自民現職の2割が苦戦か?公明票離反が衆院選に与える衝撃
はじめに
2026年1月15日、立憲民主党と公明党が新党結成で合意したことで、自民党に激震が走っています。26年間の自公連立で自民党候補を支えてきた「公明票」が、今度は野党候補を支援する側に回る可能性が出てきたからです。
創価学会を支持母体とする公明党の票は、1選挙区あたり約2万票とされ、接戦区では当落を分ける「魔法の杖」と呼ばれてきました。この票が自民党から離反すれば、小選挙区の現職議員のうち約2割が苦戦するとの試算も出ています。
本記事では、公明票離反が自民党に与える影響を、各種試算データをもとに詳しく分析します。
自公連立解消の経緯
26年間の協力関係に終止符
自民党と公明党の連立は1999年10月に始まりました。衆参のねじれを解消して安定政権を模索する自民党と、連立参加で政策実現を目指す公明党の利害が一致した結果でした。
しかし、2025年10月10日、高市早苗自民党総裁と斉藤鉄夫公明党代表の会談が決裂。公明党は連立離脱を表明しました。
離脱の理由
公明党が連立離脱を決断した主な理由は以下の通りです。
政治とカネの問題 自民党派閥の裏金問題への対応について、公明党が求めた企業・団体献金の規制強化に、自民党が消極的だったことが大きな要因でした。「クリーンな政治」を党是とする公明党にとって、自民党の姿勢は受け入れがたいものでした。
高市政権の政治姿勢 高市早苗氏の保守的な政治姿勢が、平和主義を掲げる創価学会との相性が悪いとされたことも、離脱を後押ししました。
公明票・創価学会票の規模と影響力
1選挙区あたり約2万票
公明党の支持母体である創価学会の組織票は、国政選挙で約600万票を超えるとされています。これを小選挙区で割ると、1選挙区あたり平均約2万票となります。
産経新聞社の試算によると、比例票を小選挙区ごとにみた公明票は平均で2万638票。最も多い大阪6区では3万6229票に上り、大阪や福岡を中心に西日本の選挙区が上位を占めています。
接戦区での決定力
この約2万票は、接戦区では当落を決定づける力を持ちます。2024年衆院選のデータを見ると、多くの選挙区で自民党候補と次点候補の票差は1~2万票程度。公明票がなければ勝てなかった議員が少なくないのです。
自民党にとって、創価学会の組織票は都市部の接戦区を制するための「魔法の杖」であり、選挙終盤にあと一歩が届かない候補者にとって、その重みは計り知れないものでした。
公明票離反の影響試算
日本経済新聞の試算
日本経済新聞は、公明党の選挙協力がなければ、自民党は衆院小選挙区の現職のうち約2割が苦戦すると試算しています。
産経新聞社の試算
産経新聞社のより詳細な試算では、以下のような結果が出ています。
公明票が単に流出した場合 2024年衆院選で自民党が獲得した小選挙区132議席のうち、約52議席を失う可能性があります。これは約4割に相当する大きな数字です。
公明票が野党に上積みされた場合 公明票が単に自民党から流出するだけでなく、野党候補の得票に上積みされた場合、影響はさらに拡大します。自民候補と野党候補の間で4万票分(自民から2万票減、野党に2万票増)の差が生じるため、52選挙区どころではない影響が出る可能性があります。
毎日新聞の試算
毎日新聞は、具体的に落選危機に陥る可能性のある議員を試算しています。
次点との差が1万票未満の自民現職:25人 例えば以下の議員が含まれます。
- 島尻安伊子氏(沖縄3区):次点との差わずか1,769票
- 松野博一氏(千葉3区):次点との差3,139票
次点との差が1~2万票の自民現職:20人 以下の有力議員も厳しい戦いを強いられる可能性があります。
- 古屋圭司氏(岐阜5区):選対委員長
- 稲田朋美氏(福井1区):元防衛相
合計すると、少なくとも45人の自民党現職が落選危機に直面する可能性があります。
自民党幹部の反応
「ジリ貧同士が組んだ」との見方
自民党幹部の中には、立憲・公明の新党結成について「ジリ貧同士が組んだだけ」と強がる声もあります。両党とも支持率が伸び悩んでいる中での提携であり、必ずしも大きな脅威にはならないという見立てです。
しかし、選挙戦の現場を知る議員からは、公明票の離反を深刻に受け止める声が上がっています。特に都市部の接戦区を抱える議員にとって、約2万票の喪失は死活問題です。
「人物本位」という曖昧さ
公明党の斉藤代表は、新党が候補を出さない選挙区では「人物本位」で支援先を決めると説明しています。自民党候補への支援の可能性を完全には排除していません。
しかし、この曖昧な姿勢が自民党にとってプラスに働くかは不透明です。創価学会の組織としての投票行動がどうなるかが、最終的なカギを握ります。
地域別の影響
西日本で影響大
公明票は大阪や福岡を中心に西日本で特に多い傾向があります。これらの地域では、自民党候補への影響がより深刻になる可能性があります。
都市部の接戦区
東京や大阪などの都市部では、無党派層の動向に加えて組織票の影響が大きくなります。公明票の離反は、都市部の接戦区で特に大きなインパクトを与えるでしょう。
自民党の対応策
維新との協力強化
自民党は2025年10月の連立解消後、日本維新の会との閣外協力で政権運営を進めています。衆院選でも維新との選挙協力を模索する可能性がありますが、維新も独自路線を重視しており、全面的な協力は難しい状況です。
無党派層への訴求
公明票を失った分を補うため、自民党は無党派層への訴求を強化する必要があります。高市首相の政策実績をアピールし、政権担当能力を強調する戦略が考えられます。
候補者の質向上
組織票に頼れなくなった以上、個々の候補者の魅力や政策力で勝負するしかありません。裏金問題などで傷ついたイメージを払拭するための、クリーンな候補者の擁立が求められます。
注意点と今後の展望
試算の限界
今回紹介した試算は、2024年衆院選のデータをもとにした机上の計算です。実際の選挙では、政策争点、候補者の個人的魅力、投票率など、さまざまな要因が結果を左右します。
公明票の行き先は不確定
公明党が新党に参加しても、創価学会員の投票行動が100%そのまま野党候補に流れるとは限りません。「人物本位」で自民党候補を支援するケースも出てくる可能性があります。
短期決戦の影響
高市首相は1月27日公示・2月8日投開票という短期決戦を想定しています。この短い期間で、立憲・公明新党がどこまで選挙態勢を整えられるかも、結果を左右する重要な要因です。
まとめ
立憲民主党と公明党の新党結成は、自民党にとって大きな打撃となる可能性があります。1選挙区あたり約2万票とされる公明票の離反により、小選挙区の現職議員のうち約2割が苦戦するとの試算が出ています。
特に、次点との差が1~2万票だった接戦区の議員にとっては、公明票の喪失は死活問題です。自民党は維新との協力強化や無党派層への訴求で対抗を図るものの、26年間の連立で得てきた「魔法の杖」を失う影響は計り知れません。
2月の衆院選は、日本政治の構図を大きく変える歴史的な選挙となる可能性があります。有権者としては、各党の政策を冷静に見極めることが重要です。
参考資料:
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