Tech Research Lab

Tech Research Lab

by nicoxz

米半導体関税25%、NVIDIA対中輸出に「上納金」の異例策

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

2026年1月14日、トランプ米大統領はエヌビディアの「H200」など先端AI半導体に対し、中国への輸出時に25%の追加関税を課すと発表しました。米国内での使用であれば課税は免除されますが、中国などへの再輸出分からは売上の4分の1を「上納金」として徴収するという、前例のない政策です。

この決定は、バイデン政権時代から続いてきた対中輸出規制の方針を大きく転換するものであり、半導体業界、米議会、中国政府のそれぞれで異なる反応を引き起こしています。本記事では、この新政策の詳細と各方面への影響について解説します。

新政策の概要

25%関税の仕組み

トランプ大統領が署名した布告により、2026年1月16日から、米国外で生産され米国を経由して他国に輸出される先端AI半導体に25%の関税が課されます。対象となるのはエヌビディアの「H200」や、AMDの「MI325X」などの高性能AI半導体です。

この政策の特徴的な点は、関税が単純な輸入時の課税ではなく、対中輸出時の「上納金」として設計されていることです。トランプ大統領は前日の発表で「政府が売上の25%を取る」と明言しており、これは事実上の輸出税として機能します。

第三者検証の義務化

輸出にあたっては、半導体が台湾で製造された後、米国を経由してAI性能の第三者検証を受けることが義務付けられています。この検証プロセスを経て米国領土に入った時点で、25%の関税が発生する仕組みです。

また、中国向けの出荷量は米国内販売の50%を上限とする制限も設けられています。エヌビディアは米国市場への十分な供給を確保することが求められ、中国の購入者には軍事利用の禁止などセキュリティ要件への同意が必要とされます。

免除される用途

米国のテクノロジーサプライチェーン構築を支援するために輸入される半導体は免除対象となります。ホワイトハウスの説明資料によると、米国のデータセンター、スタートアップ、非データセンター向け消費者用途、民間産業用途、公共セクター向け導入などに使用される半導体や派生製品は課税対象外です。

エヌビディアの反応

歓迎姿勢を表明

意外にも、エヌビディアはこの政策を歓迎しています。エヌビディアの広報担当者は次のように述べました。「トランプ大統領が米国の半導体産業に競争を認める決定を下したことを称賛します。米国での高給与の雇用と製造を支援するものです。商務省の審査を受けた承認済み商用顧客へのH200提供は、米国にとって素晴らしいバランスの取れた判断です。」

この反応の背景には、バイデン政権下で厳格化された輸出規制によって、エヌビディアが中国市場から事実上締め出されていた状況があります。関税を支払ってでも販売機会を得られることは、同社にとってはプラスと判断されています。

増産検討の動き

英ロイター通信によると、中国企業による2026年に向けたH200の発注数はすでに約200万個規模に達しており、エヌビディアの在庫(約70万個)を大幅に上回っています。この旺盛な需要に対応するため、エヌビディアは増産を検討しているとされます。

中国側の対応

輸入制限の動き

注目すべきは、中国側が必ずしもこの「開放」を歓迎していないことです。ロイター通信は2026年1月14日、中国税関当局が職員に対しエヌビディア「H200」の輸入を許可しないよう通達したと報じました。

情報サイト「The Information」によると、中国政府はテクノロジー企業に対し、大学の研究開発ラボなど例外的な状況下でのみH200の購入を承認すると伝えたとされています。

国産化の加速

中国はすでに国産AI半導体の開発を加速させています。国営データセンターからの外国製チップの撤廃、輸入検査の強化を進め、2026年までに自国のAIチップ生産量を3倍にする計画です。ファーウェイやSMICなど国内メーカーへの支援を強化し、対米依存からの脱却を図っています。

米議会の反発

「国家安全保障の切り売り」との批判

米議会ではこの政策に対する批判が噴出しています。超党派の議員グループは、中国への次世代AI半導体へのアクセス緩和を阻止する法案を推進しています。批判派は、短期的な関税収入のために長期的な国家安全保障を損なう「国家安全保障の切り売り」だと主張しています。

議員らは、AI技術が軍事利用される可能性を懸念し、商業的な利益よりも安全保障を優先すべきだと訴えています。

輸出管理政策の有効性への疑問

一方で、従来の輸出管理政策の有効性に疑問を呈する声も出ています。中国のAIスタートアップ「DeepSeek」が米国の規制にもかかわらず高性能なAIモデルを開発したことで、輸出管理による技術開発の遅延効果に限界があることが露呈したとの指摘があります。

輸出管理に詳しい弁護士は「ディープシークの登場で、米国政府の輸出管理に対する姿勢は大きく変わるかもしれない。輸出管理を強化することによって技術開発を遅らせるというのはあまり効果がないことが露呈した」との見解を示しています。

注意点・展望

関税率の引き上げ可能性

トランプ大統領は今後の課税対象拡大に含みを持たせており、25%という関税率が引き上げられる可能性もあります。また、対象製品の範囲が広がることで、半導体業界全体への影響が拡大する恐れがあります。

米中関係の不確実性

この政策は、半導体を通じた米中関係をより複雑なものにしています。米国は関税収入を得ながら技術流出を一定程度管理しようとし、中国は国産化を進めながらも必要な技術へのアクセスを模索するという、緊張をはらんだ関係が続くことになります。

日本企業への影響

半導体製造装置や素材を供給する日本企業にとっても、この政策の影響は注視が必要です。米国の規制政策が変更されるたびに、サプライチェーン全体での対応が求められることになります。

まとめ

トランプ政権による先端AI半導体への25%関税は、バイデン政権時代の輸出禁止政策から、条件付き許可への方針転換を意味します。エヌビディアにとっては販売機会の拡大となりますが、中国は輸入制限と国産化加速で対抗する姿勢を見せています。

「上納金」という異例の仕組みに対しては、米議会から国家安全保障上の懸念が表明される一方、従来の輸出管理の有効性への疑問も提起されています。半導体をめぐる米中対立は、新たなフェーズに入ったと言えるでしょう。

参考資料:

関連記事

最新ニュース