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by nicoxz

有事なのに金が下落、「現金が王様」の異常事態を読む

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はじめに

2026年2月28日に始まった米国・イスラエルによるイラン攻撃は、金融市場に異例の動きを引き起こしています。通常、地政学リスクが高まると「有事の金」として金価格は上昇します。しかし今回は、攻撃直後に1トロイオンス5,400ドル台まで急騰した金が、わずか1日で約6%下落し4,995ドル台まで急落しました。

代わりに浮上したのが米ドルです。基軸通貨であるドルに世界中の資金が殺到し、約1年ぶりとなる大幅上昇を記録しています。「キャッシュ・イズ・キング(現金は王様)」の様相が鮮明になった背景を解説します。

「有事の金」が通用しなかった理由

初動は教科書通りの急騰

米・イスラエル軍によるイラン攻撃のニュースが伝わった直後、金市場は「教科書通り」の反応を見せました。ロンドン現物価格は3月2日に5,418ドル/オンスまで急騰し、1月末につけた史上最高値に迫る水準を記録しました。中東の地政学リスクが一気に現実のものとなり、安全資産としての金に資金が流入したのです。

一転して急落、流動性の確保が最優先に

ところが、3月3日以降、金相場は一転して急落しました。スポット金は5,018ドル/オンス付近まで約6%の下落を記録し、攻撃前の水準を下回りました。この急反転の背景にあるのは、投資家の「流動性への逃避」です。

戦争の長期化リスクが意識される中、株式・債券・金など幅広い資産が売られ、最も流動性の高い「現金」に資金が集中しました。金は安全資産ではあるものの、即座に現金化が難しい場面もあり、流動性の面でドルの現金には劣ります。投資家がリスクを最小化するために「何でも売って現金にする」という行動に出た結果、金も売りの対象となったのです。

米ドルの「究極の安全資産」としての復権

ブルームバーグ・ドル指数、1日で1%上昇

イラン攻撃以降、米ドルは主要通貨に対して全面高となりました。ブルームバーグのドル指数は1日で1%上昇し、2025年5月以来の最大の上昇幅を記録しています。紛争開始からの2日間では、約1年ぶりとなる大幅な上昇を記録しました。

ドルが選ばれる理由は明確です。世界の貿易決済の大部分はドル建てで行われており、有事にドルへの需要が急増するのは構造的な必然です。通貨スワップ市場でもドルの調達コストが急上昇しており、世界中の金融機関がドルの確保に動いています。

FRBの利下げ観測後退も追い風

もう一つの要因は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測の後退です。中東紛争によるエネルギー価格の急騰は、インフレ圧力を高めます。FRBが利下げに慎重にならざるを得ないとの見方が広がり、ドルの金利優位性が維持されるとの期待がドル買いを後押ししています。

金は利息を生まない資産であるため、金利が高止まりする環境は金にとって逆風となります。ドル高と高金利の組み合わせが、金の下落圧力を一段と強めています。

マネーマーケットへの資金流入

MMF残高が過去最高を更新

「キャッシュ・イズ・キング」の動きは、マネーマーケットファンド(MMF)への資金流入にも表れています。米国のMMF残高は紛争開始以降、急増しており、投資家が短期の安全資産に資金を退避させている実態が浮き彫りになっています。

株式市場からの資金流出も顕著で、日経平均株価は3月3日に急反落しました。世界的なリスクオフの動きが広がる中、「まず現金を確保し、状況を見極めてから投資判断を行う」という慎重姿勢が支配的です。

注意点・展望

今回の「金売り・ドル買い」は、歴史的に見ると珍しい現象ですが、過去にも類似のケースがあります。2020年3月のコロナショック時にも、パニック的な売りの中で金が一時的に急落した後、回復に転じました。今回も中東情勢が安定化に向かえば、金は再び上昇基調に戻る可能性があります。

一方で、紛争が長期化し、原油供給の途絶やホルムズ海峡の封鎖といった最悪のシナリオが現実化すれば、ドル一極集中のリスクが意識される局面も出てくるでしょう。

個人投資家にとっては、短期的な価格変動に振り回されず、ポートフォリオ全体のリスク管理を見直す機会と捉えることが重要です。

まとめ

米・イスラエルのイラン攻撃後、「有事の金」が下落し、代わりに米ドルが急騰するという異例の展開が続いています。流動性を最優先する「キャッシュ・イズ・キング」の動きは、今回の危機の深刻さと、投資家心理の極度の不安を映し出しています。

金とドルの力関係の変化は、今後の中東情勢とFRBの金融政策次第で大きく動く可能性があります。地政学リスクが高まる局面では、資産の分散と流動性の確保がこれまで以上に重要です。

参考資料:

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