日経平均822円高の立役者ファストリ、AI相場脱却の兆候か

by nicoxz

はじめに

2026年1月9日、東京株式市場で日経平均株価は前日比822円(1.6%)高の5万1939円で取引を終えました。この日、相場上昇の最大の立役者となったのは、カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングでした。同社株は上場来高値を更新し、時価総額20兆円の大台目前まで迫っています。

注目すべきは、この動きが示す日本株市場の構造変化です。2025年は半導体やAI関連銘柄が日経平均を牽引してきましたが、2026年に入り、業績に裏打ちされた非AI銘柄への資金シフトが起き始めています。本記事では、ファストリ躍進の背景と、「AI頼み脱却」が進む日本株市場の今後について解説します。

ファーストリテイリング急騰の背景

驚異の第1四半期決算

ファーストリテイリングが1月8日に発表した2026年8月期第1四半期(2025年9月〜11月)決算は、市場予想を大きく上回る内容でした。

売上収益は前年同期比14.8%増の1兆277億円となり、四半期売上として初めて1兆円を突破しました。営業利益は33.9%増の2,109億円、純利益は2,056億円とアナリスト予想の1,770億円を大幅に上回りました。

粗利益率は55.2%まで改善しました。これは前四半期比で0.8ポイント、前年同期比で1.6ポイントの上昇です。値引き販売を抑制し、在庫管理を徹底した成果が表れています。

グローバル展開の成功

特筆すべきは海外ユニクロ事業の好調ぶりです。全地域で増収増益を達成しました。

国内ユニクロは売上収益が12.2%増の2,990億円、営業利益が20.2%増の624億円と堅調でした。暖冬の影響を受けつつも、新商品の好調と値引き抑制で利益率を改善させています。

地域別では、中国が7%成長、東南アジアが22%成長、そして欧州が34%成長と特に好調でした。欧州では、グラスゴー、バーミンガム、ミュンヘン、フランクフルトなどで新規旗艦店を出店した効果が出ています。北米市場でも着実に存在感を高めています。

通期業績予想の上方修正

好調な第1四半期を受け、同社は通期業績予想を上方修正しました。売上収益は3兆8,000億円、営業利益は6,500億円(従来予想5,800億円)、純利益は4,500億円に引き上げられました。年間配当予想も1株当たり520円から540円に増額されています。

株価と時価総額

1月9日の株価は前日比6,050円(10.67%)高の62,750円で取引を終えました。株式分割考慮後の上場来高値を更新しています。時価総額は約19兆9,684億円に達し、20兆円の大台目前となっています。

日本国内で時価総額20兆円を超える企業は、トヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソフトバンクグループ、ソニーグループ、日立製作所、三井住友フィナンシャルグループの6社のみです。アパレル銘柄としては異例の規模であり、ファストリの突破は業界の歴史に残る出来事となります。

「AI頼み脱却」の動き

AI・半導体偏重の実態

2025年の日本株市場は、AI・半導体関連銘柄が圧倒的な存在感を示しました。日経平均株価の年間上昇への寄与度を見ると、上位10銘柄のうち7銘柄がAI関連でした。2025年10月末時点で日経平均の構成ウエート上位5銘柄のうち4つがAI・半導体関連株で占められていました。

つまり、日経平均株価の動きは実質的にAI・半導体関連株の動向でほぼ決まる状態になっていたのです。これは、特定セクターへの依存度が極めて高いことを意味します。

偏重に対する警告

この状況に対して、専門家からは警告の声が上がっています。智剣・Oskarグループの大川智宏氏は「2026年は世界のハイテク企業の中で、AIの勝ち組・負け組が明確になってくるだろう。そして負け組の過剰投資の問題が表面化する」と指摘しています。

米著名投資家のマイケル・バーリ氏も株高の持続性に懐疑的な見方を示しており、米ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEOも株安リスクに言及しています。「AI関連株全体の勢いが崩れるリスクがある」という認識は、市場関係者の間で共有され始めています。

ファストリ躍進が示す変化

こうした中で、ファストリの株価上昇は象徴的な意味を持ちます。同社は半導体やAIとは直接関係のない消費財企業ですが、グローバルな事業展開と着実な業績向上により、投資家の信頼を勝ち取っています。

