伊藤忠とバフェット後任グレッグ・アベル氏、蜜月は続くか

by nicoxz

はじめに

「投資の神様」ウォーレン・バフェット氏が2025年末にバークシャー・ハザウェイのCEOを退任し、グレッグ・アベル氏が後任に就きました。

日本の投資家にとって気になるのは、バフェット氏が積極的に投資してきた伊藤忠商事をはじめとする日本5大商社への姿勢です。バフェットマネー流出を心配する声がある一方、アベル氏は「50年、あるいは永遠に保有する」と明言しており、両社の蜜月は続く可能性が高いと見られています。

この記事では、バークシャーの日本商社投資の経緯、アベル氏の方針、そして2026年の展望について解説します。

バフェット氏の日本商社投資——その始まりと拡大

2019年に始まった投資

バークシャー・ハザウェイが日本の5大商社(伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事)に投資を開始したのは2019年7月のことでした。バフェット氏は後に「これらの企業の財務記録を見て、株価の安さに驚いた」と振り返っています。

この投資が公表されたのは2020年8月、バフェット氏の90歳の誕生日でした。当時、各社の持ち株比率は5%。その後、段階的に買い増しが進められてきました。

現在の保有状況

2025年3月時点のバークシャーの保有比率は以下の通りです。

  • 三井物産: 9.82%(従来8.09%)
  • 三菱商事: 9.67%(従来8.31%)
  • 丸紅: 9.30%(従来8.30%)
  • 住友商事: 9.29%(従来8.23%)
  • 伊藤忠商事: 8.53%(従来7.47%)

2024年末時点で、5社への投資の時価総額は約235億ドル(約3.5兆円)に達しています。年間配当収入は約8億1200万ドルと見込まれています。

なぜ日本の商社なのか

バフェット氏は、日本の総合商社が「バークシャー自身と似たやり方で事業を展開している」と評価しています。多角的な事業ポートフォリオ、長期的な視点での投資、そして堅実な財務基盤——これらはバークシャーの経営哲学と共通します。

また、米国株中心だったバフェット氏にとって、海外株への大規模投資は異例のことでした。一部のアナリストは、次世代への投資引き継ぎを見据えて米国資産への集中を分散させる狙いがあったと分析しています。

グレッグ・アベル氏とは何者か

バフェットが認めた後継者

グレッグ・アベル氏は、2018年から非保険事業担当の副会長を務めてきました。2000年にバークシャーがミッドアメリカン・エナジー(現バークシャー・ハザウェイ・エナジー)の経営権を取得した際に入社し、同社のCEOを経て現在に至ります。

2021年にバフェット氏が公式に後継者として指名。2025年5月の株主総会でCEO交代を発表し、2026年1月1日に正式就任しました。

バフェット氏の絶大な信頼

バフェット氏は2025年11月の最後の「株主への手紙」で、アベル氏について次のように述べています。

「グレッグ・アベルは、私が彼を次期CEOに選んだ時の高い期待を十分に上回っています。彼は私が今知っている以上に、我々の多くの事業と人材を深く理解しており、多くのCEOが考えもしない事柄について非常に速く学習します」

さらに「あなたや私の資産を任せるのにグレッグより優れた人物は思いつかない」と全面的な支持を表明しました。

「50年、あるいは永遠に保有」——アベル氏の日本商社観

2023年の日本訪問

2023年、バフェット氏はアベル氏とともに日本を訪れ、5大商社のトップと面会しました。この訪問は、後継者への引き継ぎを意識したものと見られています。

アベル氏はこの際、日本の商社について「50年、あるいは永遠に保有する」と発言。「我々は関係を構築しており、彼らと大きなことを一緒に成し遂げたいと本当に願っている」と述べました。

超長期投資の哲学

バフェット氏は2025年5月の株主総会で「今後50年は売却を考えないだろう」と語っています。この「永遠に保有する」という姿勢は、バフェット流投資の真骨頂であり、アベル氏もこの哲学を完全に継承する意向を示しています。

バフェット氏は「グレッグと彼の後継者たちが、この日本のポジションを何十年も保有し続け、バークシャーが5社と生産的に協力する他の方法を見つけることを期待している」と述べています。

2026年の注目点——「2月の手紙」

株主への手紙の重要性

バークシャー・ハザウェイでは毎年2月頃に「株主への手紙」が発表されます。この手紙は、バフェット氏の投資哲学や市場観を知る貴重な機会として世界中の投資家が注目してきました。

2026年からは、この手紙をアベル氏が執筆することになります。日本の商社投資についてどのような言及があるかは、両社の関係性を占う重要な指標となります。

保有上限の引き上げ

当初、バークシャーは各社の株式を10%未満に抑える合意をしていました。しかし、この上限に近づくにつれ、5社はこの制限を緩和することに同意。バフェット氏は「時間とともに、バークシャーの5社すべてへの保有比率がいくらか上昇するのを見ることになるだろう」と述べています。

アベル氏体制でこの買い増しがどのようなペースで進むかも注目されます。

株価への影響と投資家の懸念

「サクセッション・ディスカウント」

バフェット氏の引退発表以降、バークシャー株は2025年末にかけて約7%下落しました。同期間にS&P500は約20%上昇しており、一部のアナリストはこの格差を「サクセッション・ディスカウント(後継者割引)」と呼んでいます。

伊藤忠をはじめとする日本の商社株についても、バフェットマネーの流出懸念から一時的な高値警戒感が生じています。

3816億ドルの現金

アベル氏が引き継いだバークシャーは、2024年9月末時点で過去最高の3816億ドル(約59兆円)の手元現金を抱えています。この巨額資金をどのように運用するかが、アベル体制の最大の課題であり、日本商社への追加投資に充てられる可能性も指摘されています。

注意点と今後の展望

アベル氏の投資手腕は未知数

アベル氏はエネルギー事業の経営者として実績を積んできましたが、株式投資の意思決定についてはバフェット氏ほどのトラックレコードがありません。日本商社への投資継続が明言されているとはいえ、具体的な運用方針は「2月の手紙」や株主総会で注視する必要があります。

日本商社の自助努力も重要

バークシャーからの投資継続は心強いものの、伊藤忠をはじめとする商社各社の企業価値向上は、自社の努力次第です。脱炭素投資、DX推進、グローバル展開など、成長戦略の実行が株価維持・向上の鍵となります。

まとめ

バフェット氏の引退により、バークシャー・ハザウェイは60年ぶりの転換点を迎えました。しかし、日本の5大商社への投資については、後継者のグレッグ・アベル氏が「50年、あるいは永遠に保有」と明言しており、長期的な関係継続が見込まれます。

2026年2月に発表される「株主への手紙」で、アベル氏が日本商社についてどのように言及するかが、両社の蜜月を占う最初の試金石となるでしょう。

参考資料:

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