日経平均2300円超の急反発、中東リスク後退で買い戻し加速
はじめに
2026年3月5日、東京株式市場で日経平均株価が前日比2,300円を超える大幅反発を見せました。一時5万6,600円台を付け、東証プライム上場銘柄の約9割が上昇する全面高の展開です。
この急反発の背景には、前日の米欧株式市場でイラン攻撃への過度な警戒感が後退し、主要株価指数が軒並み上昇した流れがあります。本記事では、急反発の要因を分析し、今後の市場の見通しについて考察します。
イラン攻撃と株式市場の混乱
米国・イスラエルによるイラン攻撃の経緯
2026年2月28日、米国とイスラエルはイランに対する軍事攻撃を開始しました。トランプ大統領は攻撃が「4〜5週間」続く可能性があると発言し、市場に大きな衝撃を与えました。
攻撃開始直後、ブレント原油価格は13%急騰して1バレル82ドルに達し、エネルギー価格の高騰懸念が世界の金融市場を揺るがしました。
株式市場への直接的影響
イラン攻撃を受けて、日経平均株価は3営業日続落しました。3月4日には前日比2,033円安の5万4,245円まで下落し、リスク回避の売りが広がりました。世界的にも株式市場は軒並み下落し、安全資産とされる金や米国債に資金が流入する典型的な「有事の動き」が見られました。
急反発の3つの要因
地政学リスクの過度な織り込みが修正
3月4日の米欧市場では、イランが米国に対して対話の用意があるシグナルを送っているとの報道が流れました。これを受けて、軍事衝突の長期化・エスカレーションに対する過度な警戒感がいったん後退しました。
トランプ大統領が原油市場の安定化に取り組む姿勢を示したことも、エネルギー価格の急騰懸念を和らげる材料となりました。
米国経済指標の底堅さ
同日に発表された米国の雇用関連指標やサービス業の景況感指数が、米国経済の底堅さを示す内容でした。地政学リスクがあっても経済のファンダメンタルズは堅調であるとの見方が広がり、リスク資産への買い戻しを後押ししました。
ダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反発し、前日比238ドル(0.5%)高で取引を終えました。ナスダック総合指数は1%超の上昇となり、イラン攻撃開始以降の騰落がプラス圏に回復しています。
半導体セクターの買い戻し
前日の米国市場では半導体関連株が大きく反発しました。AI需要の拡大を背景とした半導体セクターの成長期待は根強く、地政学リスクによる急落場面では押し目買いの好機と捉える投資家が多かったことが分かります。
この流れを受けて東京市場でも、アドバンテストが一時8%高となるなど、半導体関連銘柄に大きな買い戻しが入りました。三菱UFJフィナンシャル・グループなど金融株も上昇し、幅広いセクターで買いが広がりました。
今後の市場見通しと注意点
楽観は禁物、3つのリスクシナリオ
大幅反発となったものの、以下の3つのリスクは引き続き市場の重荷となる可能性があります。
第一に、イラン情勢のエスカレーションリスクです。攻撃がトランプ大統領の想定通り数週間で終結するのか、長期化するのかによって市場への影響は大きく異なります。イランの報復攻撃や、ホルムズ海峡の航行リスクが高まれば、原油価格が再び急騰する可能性があります。
第二に、原油価格の動向です。WTI原油先物が比較的落ち着いた動きを見せていることが反発の一因ですが、中東情勢の急変で再びエネルギー価格が跳ね上がれば、インフレ懸念が再燃し、利下げ期待が後退するリスクがあります。
第三に、トランプ関税の問題です。地政学リスクに注目が集まる中、米国の通商政策を巡る不透明感も依然として残っており、関税措置の拡大が企業業績に影を落とす可能性があります。
投資家が注目すべきポイント
今後の市場の方向性を見極めるうえで、イランとの停戦交渉の進展状況が最も重要な指標です。対話のシグナルが具体的な交渉に発展すれば、市場はリスクオンの姿勢を強める可能性があります。
また、米ブロードコムなど主要半導体企業の決算発表も注目されます。AI関連投資の実需が確認されれば、半導体セクターの回復が株式市場全体を牽引する展開も期待できます。
まとめ
日経平均の2,300円超の急反発は、イラン攻撃に対する過度な警戒感の後退、米国経済の底堅さ、半導体セクターへの買い戻しという3つの要因が重なった結果です。
ただし、中東情勢は依然として流動的であり、原油価格の動向やトランプ関税の不透明感も残っています。短期的な反発に過度に楽観せず、地政学リスクの推移を注視しながら慎重に判断することが重要です。
参考資料:
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