ファストリ時価総額20兆円突破、海外ユニクロブームの実態

by nicoxz

はじめに

2026年1月13日、東京株式市場でファーストリテイリング(9983)の時価総額が終値で初めて20兆円を超えました。国内小売業として初の快挙であり、日本企業の時価総額ランキングでは6位に浮上しています。

この成長を支えているのは、海外ユニクロ事業の好調です。特に欧州・北米での「ユニクロブーム」が想定以上の勢いで、市場関係者からは「海外のユニクロブームは想定以上」との声が出ています。

この記事では、ファーストリテイリングの時価総額20兆円突破の背景、海外ユニクロ事業の好調の理由、そして今後の成長戦略について解説します。

時価総額20兆円突破の背景

株価の推移

1月13日のファーストリテイリング株は、一時前営業日比5%高の6万5950円まで上昇し、連日で上場来高値を更新しました。終値ベースの時価総額は20兆円を超え、国内小売業では初めての大台突破となりました。

それに先立つ1月9日には、前日比6,050円(10.67%)高の6万2750円で取引を終え、時価総額は約19兆9684億円まで上昇していました。衆院解散観測による株式市場全体の上昇に加え、好調な業績が株価を押し上げました。

国内時価総額ランキングで6位に

時価総額20兆円を超える日本企業は、トヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソフトバンクグループ、ソニーグループ、日立製作所、三井住友フィナンシャルグループの6社でした。ファーストリテイリングは三井住友FGを抜き、国内6位に浮上しています。

なお、競合である「ZARA」を展開するスペインのインディテックスの時価総額は約32兆円で、ファーストリテイリングはその約6割の規模となっています。

2026年8月期第1四半期の業績

大幅な増収増益を達成

2026年8月期第1四半期(2025年9〜11月)の業績は、売上収益1兆277億円(前年同期比14.8%増)、営業利益2,109億円(同33.9%増)と大幅な増収増益を達成しました。

特に海外ユニクロ事業が好調で、全地域で増収増益となりました。韓国、東南アジア・インド・豪州地区、北米、欧州で2桁の増収増益を記録しており、「グローバルで全方位成長が加速」しています。

通期業績予想も上方修正

2026年8月期の通期連結業績は、売上収益3兆8000億円(前期比11.7%増)、営業利益6500億円(同15.2%増)と、過去最高の業績を見込んでいます。期初予想から売上収益は500億円、営業利益は400億円の増額修正となりました。

海外ユニクロ事業が成長をけん引

海外事業の好調ぶり

海外ユニクロ事業の第1四半期は、売上収益6038億円(前年同期比20.3%増)、事業利益1173億円(同38.0%増)と大幅な増収増益でした。すべての地域で売上総利益率と販管費比率が改善し、事業利益率は2.4ポイント改善しています。

地域別では、欧州の売上収益が前年同期比42%増の1020億円と最も高い伸びを示しました。北米も同17%増の680億円と好調です。

欧州で急成長する理由

ユニクロの欧州事業が急成長している背景には、いくつかの要因があります。

まず、「LifeWear(究極の普段着)」というコンセプトと欧州文化との親和性の高さです。洋服の発祥地である欧州では、本質的な服の良さを求める消費者が多く、ユニクロのベーシックでありながら高品質な商品が支持されています。

柳井正会長兼社長は「ユニクロの服はベーシックだが、クラシックでトラディショナル。繊細なヨーロッパ人の感性は、日本の感性とも合っている」と語っています。

若年層への浸透

欧州では若年層への浸透が進んでいます。シームレスダウン、ブロックテック、UT、ワイドパンツ、ラウンドミニショルダーバッグなどが若者に人気で、29歳以下の売上構成比は2019年8月期の16%から35%へと2倍以上に上昇しました。

旗艦店戦略の成功

欧州での成功を支えているのが、旗艦店を中心とした出店戦略です。主要都市の一等地、特に歴史的建造物の中に積極的に出店し、ブランドイメージを高めています。

「実店舗が一番のメディア」というブランドポリシーのもと、パリ、ロンドン、ミラノなど欧州の主要都市に大型旗艦店を展開。グローバルのユニクロ実店舗における売上高ランキングトップ10には、欧州の4店舗がランクインしています。

中国事業には課題も

中国は横ばい・減益

一方で、中国事業には懸念が残ります。景気減速で消費が落ち込む中国の売上収益は1786億円と横ばい、営業利益は10%程度の減益となりました。

例年より気温が高く推移したため秋冬衣料の販売が振るわず、原価率の上昇などで営業利益率も悪化しています。中国では不採算店舗の撤退など店舗網の見直しを進めています。

北米の関税リスク

北米事業も好調ですが、関税影響のリスクが指摘されています。トランプ政権による関税政策の動向次第では、コスト増につながる可能性があります。

今後の成長戦略

欧州で売上5000億円を目指す

ユニクロは欧州での成長をさらに加速させる計画です。2027年8月期には売上収益5000億円、営業利益率20%を目指しています。

2025年8月期に約15店舗、2026年8月期に約20店舗以上の新規出店を計画しており、未進出の大都市や新規国への旗艦店出店を加速させます。欧州アパレル市場におけるユニクロのシェアは0.5%未満であり、成長余地は大きいとされています。

設備投資を大幅増加

今期の海外ユニクロ事業での設備投資は1012億円を計画しており、前期から76%増となります。欧米では大型店を主要都市に積極出店し、ブランド浸透を図る方針です。

グローバル店舗数2500店舗を突破

2024年秋にユニクロの全世界店舗数は2500店舗を突破しました。ポーランドに初の常設店舗をオープンしたほか、イタリアのローマ、オランダのロッテルダムなどに初出店するなど、店舗網を拡大しています。

注意点と今後の展望

インディテックスとの差

時価総額では大きく成長したファーストリテイリングですが、ZARAを展開するインディテックスとはまだ差があります。インディテックスの時価総額は約32兆円で、ファーストリテイリングの約1.6倍です。

売上規模でもインディテックスが上回っており、真のグローバルNo.1を目指すにはさらなる成長が必要です。

中国リスクと為替変動

中国経済の低迷が長期化すれば、海外ユニクロ事業全体の成長に影響する可能性があります。また、円安が進行すれば海外売上高の円換算額は増加しますが、輸入コストの上昇にもつながります。

欧州の「三重苦」は克服

ユニクロは欧州で20年近く苦戦してきました。高コスト、商品輸送に時間がかかる、低知名度という「三重苦」を抱えていたためです。しかし、旗艦店戦略やブランド認知向上の取り組みにより、2022年8月期に欧州事業が営業黒字に転換。現在は最も成長率の高い地域となっています。

まとめ

ファーストリテイリングの時価総額が国内小売業で初めて20兆円を突破しました。欧州・北米での「ユニクロブーム」が成長をけん引しており、特に欧州は前年同期比42%増と最も高い伸びを示しています。

「LifeWear」のコンセプトが欧州の消費者に支持され、旗艦店戦略によるブランド認知向上も奏功しています。若年層への浸透も進み、成長の勢いは増しています。

一方で、中国事業の低迷や北米の関税リスクなど、課題も存在します。欧州アパレル市場でのシェアは0.5%未満であり、成長余地は大きいとされていますが、競合インディテックスとの差を縮めるにはさらなる努力が必要です。

参考資料:

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