米国務長官が対イラン警告「最大の攻撃はこれから」
はじめに
2026年3月2日、ルビオ米国務長官は連邦議会で記者団に対し、イランへの攻撃について「米軍による最も大きな打撃はこれからだ」と警告しました。「次の段階では、イランにとっていまよりさらに厳しい措置になるだろう」と強調し、軍事作戦が長期化する見通しを示しています。
2月28日に米国とイスラエルがイランの核施設や軍事拠点を攻撃して以降、イラン最高指導者ハメネイ師の死亡が伝えられ、中東情勢は急激にエスカレートしています。ルビオ国務長官の発言は、米国がさらなる軍事行動を計画していることを明確に示すものです。
攻撃の背景と経緯
米国がイラン攻撃に踏み切った理由
米国がイラン攻撃に踏み切った背景には、複数の要因があります。まず、イランの核開発がいわゆる「免疫点(イミュニティ・ポイント)」に近づいていたことがあります。ルビオ国務長官によると、イランは12〜18カ月以内にミサイルとドローンの量が十分に増え、いかなる軍事的対応もコストが高すぎて不可能になる段階に達する可能性がありました。
また、2025年12月にイラン全土で1979年の革命以来最大規模の反体制デモが発生し、政権が弾圧で多数の死者を出していたことも、国際社会の批判を高める要因となりました。
トランプ大統領は攻撃の目的について「イラン政権からの差し迫った脅威を排除し、米国民を守ること」と説明しています。
2月28日の攻撃と成果
2月28日、米国とイスラエルはイランの核施設、ミサイル基地、軍事インフラに対する大規模な攻撃を実施しました。イラン中部のナタンツ核施設への攻撃は航空写真で損傷が確認されています。
この攻撃ではイランの最高指導者ハメネイ師が側近との会議中に狙われ、死亡したと報じられています。米情報機関はハメネイ師の行動を詳細に把握しており、会議の時間変更まで察知していたとされます。
ルビオ国務長官の発言の詳細
「最も厳しい打撃」の予告
ルビオ国務長官は3月2日、連邦議会の「ギャング・オブ・エイト」(上下両院の情報委員会幹部8人)に対し作戦の説明を行った後、記者団に発言しました。
具体的な作戦内容には触れませんでしたが、「作戦はまだ終わっていない」と明言しました。主な目標として、イランの弾道ミサイル能力の破壊、ドローン戦力の無力化、海軍力の壊滅を挙げています。
作戦期間についてはトランプ大統領が「4〜5週間」との見通しを示しつつ、「必要ならそれ以上続ける用意がある」と述べています。
地上部隊の投入も排除せず
米軍の地上部隊の派遣についても注目が集まっています。ルビオ国務長官は「現時点で投入する態勢は整っていないが、大統領には当然その選択肢がある。大統領は何も排除しない」と述べました。
トランプ大統領自身も「地上部隊に関して不安はない。すべての大統領が『地上部隊は投入しない』と言うが、私は言わない」と発言し、地上戦の可能性を否定していません。米軍制服組トップのケイン統合参謀本部議長も、中東への追加部隊派遣を明言しています。
国際社会の反応と懸念
米国内の世論
米国内では軍事行動に対する世論が分かれています。1月の世論調査では、全体の70%、無党派層では80%がイランに対する軍事行動に反対と回答しました。また、軍事行動を開始する前に大統領は議会の承認を得るべきだとの意見も多数を占めています。
議会では、大統領が議会承認なしにイラン攻撃を開始したことに対する批判の声も上がっています。戦争権限法をめぐる議論が活発化しており、作戦の長期化に伴い議会との対立が深まる可能性があります。
イランの報復と戦線拡大
イランは米国・イスラエルの攻撃に対し、湾岸諸国の米軍基地やエネルギー施設への報復攻撃を実施しています。カタールのLNG施設やサウジアラビアの製油所が被害を受け、ホルムズ海峡は事実上の封鎖状態に陥っています。
さらに、レバノンのヒズボラがハメネイ師殺害への報復としてイスラエルを攻撃し、イスラエル軍もレバノンへの大規模空爆と地上部隊投入で応戦しています。紛争は当初の米イラン間の対立を超え、中東全域に拡大しています。
注意点・展望
出口戦略の不在
