高市首相が予算年度内成立に意欲 特別国会の焦点
はじめに
高市早苗首相は2026年2月13日、首相官邸で自民党の梶山弘志国会対策委員長や松山政司参院議員会長ら与党幹部と面会し、2026年度予算案の年度内成立を「諦めない」と明言しました。1月の通常国会冒頭で衆議院を解散したことにより、過去最大となる約122兆円の予算案は審議未了のまま宙に浮いた状態が続いています。
2月18日に召集される特別国会では、第2次高市内閣の発足とともに予算審議が最大の焦点となります。年度末まで残り1か月半という極めて厳しいスケジュールの中、予算成立の見通しはどうなっているのでしょうか。本記事では、予算案の内容、国会運営の課題、暫定予算の可能性について詳しく解説します。
過去最大122兆円の予算案とその背景
積極財政路線を反映した大型予算
2026年度当初予算案は、一般会計の総額が122兆3,092億円と、2年連続で過去最大を更新しました。高市首相の掲げる「積極財政」路線を色濃く反映した内容です。税収は83.7兆円を見込み、新規国債発行額は29.6兆円となっています。
歳出面では社会保障費と国債費の膨張が目立ちます。高齢化の進展に伴う医療・年金・介護関連の支出増に加え、過去の国債発行に伴う利払い費の増加が財政を圧迫しています。一方で、半導体産業への支援強化やデジタルトランスフォーメーション(DX)推進など、成長分野への投資も盛り込まれています。
衆院解散が予算審議に与えた影響
高市首相は2026年1月19日の記者会見で衆議院解散を表明し、23日に解散、27日公示、2月8日投開票というスケジュールで総選挙が実施されました。これは「未来投資解散」と名付けられ、首相自身の信任を国民に問うものでした。
しかし、通常国会冒頭での解散により、予算案の審議は完全にストップしました。通常であれば1月末から2月にかけて衆議院予算委員会で集中審議が始まり、3月末までに成立させるのが通例です。選挙による約1か月の空白は、年度内成立を極めて困難にする要因となっています。
特別国会の焦点と予算審議の行方
2月18日召集の特別国会
特別国会は2月18日に召集され、同日中に衆参両院での首相指名選挙が行われ、第2次高市内閣が発足する見通しです。会期は7月17日までの150日間が想定されています。
首相の所信表明演説は2月20日に予定され、野党の代表質問が2月24日から始まる見込みです。政府・与党は特別国会を閉会せずにそのまま予算審議に入る方針を示しており、異例の国会運営となります。
年度内成立は可能か
高市首相は「年度内成立を諦めない」と強調していますが、与党幹部の間では「困難」との見方が広がっています。代表質問から予算委員会の審議、採決まで通常でも1か月以上を要するため、3月末までに衆参両院で可決するには極めてタイトなスケジュールとなります。
特に野党側は、解散の大義名分や予算案の内容について徹底審議を求める構えです。少数与党の状況下では野党の協力なくして予算の成立は見込めず、国会運営は難航が予想されます。政府・与党は現実的な目標として、5月の大型連休前の成立を目指す方向で調整を進めています。
暫定予算の可能性と影響
暫定予算とは何か
年度内に本予算が成立しない場合、政府は暫定予算を編成して行政サービスの継続を図ります。暫定予算とは、本予算が成立するまでの一定期間(通常は1〜2か月程度)について、必要最小限の経費を計上する予算です。
暫定予算では、公務員の人件費や社会保障給付など義務的な経費は通常通り支出されますが、新規事業や政策的な経費は原則として計上されません。そのため、政府が掲げる成長戦略や新たな施策の実施が遅れるリスクがあります。
過去の暫定予算の事例
日本で暫定予算が編成されたのは直近では2012年度で、当時は民主党政権下での政治的混乱が背景にありました。それ以前にも衆議院解散に伴う国会空白が原因で暫定予算が組まれた例は複数あり、今回も同様のパターンとなる可能性が高まっています。
暫定予算が長期化すれば、地方自治体への交付金や公共事業の執行にも影響が出ます。特に年度替わりの時期に予算が確定しないことは、教育現場や医療機関など現場レベルでの混乱を招きかねません。
注意点・展望
予算の年度内成立が実現するかどうかは、与野党の国会運営をめぐる駆け引きに大きく左右されます。特に注目すべきは以下の点です。
まず、野党がどの程度の審議時間を要求するかです。衆院解散の是非や予算案の具体的な中身について、野党が徹底審議を求めれば審議日程はさらに延びます。次に、与党が野党の一部との協力関係を構築できるかどうかも重要です。予算案の修正協議を通じて賛同を得られれば、成立への道筋が見えてきます。
