イラン攻撃から1週間で原油急騰、金融市場にリスク回避の波が拡大
はじめに
2026年2月28日の米国・イスラエルによるイラン攻撃から1週間が経過しました。この間、世界の金融市場は大きく揺れ動き、株式を中心にほぼすべての主要な金融資産が下落する「リスクオフ」の展開が続いています。
特に目立ったのは原油価格の急騰です。WTI原油先物は攻撃前の67ドル台から一時78ドル台まで上昇し、上昇率は15%を超えました。ホルムズ海峡の事実上の封鎖という事態が、エネルギー供給への懸念を一気に高めています。
一方、年初から好調だった日本株や韓国株はAI関連銘柄を中心に大幅な調整売りに見舞われ、「有事のドル買い」が鮮明になりました。この記事では、イラン攻撃が金融市場に与えた影響と今後の見通しを詳しく解説します。
イラン攻撃の経緯と現状
米イスラエル共同作戦とその影響
2月28日、米国はイスラエルとともにイランに対する軍事作戦を開始しました。翌3月1日にはイランの最高指導者ハメネイ師の死亡が報じられ、中東情勢は一気に緊迫化しました。
これに対してイランの革命防衛隊は報復措置として湾岸4カ国にある米軍基地への攻撃を実施し、UAEでは民間人1名が死亡する事態も発生しています。さらにイランはホルムズ海峡周辺の船舶に対し「海峡の通過は安全ではない」と通告し、事実上の封鎖状態に入ったとされています。
ホルムズ海峡封鎖の深刻さ
ホルムズ海峡は世界の原油消費量の約5分の1が通過する要衝です。日本は原油輸入の約94%を中東地域に依存しており、タンカーの8割がこのホルムズ海峡を経由しています。封鎖が長期化すれば、エネルギー供給に深刻な影響が及ぶことは避けられません。
トランプ米大統領は「必要な時間はいとわない。必要ならいくらでもやる」と発言し、軍事作戦の長期化を示唆しています。早期収束への期待が後退する中、市場の不安は日を追うごとに強まっています。
原油価格の急騰とエネルギー市場
WTIが78ドル台に到達
WTI原油先物は、攻撃前の週末終値67.417ドルから3月2日の週明けに大きく窓を空けてスタートし、3月4日には一時78.027ドルまで上値を伸ばしました。年初からの上昇率は16.7%に達し、約1年ぶりの高値圏での推移となっています。
今回の原油価格急騰の本質は需要の拡大ではなく、イラン攻撃に伴う「戦争プレミアム(有事の上乗せ)」の織り込みにあります。イランは世界の原油生産量の約3%を占めており、同国からの供給が途絶えるリスクに加え、ホルムズ海峡経由の原油輸送全体が脅かされている状況です。
日本経済への直接的影響
原油価格の上昇は日本経済に大きなインパクトを与えます。野村総合研究所(NRI)の試算によれば、原油価格が10%上昇した場合、日本企業の年間経常利益は1.0〜1.25%減少するとされています。
さらに、原油高は貿易収支の悪化を通じて円安圧力として作用します。10%の原油価格上昇で、年率2兆円超の米ドル買い・円売り需要が発生する計算です。ガソリン価格への波及も懸念されており、全国平均で1リットル200円を突破する可能性を指摘する専門家もいます。
株式市場の動揺:日韓株の下げが際立つ
日経平均が史上5番目の下げ幅を記録
3月4日の日経平均株価は前日比2,033円(3.6%)安の54,245円で取引を終え、3営業日続落となりました。この下げ幅は史上5番目の大きさであり、2月の衆議院議員選挙後に積み上がった上昇分がすべて帳消しとなりました。
日本株と韓国株の下落が際立った理由の一つは、年初以降のAI関連銘柄のけん引による上昇が大きかったことです。米半導体大手エヌビディアの好決算後も株価上昇が止まったタイミングと重なり、AI銘柄への利益確定売りが加速しました。
「有事のドル買い」が鮮明に
イラン攻撃後の主要資産の騰落率を見ると、原油が最も上昇した一方、ドルも退避マネーを集めて上昇しています。地政学リスクが高まると、基軸通貨であるドルに資金が逃避する「有事のドル買い」は過去の中東有事でも繰り返し観察されてきたパターンです。
ドル高は新興国通貨の下落を招き、ドル建て債務を抱える国々の返済負担を重くします。また、日本にとってはドル高・円安が原油の輸入コストをさらに押し上げるという悪循環が生じます。
注意点・今後の展望
短期的ショックか、長期的転換か
市場の今後を左右するのは、イラン情勢がどの程度長期化するかです。専門家の間では3つのシナリオが議論されています。
第一に、紛争が短期収束するシナリオです。この場合、原油価格は攻撃前の水準に戻り、株式市場も反発する可能性が高いとされます。三井住友DSアセットマネジメントは、短期収束なら日経平均は上昇基調を回復し、2026年12月末に61,500円に達するとの見方を維持しています。
第二に、膠着状態が続くシナリオです。ホルムズ海峡の部分的な封鎖が続くものの、原油の急騰は回避されるケースで、株式市場は方向感を欠く展開が予想されます。
第三に、紛争が拡大するシナリオです。イランが本格的な報復に出て中東全体に紛争が拡大する場合、原油価格は100ドルを超える可能性があり、世界経済に深刻なダメージを与えることになります。
投資家が注意すべきポイント
急落局面での慌てた売却は、過去の有事でも大きな損失につながるケースが多いです。楽天証券のレポートでは、歴史的に中東有事による株価下落は短期的なショックにとどまることが多く、長期投資家にとっては「攻め直す好機」となる可能性も指摘されています。
ただし、今回は米雇用統計の悪化やスタグフレーション懸念が重なっているため、過去の有事とは異なるリスクがあることも認識しておく必要があります。
まとめ
米イスラエルのイラン攻撃から1週間、原油価格の急騰と株式市場の大幅下落という形で「リスクオフ」の波が世界中に広がっています。日本と韓国の株式市場はAI関連銘柄の調整売りが重なり、特に大きな打撃を受けました。
今後の焦点は、紛争の長期化の有無とホルムズ海峡の通行正常化の時期です。原油高の長期化はインフレを加速させ、世界経済全体にスタグフレーションのリスクをもたらします。中東情勢と原油価格の動向を注視しつつ、冷静な判断を心がけることが重要です。
参考資料:
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