「AI頼み脱却」とは、単にAI銘柄から資金が逃げるということではありません。むしろ、業績という実体に基づいた銘柄選別が進み、AI以外にも優良企業への資金配分が増えることを意味します。ファストリはその代表格といえるでしょう。

1月9日相場のその他の動き

米国市場の好影響

日経平均822円高の背景には、前日の米国市場の動向もあります。米国市場で景気敏感株が買われた流れを受け、東京市場でも幅広い銘柄に買いが入りました。

中国の対日輸出規制緩和発言

中国政府が1月8日、軍民両用(デュアルユース)品目に関する対日輸出規制について「民生用への影響はない」との見解を示したことも好材料でした。レアアース規制への懸念から売られていた自動車株の一角が買い戻されました。

円安進行

東京外国為替市場で円相場が1ドル=157円台前半まで円安・ドル高に振れたことも、輸出関連株を支えました。

TSMCの好決算

午後には、半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)が発表した2025年通年売上高が前年比31.6%増となり、市場予想を上回ったことで、半導体関連株も堅調な動きを見せました。

2026年の投資戦略:分散の重要性

セクター偏重のリスク

AI・半導体関連銘柄への投資は引き続き魅力的ですが、過度な集中はリスクを伴います。専門家は「AIへの期待が萎んだタイミングで一気に急落してしまうリスクがある」と指摘しています。

自身のリスク許容度に応じて、ポートフォリオが特定セクターに偏りすぎていないか、意識的に見直すことが推奨されています。

有効な分散戦略

AI・半導体関連銘柄に偏っている場合の分散先として、以下が挙げられています。

まず、景気変動の影響を受けにくい内需・サービス系の銘柄です。ファストリのような消費財企業がこれに該当します。

次に、政府からの受注が主軸となる防衛関連銘柄です。2026年は防衛予算の拡大が続く見通しで、安定した需要が期待できます。

また、データセンター関連でも、半導体製造ではなく、電設工事、空調、配電といった土木・建設系の領域は、半導体チップの価格変動の影響を直接受けにくいため、有効な分散先となります。

専門家が注目する業種

ダイヤモンド・ザイの調査によると、専門家106人のうち64%が2026年の日本株に「強気・やや強気」の見通しを示しています。株価上昇が期待される業種としては、「銀行」がトップに挙げられています。日本経済が「金利のある世界」に突入したことが背景です。

続いて有望視されているのが「AI・半導体」分野ですが、「建設・資材」「エンタメ」なども注目されています。「2026年は『AI・半導体』『防衛』のほか、建設や銀行など『内需』も注目したい」という見方が多いようです。

注意点・今後の展望

ファストリの課題

ファストリの好調は続くと見られていますが、課題もあります。中国市場での成長率は7%と、他地域に比べて鈍化しています。中国経済の減速や消費者心理の変化が影響している可能性があります。

また、為替変動リスクも無視できません。円安は海外売上の円換算額を押し上げますが、原材料コストの上昇要因にもなります。

日経平均の行方

日経平均は5万円台を維持していますが、市場では「AI相場の持続性」について慎重な見方も出ています。TSMCの好決算は半導体セクターにとって追い風ですが、個別企業の業績差が明確になってくる中、銘柄選別がより重要になるでしょう。

為替動向、米国金融政策、中国経済、そして地政学リスクなど、2026年も不透明要因は多くあります。しかし、ファストリの躍進が示すように、着実に業績を伸ばす企業には資金が集まる傾向は変わらないと考えられます。

まとめ

2026年1月9日、日経平均が822円高となる中、ファーストリテイリングが上場来高値を更新し、時価総額20兆円に迫る勢いを見せました。驚異的な第1四半期決算と通期業績予想の上方修正が、投資家の評価を高めています。

この動きは、AI・半導体銘柄一辺倒だった日本株市場に変化の兆しが見えてきたことを示唆しています。「AI頼み脱却」とは、業績に裏打ちされた優良企業への資金分散が進むことを意味します。2026年の投資戦略としては、AI関連への投資を継続しつつも、内需やサービスなど他セクターへの分散を意識することが重要でしょう。

ファストリの成功は、グローバル展開と地道な業績改善の成果です。派手なテーマ性はなくとも、堅実に成長する企業への投資が報われる相場環境が整いつつあるといえます。

参考資料:

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