今後の展開としては、2月20日の所信表明演説で高市首相がどのようなメッセージを発するかが最初の注目点です。予算審議の具体的な日程が固まるのは2月下旬以降になる見通しで、3月に入ると年度内成立の可否がはっきりしてくるでしょう。
まとめ
高市首相は2026年度予算案の年度内成立に強い意欲を示していますが、1月の衆院解散による国会空白が大きな障壁となっています。過去最大の122兆円超の予算案は、積極財政路線を象徴する重要法案であり、その審議の行方は今後の政権運営を左右します。
2月18日の特別国会召集を控え、与野党の駆け引きが本格化しています。年度内成立が困難な場合は暫定予算の編成が避けられず、新規施策の遅れや行政運営への影響が懸念されます。今後の国会審議の動向を注視する必要があります。
参考資料:
関連記事
暫定予算の編成判断が迫る国会攻防の全貌
2026年度予算の年度内成立が危ぶまれるなか、高市首相に暫定予算の編成判断が迫っています。参院での与野党攻防と高校無償化法案の行方を詳しく解説します。
26年度予算の年度内成立に暗雲、暫定予算で行政サービス継続を模索
2026年度予算案の年度内成立が困難となり、政府が暫定予算編成の検討を表明しました。参議院での与党少数という構造的課題と、国民生活への影響を詳しく解説します。
11年ぶり暫定予算へ、高校無償化は4月予定通り
2026年度の暫定予算案が編成されれば2015年度以来11年ぶりとなります。高校授業料の無償化や税制改正は予定通り実施される見通しです。暫定予算の仕組みと暮らしへの影響を解説します。
予算審議59時間の異常事態が問う国会の存在意義
2026年度予算案の衆院審議時間が2000年以降最短の59時間に。高市首相の冒頭解散により日程が1カ月圧迫される中、衆院選で自民党が単独3分の2超となる316議席を獲得した圧勝を背景に、122兆3092億円の過去最大規模の予算を強行採決。野党4党が解任決議案を提出するも否決され民主主義が問われています。
特別国会とは?首相指名選挙の仕組みを解説
衆院選後に召集される特別国会の役割と、議長選出・首相指名選挙の投票手続きをわかりやすく解説します。2026年2月の第221特別国会の動向もあわせて紹介します。
最新ニュース
ブラジルがBYD「奴隷労働」認定を撤回した背景と波紋
ブラジル政府が中国EV大手BYDを「奴隷労働」企業に認定後わずか2日で撤回し、認定を主導した労働監督局長を解任した。カマサリ工場建設現場で163人の中国人労働者がパスポート没収・賃金搾取の被害に遭った事件の経緯と、中国との外交関係を優先する政治判断が労働者保護を揺るがす構造的問題を読み解く。
AI半導体株高が再点火した理由 世界株高を支える成長と危うさの正体
日経平均は4月14日に5万7877円へ反発し、米ナスダックも戦争ショック後の下げをほぼ吸収しました。なぜAI・半導体株に資金が戻るのか。TSMC、ASML、Broadcom、半導体ETF、原油高との綱引きを手掛かりに、世界株高の持続条件と崩れやすさを解説します。
Amazonのグローバルスター買収 通信衛星戦略と競争環境整理
Amazonは2026年4月14日、Globalstarを総額115.7億ドルで買収すると発表しました。狙いは衛星通信網、Band n53の周波数、Apple向けサービス、そしてDirect-to-Device市場です。Starlink先行の構図の中で、Amazon Leoが何を得て何が課題として残るのかを整理します。
ANA人事騒動は何だったのか 1997年対立と統治改革の起点
1997年のANA人事騒動は、若狭得治名誉会長、杉浦喬也会長、普勝清治社長の対立が表面化し、社長候補の差し替えまで起きた統治危機でした。背景には規制緩和下での旧運輸官僚主導と生え抜き経営のねじれがありました。1999年の無配、取締役31人から19人への削減、スターアライアンス参加へつながる改革の意味を読み解きます。
ANAとJALの上級座席競争を需要回復と機材更新戦略から読む
ANAは2026年8月受領の787-9に個室型ビジネスクラス「THE Room FX」を載せ、JALは2027年度から737-8で国内線ファーストクラスを全国展開します。訪日客4268万人、訪日消費9兆4559億円、国内旅行消費26兆7746億円の時代に、航空会社が座席を上質化する収益戦略を読み解きます。