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by nicoxz

東洋エンジ株が一時19%急落、レアアース思惑で32年ぶり高値から乱高下

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はじめに

2026年1月16日の東京株式市場で、東洋エンジニアリング株が激しく乱高下しました。前日までレアアース関連銘柄として急騰を続け、1993年5月以来32年8カ月ぶりの高値を更新していた同社株ですが、16日には一時19%安まで売り込まれる場面がありました。この劇的な値動きの背景には、中国によるレアアース輸出規制への思惑と、投機的な短期売買の交錯があります。本記事では、東洋エンジニアリング株が急騰した理由、16日の急落の背景、そして国産レアアース開発の展望について詳しく解説します。

中国のレアアース輸出規制と市場の反応

輸出規制強化の発表

2026年1月6日、中国商務省は軍民両用(デュアルユース)の規制に基づいて、日本への輸出規制を強化すると発表しました。この措置は、高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁を念頭に置いた経済圧力と見られています。

中国商務部の公告により、デュアルユース品については、日本の軍事ユーザー、軍事用途、およびすべての日本軍事力向上に資する最終ユーザーへの輸出を禁止するとされました。輸出規制法で指定された禁輸リストには、レアアース(希土類)も含まれています。

レアアースの戦略的重要性

レアアースは、電気自動車のモーター、スマートフォン、風力発電機、精密誘導兵器など、現代の先端技術製品に不可欠な材料です。中国は世界のレアアース埋蔵量の約半分を有し、生産量シェアでは約70%を占めています。日本は中国からのレアアース輸入に大きく依存しており、供給が途絶えれば産業全体に甚大な影響が及びます。

野村総合研究所などの試算によれば、レアアース輸入の3カ月間停止による経済損失は約6,600億円、1年間では2.6兆円に達するとされています。自動車、電子部品、工作機械などの幅広い産業に影響する可能性があり、日本経済にとって極めて深刻なリスクとなっています。

市場の思惑と関連株の急騰

中国の輸出規制報道を受け、投資家の間では「中国依存の緩和に向け国内での採掘の必要性が高まる」という思惑が広がりました。この期待感から、レアアース関連銘柄が軒並み上昇し、特に国産レアアース開発に関与する企業への注目が集まりました。

東洋エンジニアリングは、国立研究開発法人の海洋研究開発機構(JAMSTEC)の委託を受け、海底からレアアース泥を回収する技術開発の一部に携わっています。この事業への期待から、同社株は急騰し、年初から7連騰を記録しました。昨年末と比べて株価は既に2倍になり、1月8日には32年ぶりの高値を更新しました。

16日の激しい値動きの背景

一時19%安の急落

1月16日、東洋エンジニアリング株は一時前日比19%安まで売り込まれました。投資家コミュニティの投稿によると、午前中の取引は特に激しく、ストップ高付近で寄り付いた後、ストップ安付近まで売られ、すぐに前日終値付近まで戻すという極めてボラティリティの高い展開となりました。

この急落は、連日の急騰で積み上がった短期的な利益確定売りが一斉に出たことが主因です。また、日経平均全体が過熱感から調整局面に入ったことも、東洋エンジ株の下落を加速させました。

市場全体の過熱感

16日の東京株式市場では、日経平均株価が前日比174.33円安の53,936.17円と続落しました。週初に衆議院の早期解散観測を背景とした「高市トレード」で急騰し、昨年末比で約4,000円上昇していた反動から、利益確定売りが優勢となりました。

15日時点で騰落レシオ(25日移動平均)は144.8と買われ過ぎ水準にあり、相場の過熱感が警戒されていました。この市場全体の調整圧力が、急騰していた東洋エンジ株にも波及したと考えられます。

空売り勢の踏み上げ相場

東洋エンジ株の急騰の背景には、空売り勢の踏み上げ相場もありました。Bloombergの報道によると、連日の急騰により空売りを仕掛けていた投資家が損失を被り、買い戻しを余儀なくされる「踏み上げ相場」が発生していました。

しかし、16日の急落は、この踏み上げが一巡し、逆に利益確定売りが優勢になったことを示唆しています。投機的な短期売買が活発化している状況では、株価の乱高下が起こりやすくなります。

東洋エンジニアリングのレアアース事業

海底レアアース泥の回収技術

東洋エンジニアリングは、JAMSTECの委託を受けて、これまで培ってきた資源開発技術、サブシー技術を活用し、海底6,000mからレアアース泥を回収するシステムの技術開発の一部に携わっています。

日本の排他的経済水域(EEZ)内の南鳥島沖には、大量のレアアース泥が存在することが確認されています。この海底資源を実用化できれば、中国への依存度を大幅に下げることができる可能性があります。

