図ることができます。受験生や保護者にとって「法政大学への推薦入学枠がある」というメリットは、志望校選びにおいて大きな判断材料となるためです。
私学再編の新モデルとその波及効果
異例の「共同経営型」連携
今回のケースが注目される最大の理由は、大学を持つ学校法人の中高を、別の大学法人が系列校として取り込むという点です。従来の私学再編は、法人合併や学部譲渡が主な手法でした。
たとえば、学校法人濱名学院と神戸山手学園の法人合併(2020年)や、東京工業大学と東京医科歯科大学の統合(2024年)などが代表的な事例です。しかし、法人の独立性を維持しながら中高のみを系列校化するという手法は、これまでほとんど例がありませんでした。
この方式のメリットは、双方の法人が完全に合併する必要がない点です。東京家政学院は学校法人として存続し、大学も引き続き運営できます。法政大学側も新たな法人を吸収するリスクを負わずに、系列校を増やすことが可能です。
MARCH付属校の拡大トレンド
法政大学の動きは、MARCH各大学の付属校・系列校拡大トレンドの延長線上にあります。2026年には、日本学園中学校・高等学校が明治大学の付属校となり「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」に改称しました。これは明治大学にとって1984年以来の新規付属校開設であり、入試難易度も大幅に上昇しました。
青山学院大学も横浜英和中学高等学校や浦和ルーテル学院を系属校化するなど、有力私大による中高の囲い込みは加速しています。法政大学の今回の動きは、この流れをさらに推し進めるものといえます。
今後の再編の呼び水に
この「共同経営型」のモデルが成功すれば、同様の手法を採用する学校法人が相次ぐ可能性があります。特に、都心部に立地しながら経営が厳しい伝統校は、有力大学との連携を模索する動きが広がることが予想されます。
一方で、課題もあります。系列校化によって既存の教育方針や校風がどこまで維持されるのか、また法政大学の既存付属校との関係がどうなるのかなど、今後の具体的な制度設計が注目されます。
注意点・展望
系列校化は生徒や保護者にとってメリットが大きい一方で、注意すべき点もあります。推薦入学枠の具体的な人数や条件はまだ明らかにされておらず、既存の法政大学付属校と同等の内部進学率が保証されるかどうかは不透明です。
また、共学化の時期や方法についても詳細は今後の検討課題です。女子校としての伝統や教育理念をどのように継承していくかは、在校生や卒業生にとっても関心の高いテーマでしょう。
今後は2027年度の正式移行に向けて、カリキュラムの調整、教員体制の整備、入試制度の設計など、具体的な準備が進められることになります。受験生や保護者にとっては、今後公表される詳細情報を注視する必要があります。
まとめ
法政大学と東京家政学院の系列校化合意は、少子化時代における私学再編の新しいモデルを示しています。大学を持つ学校法人の中高を別の有力大学が系列化するという異例の手法は、完全合併のリスクを回避しながら双方にメリットをもたらす仕組みです。
18歳人口が2027年以降に本格的な減少局面に入ることを考えると、今回の事例は他の私立学校にとっても参考になるモデルケースといえます。MARCH各大学の付属校拡大トレンドとも相まって、私学の再編がさらに加速する可能性が高いでしょう。今後の具体的な制度設計と、2027年度の正式スタートに向けた動向に注目が集まります。
参考資料:
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