ローソン「飲む麻婆豆腐」に見るコンビニ差別化戦略
はじめに
2026年1月13日、ローソンが発売したチルド飲料「飲む麻婆豆腐」がSNSを中心に大きな話題を呼んでいます。花椒のしびれる辛さと絹ごし豆腐の食感をストローで飲むという、常識を覆す商品です。
「さすがに攻めすぎ」「意外といける」と賛否両論が飛び交うこの商品は、ローソンの「飲む○○シリーズ」第31弾にあたります。2019年の「飲むソフトクリーム」から始まったこのシリーズは、なぜ「やりすぎ」とも言える商品を次々と生み出しているのでしょうか。物価高と節約志向が強まる中、コンビニ各社が繰り広げる差別化競争の最前線を読み解きます。
「飲む麻婆豆腐」の衝撃
デザートから料理へ踏み込んだ新領域
「飲む○○シリーズ」はこれまで、飲むソフトクリーム、飲むティラミス、飲むパンケーキなど、デザート系の商品が中心でした。しかし第31弾の「飲む麻婆豆腐」は、シリーズ初となる「料理系」への挑戦です。
税込298円のこの商品は、手持ちサイズのストロー付きカップ飲料として販売されています。冷やすと脂が固まる動物性の肉は使わず、豆ミートを採用。チキンエキスで味わい深さを出し、豆板醤と花椒で本格的なシビ辛の味わいを実現しています。
開発担当者は「温めて飲むと普通の麻婆豆腐と変わらない。ストローを挿して飲むという新しい体験を提供したかった」と、あえて冷たいチルド飲料にした理由を説明しています。
SNSで賛否両論が爆発
発売直後からSNSでは「飲む麻婆豆腐」の投稿が急増しました。「想像以上に麻婆豆腐」「おにぎりと合わせると意外とアリ」という肯定的な声がある一方、「正直、温めた方がおいしい」「攻めすぎて味の評価が追いついていない」という声も少なくありません。
しかし、この賛否両論こそがローソンの狙いです。話題になること自体が来店動機を生み、他の商品の「ついで買い」にもつながります。
「飲む○○シリーズ」7年間の進化
累計31品、デザートから調味料まで
2019年10月に第1弾「飲むソフトクリーム」でスタートしたこのシリーズは、約7年間で31品を展開してきました。飲むティラミス、飲むパンケーキといったスイーツ系から始まり、徐々にカテゴリーを拡大。2024年11月には「飲むマヨ」を発売し、「想像以上にマヨネーズ」「本当にマヨネーズ」とSNSで大きな反響を呼びました。
30代から50代の男性を中心に支持を集めているのも特徴です。通常のスイーツ商品ではリーチしにくい層に、「意外性」と「話題性」を武器にアプローチしています。
バズを生む「意外性マーケティング」
「飲むマヨ」や「味のしない?飴」など、ローソンは商品名だけでSNSの話題になる「意外性マーケティング」を戦略的に展開しています。商品の味そのものよりも、「えっ、これを飲むの?」という驚きが拡散の起点になります。
この手法は、テレビCMのような大規模な広告費をかけずとも、消費者自身がSNSで情報を拡散してくれるという点で、コストパフォーマンスの高いプロモーション手法といえます。
コンビニ業界の差別化競争
物価高時代のコンビニの生き残り戦略
2026年の日常消費市場は厳しい環境にあります。物価高が続く一方で賃金の上昇は限定的で、消費者の節約志向は強まるばかりです。「まいばすけっと」「トライアルGO」などのミニスーパーやドラッグストアとの競争も激化し、コンビニは価格だけでなく「来店するきっかけ」を作る工夫が求められています。
こうした中、コンビニ大手3社はそれぞれ異なる差別化戦略を打ち出しています。セブン-イレブンは品質重視の王道路線、ファミリーマートはコラボ商品やエンタメ性、そしてローソンは「健康」「品質」「意外性」の三本柱で独自のポジションを築いています。
ローソンの多角的な差別化
ローソンの差別化は「飲む○○シリーズ」だけにとどまりません。創業50周年を機に立ち上げた新PBブランド「3つ星ローソン」では、「定番商品」と「チャレンジ商品」の2軸で商品開発を推進しています。
店舗形態でも、ナチュラルローソン、ヘルスケアローソン、ホスピタルローソン、書店型コンビニなど、業界でいち早く多業態展開を進めてきました。高級スーパー成城石井の買収により、品質を求める層の取り込みにも成功しています。
日経BPコンサルティングの「ブランド・ジャパン2025」では、コンビニのブランド価値ランキングでローソンが1位を獲得しており、こうした多面的な差別化が消費者の評価につながっています。
注意点・展望
話題性と実際の売上のバランス
「飲む麻婆豆腐」のような攻めた商品は、SNSでの話題性は抜群ですが、リピート購入につながるかは別問題です。一過性のバズで終わらせず、シリーズ全体としてのブランド力を維持し続けることが重要です。
実際、ローソンの多業態展開では、ローソンストア100の大規模閉店やローソンマートの撤退など、差別化が裏目に出たケースもあります。「攻め」と「守り」のバランスが今後の課題です。
コンビニの「毎日がスペシャル」化
物価高で外食を控える消費者が増える中、コンビニには「手軽に非日常を味わえる場」としての役割が期待されています。数百円で話題の商品を試せるという体験価値は、コンビニならではの強みです。
今後も各社は「毎日行きたくなる」仕掛けを競い合うことになるでしょう。ローソンの「やりすぎ」路線がどこまで続くのか、注目が集まります。
まとめ
ローソンの「飲む麻婆豆腐」は、単なる話題作りの商品ではなく、コンビニ業界の差別化競争を象徴する一品です。物価高と節約志向が強まる中、「意外性」でSNSバズを生み出し、来店動機を創出するマーケティング戦略は、ローソンの独自路線を明確に示しています。
7年間で31品を生み出してきた「飲む○○シリーズ」の挑戦は、コンビニが単なる日用品の購入先から、小さな驚きと発見を提供するエンターテインメント空間へと進化していることを物語っています。
参考資料:
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