世界初の深海試掘プロジェクト

2026年1月11日、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」が清水港を出港し、南鳥島沖EEZ海域において世界初となる深海レアアース泥の試掘を開始する予定です。この試掘は、技術的実現可能性を検証する重要なステップであり、成功すれば国産レアアース開発に大きく前進します。

東洋エンジニアリングは、このプロジェクトにおいて回収システムの一部を担っており、技術的な成功が期待されています。ただし、実用化には技術面だけでなく、経済性やコスト面でのハードルも存在します。

期待先行の株価形成

市場の専門家は、東洋エンジ株の急騰について「期待先行」と指摘しています。海底レアアース泥の回収技術は、まだ実証段階であり、商業化まで数年から十年単位の時間がかかる可能性があります。

また、東洋エンジニアリングの事業において、レアアース関連が占める割合は現時点では限定的です。同社の主力事業は石油化学プラントなどのエンジニアリングであり、レアアース事業が直ちに収益に大きく貢献するわけではありません。このため、株価の急騰は将来への期待を先取りした面が強く、実態との乖離が指摘されています。

日本のレアアース戦略の課題

中国依存からの脱却

日本企業は、中国のレアアース輸出規制を受けて、調達先の多角化を進めています。米国、オーストラリア、カナダ、ベトナムなど、中国以外からの調達を増やす動きが加速しています。

また、レアアースを使わない代替技術の開発も進められています。例えば、電気自動車のモーターにおいて、ネオジム磁石を使わない設計や、リサイクル技術の向上などが研究されています。

国内開発の現実性

国産レアアース開発は、エネルギー安全保障の観点から重要ですが、実現には多くの課題があります。海底6,000mからの採掘は技術的に非常に困難であり、環境への影響も慎重に評価する必要があります。

さらに、コスト面でも中国産と競争できる水準にするには、大規模な技術革新と投資が必要です。政府の支援や長期的な事業計画が不可欠であり、民間企業だけで実現するのは難しい状況です。

国際連携の重要性

日本は、米国、オーストラリアなどとレアアース開発で連携を強めています。2025年10月には、米豪がレアアース開発で合意したことが報じられ、日本もこの枠組みに参加する可能性があります。

国際的なサプライチェーンを構築し、中国への過度な依存を減らすことが、経済安全保障上の重要な戦略となっています。東洋エンジニアリングも、こうした国際プロジェクトに参画する機会を模索していると見られます。

今後の展望と投資家への示唆

株価の不安定性

東洋エンジ株は当面、乱高下が続く可能性があります。レアアース関連の思惑材料は短期的な投機を誘いやすく、実態との乖離が大きい場合、調整圧力が強まります。

投資家は、企業の実際の業績や事業進捗を冷静に見極める必要があります。期待先行の株価は、ニュースや思惑に敏感に反応するため、リスク管理が重要です。

長期的な事業価値

一方で、東洋エンジニアリングがレアアース回収技術の開発に成功し、実用化のめどが立てば、長期的な事業価値は大きく向上する可能性があります。日本のエネルギー安全保障に貢献する企業として、政府の支援を受けられる可能性もあります。

長期投資の観点からは、技術開発の進捗、試掘プロジェクトの結果、政府の支援策などを注視し、事業の実現可能性を継続的に評価することが求められます。

市場の注目継続

中国のレアアース輸出規制が実際にどの程度厳格化されるか、日本企業への影響がどこまで深刻になるかによって、国産開発への期待感は変動します。今後も関連ニュースに市場は敏感に反応すると予想されます。

東洋エンジ株の動向は、日本のレアアース戦略と経済安全保障への市場の関心度を示すバロメーターとなっており、引き続き注目が集まるでしょう。

まとめ

東洋エンジニアリング株は、中国のレアアース輸出規制報道を契機に、国産開発への期待から32年ぶりの高値を更新しましたが、16日には一時19%急落し、激しい乱高下を見せました。この背景には、投機的な短期売買、市場全体の過熱感、そして期待先行の株価形成があります。

同社が取り組む海底レアアース泥の回収技術は、日本のエネルギー安全保障にとって重要なプロジェクトですが、実用化までには技術面、経済面で多くの課題が残されています。世界初の深海試掘プロジェクトの成否が、今後の展開を左右する鍵となります。

投資家は、短期的な思惑に惑わされず、事業の実態と長期的な実現可能性を冷静に見極めることが重要です。一方で、中国依存からの脱却という大きな流れの中で、国産レアアース開発への期待が継続することも事実であり、関連企業の動向には引き続き注目が集まるでしょう。

参考資料:

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