個人向け国債が19年ぶり高水準、金利上昇で6兆円突破
はじめに
財務省が発表した2025年度の個人向け国債の販売額が、合計6兆1,526億円に達しました。前年度から36.9%の大幅増加で、19年ぶりの高水準です。日銀の金融政策修正以降、金利が上昇基調にあることから、安全資産を求める個人の「国債シフト」が鮮明になっています。
本記事では、個人向け国債の人気急上昇の背景、商品の特徴と最新金利、定期預金との比較を解説します。
個人向け国債の販売が急拡大した背景
金利上昇が追い風に
個人向け国債の人気回復は、日銀の金融政策の転換と密接に関係しています。日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的に政策金利を引き上げてきました。これに伴い、長期金利も上昇傾向が続いており、個人向け国債の適用利率も大幅に改善しています。
2026年2月募集分の適用利率は、変動10年型が年1.48%、固定5年型が年1.66%、固定3年型が年1.36%と、すべての年限で1%を大きく超えています。ゼロ金利時代には最低保証金利の0.05%にへばりついていたことを考えると、劇的な変化です。
NISAブームとの相乗効果
2024年から始まった新NISA制度により、多くの個人が投資に関心を持つようになりました。株式やインデックスファンドに資金を振り向ける人が増える一方で、「投資はしたいが元本割れは避けたい」という層が個人向け国債に注目しています。特にシニア世代を中心に、安全性の高い運用先としての需要が拡大しています。
個人向け国債の3つのタイプ
変動10年型:金利上昇局面に強い
変動10年型は、半年ごとに実勢金利に基づいて適用利率が見直されます。今後も金利上昇が続く局面では、受取利息が増えていくメリットがあります。一方で、金利が低下した場合には利息も減少しますが、年率0.05%の最低金利が保証されているため、元本割れのリスクはありません。
2025年10月時点の応募額は1,246億円で、金利上昇の恩恵を受けやすい商品として一定の支持を集めています。
固定5年型:高い利率で安定運用
固定5年型は、発行時に決まった利率が満期まで変わりません。2026年2月募集分は年1.66%と、3タイプの中で最も高い利率を提示しています。応募額も2,323億円と最も人気が高く、「今の高い金利を確定したい」という投資家のニーズに合致しています。
固定3年型:短期で使いやすい
固定3年型は満期が短く、資金の流動性を重視する人に適しています。2026年2月募集分の利率は年1.36%で、大手銀行の3年定期預金の金利を上回っています。
定期預金との比較
国債が圧倒的に有利
現在の大手銀行の定期預金金利は、3年もので0.4%〜0.6%程度です。個人向け国債の固定3年型(1.36%)や固定5年型(1.66%)と比較すると、国債の利率は定期預金の2〜3倍の水準にあります。
ただし、個人向け国債は購入から1年間は中途換金ができません(災害時等を除く)。1年経過後は中途換金が可能ですが、直前2回分の利子相当額が差し引かれます。この点は定期預金の方が柔軟性があるといえます。
安全性は同等以上
個人向け国債は日本国政府が元本と利息の支払いを保証しており、銀行預金のペイオフ(1,000万円とその利息まで保護)を超える安全性があります。1,000万円を超える資金を安全に運用したい場合、個人向け国債は有力な選択肢です。
注意点・展望
個人向け国債への投資を検討する際、いくつかの注意点があります。まず、今後の金利動向は不透明です。日銀が利上げペースを加速すれば金利はさらに上昇しますが、景気後退局面に入れば金利が低下に転じる可能性もあります。固定型を購入した後に金利が上昇した場合、より有利な条件を逃すことになります。
また、インフレ率が国債の利率を上回る場合、実質的な購買力は目減りします。現在の日本の消費者物価上昇率は2%台で推移しており、1%台後半の国債利率ではインフレに追いつかない可能性があります。
今後の見通しとしては、日銀の追加利上げが見込まれる中、個人向け国債の適用利率はさらに上昇する余地があります。2026年度も販売額の拡大が続く公算が大きいでしょう。
まとめ
個人向け国債の販売額が6兆円を突破し、19年ぶりの高水準を記録したことは、日本の金利環境が大きな転換点を迎えていることを示しています。変動10年型、固定5年型、固定3年型のいずれも定期預金を大きく上回る利率を提供しており、安全資産としての魅力が高まっています。
資産運用を検討している方は、自身の投資期間やリスク許容度に応じて、個人向け国債を選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。購入は証券会社や銀行の窓口、ネット証券で可能です。
参考資料:
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