最も懸念されるのは、明確な出口戦略が見えないことです。ルビオ国務長官の発言は攻撃の激化を予告するものであり、外交的解決に向けた具体的な道筋は示されていません。
トランプ大統領はイランの政府打倒を呼びかけており、体制転換まで視野に入れた長期的な軍事作戦になる可能性もあります。しかし、イラクやアフガニスタンの経験が示すように、軍事力だけで中東の問題を解決することは極めて困難です。
原油価格と世界経済への影響
ホルムズ海峡の封鎖状態が続く中、原油価格はWTIで100ドル台に急騰し、専門家の間では120〜140ドルまでの上昇も予測されています。作戦の長期化はエネルギー価格のさらなる上昇を招き、世界経済に深刻な打撃を与える可能性があります。
日本を含む中東依存度の高い国々は、エネルギー安全保障の観点から早期の事態収束を強く求める立場にあります。
まとめ
ルビオ国務長官の「最大の攻撃はこれから」という発言は、米国のイランに対する軍事作戦が新たな段階に入ることを示しています。ミサイル・ドローン能力の破壊、海軍力の壊滅を目標に、数週間にわたる作戦が予告されており、地上部隊の投入も排除されていません。
中東情勢は紛争の拡大と長期化のリスクが高まっています。エネルギー価格の急騰、世界経済への悪影響、そして地域の人道的危機の深刻化など、影響は多方面に及びます。国際社会がどのように外交的解決の道を模索していくのか、今後の動向を注視する必要があります。
参考資料:
関連記事
トランプ氏がイラン軍事作戦の長期化を示唆、地上部隊も
トランプ米大統領がイラン攻撃について「4〜5週間を超えても継続する」と表明し、地上部隊投入も排除しない姿勢を示しました。作戦の背景、目的、経済への影響を解説します。
米軍トップがイラン攻撃リスクを警告、外交と武力の岐路
米統合参謀本部議長がトランプ大統領にイラン攻撃の長期化リスクを助言したと報道。米イラン交渉の行方と軍事的緊張の背景を多角的に解説します。
米軍トップがイラン攻撃リスクを警告、政権内で対立深まる
米統合参謀本部議長のケイン大将がトランプ大統領にイラン攻撃の長期紛争リスクを助言したと報道。政権内の主戦派と慎重派の対立が鮮明になるなか、2月26日のジュネーブ核協議が重要局面を迎えます。
米軍トップがイラン攻撃の長期化リスクを警告
米統合参謀本部議長がトランプ大統領にイラン攻撃の長期紛争リスクを助言したとの報道を解説。軍事・外交の両面から今後の展開を分析します。
トランプ氏がイラン攻撃を示唆、期限は10~15日
トランプ米大統領がイランへの軍事行動を「10~15日以内」に判断すると表明。米軍は中東に空母2隻を配備し、段階的な攻撃作戦を検討中です。核交渉の行方と軍事衝突の可能性を解説します。
最新ニュース
アンソロピックのClaude、需要急増で障害発生しChatGPT超え
米AI企業アンソロピックのChatbot「Claude」が前例のない需要で大規模障害を起こしました。OpenAIの軍事契約への反発でChatGPTからの乗り換えが急増し、米App Store首位に。
日銀が当座預金のデジタル化を本格始動へ
日銀の植田総裁がFIN/SUM 2026で当座預金のブロックチェーン活用を表明。トークン化構想の全容と企業決済への影響、国際プロジェクトとの連携を解説します。
バフェット氏、株主総会の質疑に登壇せず アベル新体制へ
バークシャー・ハザウェイの2026年5月の株主総会で、ウォーレン・バフェット氏が名物の質疑応答に登壇しないことが判明。新CEO グレッグ・アベル氏による新体制の全容を解説します。
ドコモが830億円下方修正、販促費増と競争激化の全貌
NTTドコモが2026年3月期の営業利益予想を830億円下方修正。MNP競争の激化による販促費増や端末返却プログラムの想定外コストなど、業績悪化の背景と今後の戦略を解説します。
フィンサム2026開幕、AIとブロックチェーンで金融変革
金融庁と日経が主催するフィンテックイベント「FIN/SUM 2026」が東京で開幕。高市首相が金融の力で成長戦略加速を訴え、資産運用立国の実現に向けた取り組みが注目されています。