モスバーガー「朝モス」3年ぶり刷新で朝食市場に攻勢
はじめに
モスフードサービスは2026年3月12日、「モスバーガー」の朝食時間帯限定メニュー「朝モス」を3年ぶりにリニューアルすると発表しました。3月18日から全国の店舗で新メニューの提供を開始します。
外食産業における朝食市場は5000億円を超える規模に成長しており、各チェーンが朝の時間帯の需要獲得に力を入れています。ランチや夕食に比べて競争が緩やかな「オフピーク」の時間帯を攻略することで、既存店舗の売上を底上げする狙いがあります。
この記事では、朝モスの刷新内容と、拡大する外食朝食市場の動向について解説します。
朝モスリニューアルの全容
新メニューのラインアップ
今回のリニューアルでは、モスバーガーの強みである「野菜」と「テリヤキ」を活かした2つの新商品が登場します。
1つ目は「朝の野菜バーガー ~オーロラソース~」です。バンズにレタス、トマト、パティ、オニオンスライスを挟み、オーロラソースでさっぱりと仕上げた商品で、単品390円、ドリンクセット540円で提供されます。トマトの厚さを従来の2倍にし、ランチタイムの商品と同じサイズ感で朝から満足感のある一品に仕立てています。
2つ目は「朝のとろったまチーズバーガー ~テリヤキソース~」です。モスバーガーが元祖として知られるテリヤキバーガーをモーニング仕様にアレンジした商品で、バンズにチーズとパティ、半熟風たまごを挟んでいます。単品440円、ドリンクセット590円です。
いずれの商品にも、大豆由来の植物性たんぱくを使った「ソイパティ」版が用意されており、健康志向の顧客にも対応しています。ソイ朝の野菜バーガーは単品410円、ソイ朝のとろったまチーズバーガーは単品460円です。
店舗限定のプレートメニュー
さらに、一部店舗ではトースト付きのプレートメニューも新たに展開します。バーガーだけではなく、ゆっくり朝食を楽しみたい層に向けた提案で、カフェのモーニングセットのような利用シーンを想定しています。
提供時間は午前5時(店舗により午前6時半〜7時頃の開店時)から午前10時30分までです。
リニューアル記念キャンペーン
リニューアルを記念して、3月18日から4月14日まで、クーポン提示やネット注文、セルフレジの利用で対象の朝モスセットが40円引きになるキャンペーンを実施します。また、朝モス購入レシートで応募できるSNSキャンペーンも開催し、100名にオリジナルジャンパーをプレゼントします。
5000億円超に成長した外食朝食市場
市場規模と成長率
日本の外食産業における朝食市場は、2023年7月〜2024年6月の1年間で5190億円に達し、前年同期比9.2%増、コロナ前の5年前と比較すると22.0%増と大きく成長しています。
この成長の背景には、共働き世帯の増加、単身世帯の増加、自炊をしない人の増加といった社会構造の変化があります。朝食を自宅で準備する時間がない人々が、外食チェーンのモーニングメニューに流れている構図です。
朝食欠食率と「伸びしろ」
日本の朝食欠食率は22.8%と、昼食や夕食に比べて突出して高い水準にあります。裏を返せば、朝食を食べていない層を取り込める余地が大きいということです。外食チェーンにとって、朝食市場は「伸びしろのある成長フロンティア」として注目されています。
競合チェーンの動き
朝食市場をめぐる競争は激化しています。マクドナルドは「朝マック」を主力メニューの一つとして継続的に強化しており、2026年初頭にはテレビCMキャンペーンを展開しています。すき家は全国1900店舗以上で朝5時から11時までモーニングメニューを提供し、自社製ベーコンエッグ朝食を450円で販売するなど、コストパフォーマンスを武器に攻勢をかけています。
朝食の満足度調査では、コメダ珈琲店が1位、マクドナルドが2位、すき家が3位にランクインしており、モスバーガーとしては今回のリニューアルで巻き返しを図る形です。
オフピーク戦略の意義と展望
既存店舗の収益性向上
外食産業にとって、朝食時間帯の強化は既存店舗の稼働率を高める効果的な手段です。昼食や夕食のピーク時に比べて、朝の時間帯は客数が少なく、厨房設備や人員を十分に活用できていない状況があります。
モスバーガーが今回のリニューアルで「ランチ時の商品と食材を共通化」したのは、朝専用の食材を別途仕込む手間を省き、オペレーション効率を高める工夫です。仕込みをしながらの販売がしやすくなり、スタッフの負担を軽減できます。
朝食利用のリピート効果
朝食時間帯の利用には、リピート率が高いという特徴があります。通勤・通学前の限られた時間に朝食をとる場合、毎回新しい店を探すよりも、同じチェーンを習慣的に利用する傾向が強くなります。朝の顧客を獲得できれば、ヘビーユーザーとして定着しやすく、客数増に直結します。
国内外食市場の成熟化への対応
国内の外食消費が成熟期を迎える中、ランチや夕食だけでは成長に限界があります。朝食やおやつ時間帯(アフタヌーン)、深夜帯といったオフピークの需要を掘り起こすことが、今後の外食産業の成長戦略として重要性を増しています。モスバーガーの朝モス刷新は、こうした業界全体のトレンドを象徴する動きです。
まとめ
モスバーガーの「朝モス」3年ぶりのリニューアルは、5000億円を超える外食朝食市場の成長を背景にした戦略的な一手です。野菜バーガーやテリヤキバーガーといった自社の強みを朝食メニューに展開し、ソイパティやプレートメニューで多様なニーズに対応しています。
ランチの食材と共通化してオペレーション効率を高めつつ、朝食習慣の定着によるリピーター獲得を狙う姿勢は、外食産業全体が模索する「オフピーク需要の開拓」を体現するものです。マクドナルドやすき家との朝食市場での競争がどう展開していくか、今後の動向が注目されます。
参考資料:
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