ユニクロが子供向け下着を刷新、大規模調査が示す成長の変化
はじめに
ファーストリテイリング傘下のユニクロが、子供向けブラジャーの全面刷新に踏み切りました。7,000人を超える大規模調査の結果、胸の成長が始まる時期が従来の認識よりも約1年早いことが判明したためです。この調査結果を受けて、サイズ展開とデザインの両面で見直しが行われました。
ユニクロは2008年の「ブラトップ」、2016年の「ワイヤレスブラ」と、女性用インナーウェア市場で革新的な商品を生み出してきた実績があります。今回の子供向けラインの刷新は、同社のインナーウェア戦略がキッズ領域でも本格化していることを示しています。
調査が明らかにした成長時期の変化
7,000人超の声が示す実態
ユニクロは子供向けブラジャーの開発にあたり、7,000人を超える保護者や子供たちを対象とした調査を実施しました。この調査では、胸の成長が始まる時期が従来の一般的な認識より約1年早まっていることが確認されています。
従来、小学校高学年(10〜12歳)がファーストブラの主な対象とされてきました。しかし調査結果は、それよりも早い段階で体の変化を感じる子供が増えていることを示しています。ユニクロのモニター調査でも、小学4〜6年生の女子の6割以上がすでにブラやブラトップを着用しているという結果が出ています。
世界的に進む思春期の早期化
この傾向は日本だけの現象ではありません。2020年に医学誌「JAMA Pediatrics」に掲載されたレビュー論文によると、女の子の思春期が始まる平均年齢は1977年から2013年の間に、10年ごとに約3カ月ずつ早まっていることが報告されています。
日本小児内分泌学会によると、通常は女の子で10歳頃から思春期の変化が始まりますが、7歳未満で乳房の発達が始まるケースは「思春期早発症」として医学的な対応が必要になる場合もあります。こうした背景から、子供の体の変化に適切に対応するインナーウェアの需要が高まっています。
ユニクロのインナーウェア革新の歴史
ブラトップからワイヤレスブラへ
ユニクロのインナーウェア戦略を振り返ると、同社がこの分野でいかに市場を変えてきたかがわかります。
2008年に発売された「ブラトップ」は、ブラジャーとトップスを一体化させた画期的な商品でした。発売初年度から大ヒットを記録し、約300万枚を販売しています。ブラトップは「ブラジャーをつけない」という新しい下着文化を生み出し、ユニクロの定番商品として定着しました。
2016年には「ワイヤレスブラ」を投入し、ブラジャー市場に本格参入しています。ワイヤレスブラは、特殊な素材と構造によりワイヤなしでバストを面で支えるという新しいコンセプトで、ワイヤブラの造形性とノンワイヤブラの快適性を両立しました。2017年には前年の倍以上、2018年もさらに前年を超える売上を記録するなど、ノンワイヤーブラ市場の拡大を牽引しました。
子供向けラインの展開
子供向けインナーウェアへの本格参入は2017年からです。まず子供用ブラトップを発売し、2020年には子供用ブラジャーのラインナップを追加しました。成人向けで培った「快適さ」と「機能性」の両立というノウハウを、子供向け商品にも展開する戦略です。
今回の刷新では、調査結果を踏まえてサイズレンジの拡大とデザインの見直しが行われています。成長段階に合わせた段階的なサポート機能を備え、子供が自分で選びやすいデザインに改良されました。
2026年春夏シーズンの取り組み
キッズインナー全体の進化
今回の子供向けブラジャーの刷新は、ユニクロの2026年春夏キッズコレクション全体の見直しの一環でもあります。エアリズム素材を活用したガールズ用インナーでは、ブラトップの肩ひもを太幅に変更してタンクトップのような見た目にするなど、着用時の見え方にも配慮した改良が施されています。
また、エアリズム肌着ではメッシュ生地を採用した新しいタンクトップやUネックシャツも展開され、子供のインナーウェア全体の機能性が向上しています。
大規模調査に基づく商品開発
ユニクロの強みは、大規模な消費者調査に基づいた商品開発にあります。今回の7,000人超の調査は、単なるアンケートにとどまらず、子供の体の成長に関する実態を把握するための包括的な取り組みです。
グローバル商品本部が中心となり、保護者からの「もっと大きなサイズはないか」という声にも対応しています。こうした消費者の声を直接商品開発に反映するプロセスが、ユニクロの競争力の源泉です。
注意点・展望
子供向けインナーウェア市場では、ワコールのジュニアブラなど競合他社もラインナップを充実させています。ワコールは長年にわたる女性の体型研究に基づいた成長段階別の商品展開で知られ、GU(同じファーストリテイリング傘下)もリーズナブルな価格帯で子供向けインナーを提供しています。
今後の課題は、成長の個人差が大きい子供に対して、いかに適切なサイズ選びをサポートするかという点です。店頭での相談がしにくいという声も多く、オンラインでのサイズガイド充実やプライバシーに配慮した購買体験の設計が重要になります。
思春期の早期化が世界的に進む中、子供の体の変化に寄り添うインナーウェアの需要は今後も拡大が見込まれます。ユニクロの大規模調査に基づくアプローチは、この市場でのリーダーシップを確立する布石といえるでしょう。
まとめ
ユニクロの子供向けブラジャー刷新は、7,000人超の大規模調査から導き出された「成長時期の早期化」への対応策です。2008年のブラトップ以来、インナーウェア市場で革新を続けてきたユニクロが、キッズ領域でもデータに基づく商品開発を推進しています。
保護者の方は、子供の体の変化に早めに目を向け、成長段階に合ったインナーウェアを選ぶことが大切です。ユニクロの新ラインナップは、そうした選択肢の幅を広げる一歩となります。
参考資料:
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