大学お笑いサークル出身芸人が賞レースで躍進、なぜ今強いのか
はじめに
2025年12月21日に開催されたM-1グランプリでは、過去最高となる11,521組がエントリーし、関西拠点のお笑いコンビ「たくろう」が優勝しました。この大会で5年連続決勝進出を果たした真空ジェシカは、慶應義塾大学と青山学院大学のお笑いサークル出身です。
近年、お笑い界では大学サークル出身者の活躍が目立っています。M-1グランプリ2連覇を達成した令和ロマン、YouTubeでも人気のラランド、5年連続決勝進出の真空ジェシカ。いずれも大学お笑いサークルで腕を磨いた芸人たちです。
なぜ今、大学お笑いサークル出身者がこれほど強いのでしょうか。その理由を探ります。
大学お笑いサークルの歴史と発展
黎明期から現在まで
日本の大学にお笑いサークルが誕生したのは1990年代後半のことです。1998年には、後に松竹芸能でプロデビューする「どんぐり兄弟」を中心に、早稲田大学に「お笑い工房LUDO」が設立されました。
大学お笑いが大きく発展した背景には、2000年代のテレビでネタ番組が増えたことがあります。『エンタの神様』や『爆笑レッドカーペット』が人気を博し、同時にM-1グランプリをはじめとする賞レースも増加しました。「芸人といえばネタ」というイメージを持って育った世代が、2010年代に大学生となり、お笑いサークルに入るようになったのです。
テレビ番組の後押し
2010年から2017年にかけて放送された『学生才能発掘バラエティ 学生HEROES!』の存在も大きな影響を与えました。この番組は当時の大学生と芸能界をつなぐ役割を果たし、大学お笑いの認知度向上に貢献しました。
主要な大学お笑いサークル
早稲田大学「お笑い工房LUDO」
早稲田大学のLUDOは、大学お笑い界で最も実績のあるサークルの一つです。大学お笑いサークルの団体戦「NOROSHI」では史上最多の3回優勝(2015年、2017年、2024年)を達成しています。
LUDO出身の芸人には、『キングオブコント2018』で優勝したハナコの岡部大、「ひょっこりはん」として知られる宮下兼史鷹、『キングオブコント2017』準優勝のにゃんこスター・アンゴラ村長、ラパルフェなどがいます。
設立当時の早稲田大学には寄席演芸研究会とWAGEという二つのお笑いサークルがありました。「WAGEの垢抜けた都会的な雰囲気に馴染めなかった人たちで作られた」とどんぐり兄弟は語っています。2001年にWAGEがプロデビューし校内から消滅したため、LUDOが拡大していったと、かもめんたるの岩崎う大は振り返っています。
慶應義塾大学「お笑い道場O-keis」
慶應義塾大学のお笑い道場O-keisは、M-1グランプリ2連覇を達成した令和ロマンの出身サークルとして知られています。
令和ロマンのくるまと髙比良くるまは、慶應義塾大学で先輩後輩の関係でした。後輩のくるまが2年生の時に「魔神無骨」というコンビを組んで活動を開始。卒業後によしもとNSCに入り、東京NSC23期の首席として卒業しています。
真空ジェシカの川北茂澄もO-keis出身で、相方のガクは青山学院大学「ナショグルお笑い愛好会」の出身です。
上智大学「Sophia Comedy Society」
上智大学のSCS(Sophia Comedy Society)からは、ラランドのサーヤとニシダが輩出されています。二人は上智大学外国語学部イスパニア語学科の同級生として出会いました。
サーヤは入学前の文化祭でSCSのライブを観て入会を決意。同サークルで出会ったニシダの猛烈なアピールにより、2014年にコンビ「ラランド」を結成しました。大学4年時の「NOROSHI 2018」では、漫才・コント・ピンネタ全ての種目に単独で参加し、関わったチーム全てが優勝するという伝説を打ち立てています。
大学お笑いの強みとは
4年間の試行錯誤
大学お笑いならではの最大の強みは、4年間じっくりと試行錯誤できる点です。大学では様々な人と組みながらネタのスタイルを試すことができます。
令和ロマンも最終的なコンビに落ち着くまでに、様々な相方と組んでいたそうです。プロの養成所では短期間で結果を求められますが、大学サークルでは時間をかけて自分に合ったスタイルを見つけることができます。
同世代との切磋琢磨
大学お笑いサークル同士の交流も活発です。「NOROSHI」や「大学芸会」といった大会を通じて、他大学のサークルと競い合う機会があります。
2016年の大学生お笑いグランプリ「大学芸会」では、優勝がラパルフェ(当時リレンザ)、2位が令和ロマン(当時魔神無骨)、3位がラランドという結果でした。今でも活躍している芸人たちは、学生時代から互いに刺激し合っていたのです。
NSC首席卒業者を多数輩出
大学お笑いとプロへの道は密接につながっています。2016年の「NOROSHI」で準優勝したナイチンゲールダンスの中野なかるてぃんは、NSC大ライブ2017で1位を獲得し、同年首席卒業。令和ロマンも2018年のNSC首席卒業です。
直近4年間で、NSC首席卒業の3組がNOROSHI出身という事実は、大学お笑いのレベルの高さを証明しています。
賞レースでの実績
真空ジェシカの5年連続決勝進出
真空ジェシカは2021年にM-1グランプリで初の決勝進出を果たし、翌2022年から2025年まで5年連続で決勝に進出しました。5年連続進出は和牛と並ぶ歴代2位タイです。
5年連続ストレートでの決勝進出は笑い飯の9年連続に続く歴代単独2位であり、吉本興業以外の事務所所属としては歴代1位の記録です。
令和ロマンの2連覇
令和ロマンは2023年・2024年のM-1グランプリで2年連続優勝という前人未到の偉業を達成しました。大学お笑いサークル出身者が頂点に立ったことで、大学お笑いの存在感は一気に高まりました。
ラランドのアマチュア準決勝進出
ラランドは2019年、アマチュアながらM-1グランプリ準決勝に進出しました。当時、ニシダは上智大学3年生、サーヤは広告代理店の会社員でした。事務所に所属しないアマチュアとしてのこの快挙は、大学お笑いの実力を証明するものでした。
今後の展望
プロへの供給源として確立
大学のお笑いサークルは、若手芸人の一大供給源として確固たる地位を築いています。養成所とは異なるルートからプロの世界に入る道筋ができたことで、お笑い界の裾野は確実に広がりました。
YouTubeとの相性
ラランドのように、YouTubeチャンネルを持ちながら活動する芸人も増えています。2020年に開設された「ララチューン」では、漫才の他にオリジナル企画を配信。事務所に所属せず個人事務所で活動するスタイルは、大学お笑い出身者ならではの柔軟性といえるでしょう。
まとめ
大学お笑いサークル出身者が賞レースで存在感を示している背景には、4年間かけて試行錯誤できる環境、同世代との切磋琢磨、そして大会を通じた実戦経験の蓄積があります。
令和ロマンの2連覇、真空ジェシカの5年連続決勝進出、ラランドのマルチな活躍。これらの実績は、大学お笑いが単なるアマチュアの活動ではなく、プロへの有力なルートとして機能していることを示しています。
早稲田のLUDO、慶應のO-keis、上智のSCS。これらのサークルから今後どんな才能が生まれるのか、注目が集まります。
参考資料:
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