日本の財政リスク、高市政権の積極財政は持続可能か
はじめに
2026年1月27日公示の衆院選を前に、日本の財政状況に対する懸念が高まっています。高市早苗政権が掲げる「責任ある積極財政」のもと、2026年度予算案の一般会計総額は122.3兆円と過去最大を更新。国債費は31兆円を突破し、利払い費も13兆円を超える水準に膨らんでいます。
長期金利は約17年ぶりの高水準まで上昇し、40年国債利回りは3.1%に達しました。市場がここまで財政リスクを織り込んで動くのは近年では異例の事態です。本記事では、日本の財政状況と今後のリスクについて多角的に分析します。
過去最大の2026年度予算案
122兆円超の一般会計
高市政権が2025年12月に閣議決定した2026年度予算案は、一般会計総額が前年度比6.2%増の122兆3092億円となり、2年連続で過去最大を更新しました。初めて120兆円台に突入したことは、政権の積極財政姿勢を明確に示しています。
予算案の特徴として、社会保障費の増加に加え、防衛費や少子化対策、デジタル・GX(グリーントランスフォーメーション)投資への重点配分が挙げられます。高市首相は「いま必要なのは行き過ぎた緊縮財政により国力を衰退させることではなく、積極財政により国力を強くすることだ」と強調しています。
国債費31兆円の衝撃
国の借金である国債の元本返済と利払い費を合わせた「国債費」は31兆2758億円と、こちらも過去最大を記録しました。特に利払い費は13兆371億円とかつてない水準に膨らんでいます。
財務省は、利払い費の算定に使う想定金利を3.0%に引き上げました。2028年度にかけて金利が2.5%まで上昇した場合、利払い費は約16.1兆円まで増え、その後金利が横ばいでも2034年度には約25.6兆円まで膨らむと試算しています。
補正予算と借金依存
18.3兆円の補正予算
2025年度補正予算の一般会計総額は18.3兆円に達しました。これは前年度補正と比較しても大幅な増額であり、「危機管理・成長投資」に6.4兆円が計上されています。
補正予算成立後、日本国債は売られて長期金利は急上昇し、円安も進行しました。市場では、財政規律への懸念が強まっています。
国債発行額の増加
高市政権下での新規国債発行額は、2025年度補正が11兆6960億円、2026年度当初が29兆5840億円で、合計41兆2800億円に上ります。これは石破前政権下の2024年度補正と2025年度当初を合わせた35兆3371億円を約6兆円上回る水準です。
国債発行残高は2026年度末時点で1145兆円に達する見通しであり、GDP(国内総生産)比で見ても主要先進国の中で突出した水準となっています。
金利上昇と市場の反応
歴史的な金利水準
高市首相が自民党総裁に就任して以降、ほぼ一貫して長期・超長期金利の上昇と円安が進んできました。10年国債利回りは約17年ぶりに1.6%台まで上昇し、30年債は1999年の発行開始以降で初の3.2%台を記録。40年国債利回りは3.1%に急騰しています。
金融市場がここまで財政リスクを反映して動いたことは、近年では見られなかった異例の事態とされています。
超長期債の消化難
国債の市中消化が難しくなってきたことから、財務省は20年、30年、40年債の発行額を減らさざるを得ない状況に追い込まれています。年金基金や保険会社といった伝統的な超長期債の買い手が、金利上昇リスクを警戒して購入を手控えているためです。
財政破綻リスクをめぐる議論
楽観的な見方
一部の専門家は、日本の財政破綻リスクは極めて限定的だと主張しています。長期金利上昇の主因は、デフレ脱却による金融政策の正常化、マイナスの実質金利の解消、インフレ傾向の定着による期待インフレの上昇であり、財政悪化はあまり関係がないという見方です。
また、日本国債の大部分は国内で保有されており、円建てで発行されているため、ギリシャのような財政危機は起きにくいとの分析もあります。三井住友DSアセットマネジメントは、深刻な「トリプル安」や「日本売り」が発生する恐れは現時点で小さいと評価しています。
警戒的な見方
一方で、野村総合研究所の木内登英氏は、高市政権が更なる積極財政姿勢を維持すれば、大幅な株安、円安、債券安のトリプル安となって「日本売り」を生じさせる可能性があると警告しています。
三菱総合研究所も、日本の財政は将来の破綻リスクが高まっており財政再建が急務だと指摘。「多くの研究者は財政政策を抜本的に変更しない限り、10年足らずで深刻な危機が発生する可能性があると結論付けている」との見解を示しています。
財政健全化目標の行方
PB黒字化目標の見直し
高市首相は、これまで政府が掲げてきた基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の単年度黒字化目標について、「数年単位でバランスを確認する」方向に見直す方針を示しています。
この方針変更は、短期的な財政健全化圧力を緩和する一方で、中長期的な財政規律の弛緩につながるとの懸念もあります。財政健全化の道筋が見えなくなれば、市場の不安がさらなる金利急騰を招く可能性があります。
政治的制約
2024年の衆議院選挙、2025年の東京都議選、参議院選挙と与党が連敗し、衆参両院で過半数を失った結果、野党の協力なしに予算を編成できない状況が続いています。このため、消費税減税などの財政拡張政策が実現しやすい政治環境となっており、財政規律を維持することがより困難になっています。
注意点・今後の展望
金利上昇の影響拡大
金利上昇は、国債の利払い費増加だけでなく、住宅ローン金利や企業の借入金利にも影響を及ぼします。家計や企業への負担増が景気を冷やすリスクも考慮する必要があります。
財政危機への備え
財務省によれば、仮に財政危機に陥り国が信認を失えば、金利の大幅な上昇に伴い国債価格が下落し、家計や企業にも影響を与えるとともに、政府による様々な支払いに支障が生じる恐れがあります。
専門家の間では、財政規律を重視する「財政規律派」、デフレ脱却を優先する「リフレ派」、円建て国債がいくら増えても債務不履行にならないとする「MMT派」と、見解が大きく分かれています。
まとめ
高市政権の「責任ある積極財政」は、過去最大の予算規模と国債発行残高1145兆円という形で具現化しています。長期金利の歴史的な上昇と円安の進行は、市場が財政リスクを意識し始めた証左ともいえます。
財政破綻の可能性については専門家の間でも見解が分かれていますが、金利上昇が利払い費を増加させ、それがさらなる国債発行を必要とするという悪循環のリスクは無視できません。今回の衆院選で国民がどのような判断を下すかが、日本の財政の行方を大きく左右することになるでしょう。
参考資料:
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