Research
Research

by nicoxz

過去最大122兆円予算が映す積極財政と金利上昇時代の実相

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

2026年度予算は、2026年4月7日に参院本会議で成立しました。一般会計総額は122兆3092億円と過去最大で、前年度当初比では7兆1114億円の増加です。しかも成立当日の首相発言では、財政運営そのものと並んで、中東情勢を受けた石油の代替調達と年越し供給の確保が前面に出ました。

この並びは偶然ではありません。今回の予算は、賃上げや社会保障、防衛、地方財政を膨らませる一方、金利上昇で国債費が初めて30兆円を超え、さらにエネルギー危機への即応も求められる内容です。この記事では、記録的な予算規模の中身と、成立日に石油供給確保が語られた意味をあわせて整理します。

122兆円予算を膨らませた歳出構造

社会保障と国債費が押し上げる全体像

財務省の「令和8年度予算のポイント」によると、歳出のうち社会保障関係費は39兆559億円、地方交付税交付金等は20兆8778億円、国債費は31兆2758億円です。国債費は前年度比で3兆579億円増え、初めて30兆円台に乗りました。一般歳出も70兆1557億円まで膨らみ、全体として122兆円台に入っています。

この構造から読み取れるのは、政策的に新規の大型事業を積み上げたというより、既存の国家機能を維持するだけでも予算が膨らみやすい局面に入ったことです。高齢化に伴う社会保障費の増加は続き、金利のある世界への回帰が過去債務の利払いと償還費を押し上げています。nippon.comも、社会保障費と国債費だけで歳出の6割近くを占めると整理しています。

防衛関連も高止まりしています。財務省資料では、防衛力整備計画対象経費は8兆8093億円です。加えて、教育無償化、子育て加速化、GXや半導体支援など、複数年度で進める重点政策が当初予算側へ織り込まれています。つまり2026年度予算は、危機対応の特別枠というより、平時と有事の境目が曖昧になった時代の常設予算に近い姿です。

税収増でも消えない財政の重さ

一方、歳入も伸びています。財務省資料では税収は83兆7350億円と過去最高を見込みます。新規国債発行額は29兆5840億円で、政府は「30兆円未満」を維持したと強調しています。公債依存度は24.2%で、一般会計当初予算ベースのプライマリーバランスも1.3兆円の黒字とされました。

ただし、ここで安心するのは早計です。税収が増えても、利払い費の増勢が続けば財政余力は細ります。財務省所管予算概算では、国債費のうち利子及割引料は13兆371億円に達しています。これは金利上昇の影響が、予算の説明資料に数字として明確に現れ始めたことを意味します。歳入改善があっても、国債費がそれを吸収する構図は今後も続きやすいです。

ロイターは4月7日、今回の予算成立が年度内に間に合わず、暫定予算を経たうえで4月にずれ込んだと伝えました。少数与党の参院で審議が長引いた事情もありますが、裏を返せば、予算規模が大きいほど中身の説明責任は重くなるということです。過去最大という見出しだけでなく、膨張した固定費をどう管理するかが本質的な論点になります。

石油確保発言が示した危機対応予算の現実

エネルギー安保が財政運営と一体化した局面

予算成立当日、高市首相は記者団に対し、ホルムズ海峡を通らないルートでの調達を進めた結果、備蓄放出量を抑えながらも年を越えて石油の供給を確保できるめどがついたと述べました。FNN、テレビ朝日、共同通信系各社の報道では、日本には約8カ月分の石油備蓄があり、4月は前年実績比で2割以上、5月は過半の代替調達にめどが付き、米国からの調達は5月に前年比約4倍まで増える見通しとしています。

ここで見落とせないのは、予算成立のニュースとエネルギー確保のニュースが一体で語られている点です。資源エネルギー庁は、石油備蓄制度が国家備蓄と民間備蓄の二本立てで運営されていると説明しています。つまり、危機時の供給維持は市場任せではなく、制度設計と財政措置に支えられています。原油の代替調達、補助金、物流支援、重要施設への優先供給は、すべて予算の裏付けがあって初めて動きます。

実際、首相はガソリン価格抑制策について、必要があれば予備費の活用も可能だとの認識を示しました。今回の予算では一般予備費が1兆円に積み増されています。予備費は平時には曖昧な財布と批判されがちですが、ホルムズ海峡のような地政学リスクが現実化すると、機動性の価値が一気に高まります。2026年度予算の特徴は、この機動性を通常予算の内部に大きく組み込んでいることです。

供給確保の前進と残る脆弱性

もっとも、年越し供給にめどが付いたことと、エネルギー安全保障が万全になったことは別です。テレビ朝日は4月5日、UAEフジャイラやサウジ西部ヤンブーを使うホルムズ海峡回避ルートで原油タンカーが日本に到着したと報じました。共同通信は、回避ルートによる代替調達が5月以降に本格化する見通しを伝えています。

これは前進ですが、日本の原油調達はなお中東依存が高く、ルート変更には港湾、保険、輸送日数、価格の問題が伴います。備蓄があるから安心という単純な話ではありません。危機が長引けば、補助金や輸送支援、産業向け優先供給などで追加の財政対応が必要になる可能性があります。今回の予算が大きいのは、歳出の膨張だけでなく、こうした外部ショックを吸収する国家のコストが上がっているからでもあります。

注意点・展望

今回の予算を評価する際に避けたい誤解は二つあります。一つは、税収が増えているから財政不安は後退したと見ることです。実際には金利上昇で国債費が増え、財政の硬直化はむしろ進んでいます。もう一つは、石油備蓄があるから中東リスクは管理済みだと考えることです。備蓄は時間を買う手段であり、依存構造そのものを消すものではありません。

今後の焦点は、第一に長期金利上昇が国債費へどこまで波及するか、第二に予備費や補助金の執行が常態化しないか、第三にエネルギー調達多角化が一時対応で終わらず制度化されるかです。予算成立は通過点であり、2026年度は執行段階で財政の実力が試される年になります。

まとめ

2026年度予算は、122兆3092億円という過去最大の規模だけでなく、その中身が日本経済の現在地をよく示しています。社会保障と地方財政を支えつつ、金利上昇で膨らむ国債費を抱え、同時に中東情勢に備えたエネルギー危機対応も進めなければならない。平時の成長政策と有事の危機管理が、同じ当初予算の中に折り重なっています。

成立当日に首相が語った「年を越えて石油の供給を確保できるめど」は、その象徴的な一言です。今の日本の財政は、景気対策だけでも再建だけでも語れません。国民生活を守る即応力と、金利上昇に耐える持続性を同時に問われる段階へ入っています。

参考資料:

関連記事

最新ニュース