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by nicoxz

「セル・アメリカ」で日本株に追い風、資金シフトの背景

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はじめに

2026年に入り、「トランプ・ショック2.0」とも呼ぶべき相場の混乱が世界の金融市場を揺さぶっています。米国株からの資金流出、いわゆる「セル・アメリカ(Sell America)」トレードが加速し、金相場の乱高下も生じています。

この混乱は日本株にとって逆説的に追い風となっています。海外投資家は6週連続で日本株を買い越し、日経平均はS&P500を上回るパフォーマンスを見せています。セル・アメリカの背景と日本株への影響を整理します。

セル・アメリカトレードとは

米国からの資金流出

セル・アメリカトレードとは、米国株や米国債、ドルといった米国資産を売却し、その資金を他の市場に振り向ける動きを指します。このトレンドは実は2024年11月のトランプ大統領当選直後からすでに始まっていましたが、2026年に入って一段と加速しています。

S&P500やNASDAQ100は、ドイツのDAX、英国のFTSE100、香港のハンセン指数といった他の主要指数を一貫してアンダーパフォームしています。かつて「米国一強」と呼ばれた構図に、明確な変化が生じています。

背景にあるトランプ政権の不確実性

セル・アメリカが加速した直接的な原因は、トランプ政権の政策に対する不確実性の高まりです。貿易政策の急転換、移民政策をめぐる国内対立、さらには2月20日の最高裁による関税違憲判決とそれに続く代替関税の即日発動など、予測困難な政策運営が投資家のリスク回避を促しています。

グローバルな機関投資家は、こうした不確実性を嫌い、米国への投資配分を減らす動きに出ています。欧州の機関投資家は10兆ドル以上の米国株を保有しているとされ、そのごく一部が動くだけでも巨額の資金フローが発生します。

日本株への追い風

海外投資家の6週連続買い越し

セル・アメリカの恩恵を最も受けている市場の一つが日本です。2026年2月第2週の海外投資家による日本株買い越し額は1兆2,323億円に達し、6週連続の買い越しとなりました。

日本が資金の受け皿となっている理由は複数あります。まず、世界第2位の株式市場の流動性を持つ点です。米国から流出する大量の資金を吸収できる市場は限られており、日本はその条件を満たしています。

日経平均のパフォーマンス

日経平均株価は、2024年11月のトランプ当選以降、S&P500やNASDAQ100を上回るパフォーマンスを記録しています。過去2〜3年の長期比較でも、日経平均はMSCI ACWIやS&P500を上回る成績を収めています。

野村證券のメインシナリオでは、日経平均は2026年末に55,000円に到達すると予測されています。AI・DX投資による生産性向上や事業ポートフォリオの再構築、M&Aブームがけん引役になるとの見方です。最大で59,000円までの上振れシナリオも示されています。

脱デフレが追い風に

日本株を支えるもう一つの要因は、日本経済の「脱デフレ」です。30年以上続いたデフレからの脱却が鮮明になり、企業の価格転嫁力や賃上げ力が向上しています。名目GDPの成長率が実質GDPを上回る「インフレ環境」は、企業収益の拡大を通じて株価の上昇圧力となります。

金相場の乱高下

急騰と急落の背景

金相場もセル・アメリカの影響を大きく受けています。2026年の年始時点で1トロイオンス4,500ドル未満だった金価格は、1月末にかけて5,500ドル超まで急騰しました。しかしその直後に急落し、一時4,400ドル台まで下落するなど激しい値動きとなっています。

金価格の急騰は、米国資産からの逃避先として「安全資産」の金に資金が集中したことが主因です。しかし急激な上昇はETF(上場投資信託)を通じた投機的な資金の流入を伴っており、持続性に疑問が生じると一転して売りが殺到する構図です。

金のリスクと日本株の優位性

金は利息や配当を生まない資産であり、金利上昇局面では不利になりやすい特性があります。一方、日本株は企業業績の成長に連動した配当収入が期待でき、円安による海外収益の押し上げ効果もあります。

セル・アメリカの資金の受け皿として、金よりも日本株が選好される局面が増えているのは、こうした「利回り」の差が背景にあります。

注意点・展望

ボラティリティの高止まりに注意

セル・アメリカが日本株の追い風であることは間違いありませんが、相場のボラティリティ(変動率)が高止まりしている点には注意が必要です。日経平均のボラティリティは2026年に入って高水準が続いており、急激な値動きがいつ起きてもおかしくない状況です。

特に、トランプ政権の政策変更や最高裁判決の後続動向、米国の金利動向といった外部要因に大きく左右される相場環境が続くと見られます。

資金シフトは長期トレンドか

欧州の機関投資家が保有する10兆ドル超の米国株のうち、ほんの一部が移動するだけでも日本市場に大きなインパクトがあります。この資金シフトが短期的な現象にとどまるのか、長期的な構造変化なのかが、今後の日本株市場の行方を左右する最大の鍵です。

米国の政策不透明感が続く限り、セル・アメリカトレードは持続する可能性が高いとの見方が優勢です。

まとめ

セル・アメリカトレードの加速は、米国一極集中だった世界の投資マネーの構図に変化をもたらしています。日本株は世界第2位の流動性、脱デフレによる企業収益の改善、円安メリットといった複数の要因から、資金の受け皿として選ばれています。

ただし、高ボラティリティの環境下では急変動リスクも伴います。セル・アメリカの追い風を享受しつつ、トランプ政権の政策動向や金利環境の変化に注視し続けることが、投資判断において重要です。

参考資料:

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