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by nicoxz

米国株のPER低下で再点検 景気敏感株に資金が向かう理由

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はじめに

2025年までの米国株は、AI関連の大型テックが相場をけん引し、「強いが高い」市場として見られてきました。ところが2026年3月に入ると、中東情勢の緊迫化や景気減速への警戒から株価が調整し、バリュエーションの過熱感はかなり薄れています。投資家の関心も、単純な大型グロース一辺倒から、利益の広がりや景気回復の恩恵を受けやすい素材、資本財、エネルギー、金融へと分散し始めました。

ここで重要なのは、「割高感が薄れた」ことと「安心して買える」ことは同じではない点です。市場は安くなったからではなく、利益成長がなお維持されると見込める範囲で、過度に売られた銘柄を選び直しています。この記事では、S&P500のPERがどこまで下がったのか、なぜ景気敏感株に資金が向かうのか、そしてこの動きが一時的なリバウンドに終わるのかを整理します。

バリュエーションはどこまで低下したのか

3月19日時点で20.3倍、3月下旬は20倍割れ観測が出る水準

まず数字を押さえると、FactSetの2026年3月19日版「Earnings Insight」によれば、S&P500の予想PERにあたる先行12カ月PERは20.3倍でした。これは5年平均の20.0倍とほぼ同水準で、10年平均の18.9倍にもかなり近づいた水準です。2月6日時点の21.5倍からみると、わずか1カ月強で1倍超の圧縮が起きた計算になります。3月11日時点のS&P Dow Jones Indicesベースでも21.84倍まで低下しており、過熱修正の流れ自体は複数データで確認できます。

そのうえで、3月27日の市場報道では20倍割れに入ったとの見方も出ています。公表済みの定点データでは3月19日時点が20.3倍なので、厳密には「3月下旬に20倍前後まで低下し、直近では20倍割れが意識される局面」と捉えるのが正確です。重要なのは、米国株が依然として歴史的な割安圏にあるわけではない一方、2025年のような極端なプレミアム状態からはかなり正常化したことです。

株価調整だけでなく利益予想の底堅さも効いている

PER低下が単なる暴落の結果ではない点も見逃せません。FactSetによると、2026年1〜3月期のS&P500利益成長率予想は12.5%です。もしこの水準が実現すれば、6四半期連続の二桁増益になります。つまり、分母である利益予想が完全に崩れていないため、株価の下落がそのままバリュエーション圧縮につながっています。

この構図は投資家にとって扱いやすいです。景気後退が深くないなら、株価だけが先に下がった局面では「利益が残る業種」へ資金を戻しやすいからです。2025年までの相場は、一部のAI銘柄に利益成長が集中していました。2026年はその成長がより広い業種へ広がるかがテーマになっており、景気敏感株の物色はその延長線上にあります。

なぜ素材や資本財など景気敏感株に資金が向かうのか

製造業の持ち直しと設備投資テーマが追い風

景気敏感株が買われる理由の一つは、製造業や設備投資の底割れが確認されていないことです。S&P Global集計の2月米製造業PMIは51.6と、7カ月連続で拡大を示しました。Schwabも3月13日時点で、インダストリアルズを「Most Favored」、マテリアルズを「More Favored」と位置づけ、インフラ投資、リショアリング、工業化、データセンター向け需要を支援材料に挙げています。Fidelityも2026年の見通しで、産業機械や電力設備、航空宇宙、銅や化学といった分野に構造的な需要があると説明しています。

ここで面白いのは、AIブームの恩恵がテック企業だけにとどまらなくなっていることです。データセンターを増やすには電力網、変圧器、冷却設備、銅、化学素材が必要です。つまり、AIの二次波として資本財や素材に利益機会が広がる構図です。大型テックに対する期待が行き過ぎたぶん、周辺の実需セクターへ資金が回るのは自然な流れとも言えます。

テクニカルには200日移動平均線が攻防ライン

もう一つの理由は、相場のテクニカルな節目です。MacroMicroによると、3月11日時点でS&P500採用銘柄のうち200日移動平均線を上回る銘柄は51.68%でした。指数全体としても、3月下旬は200日移動平均線近辺が強く意識されています。MarketWatchは3月27日、S&P500が200日線を下回ったことで見出し主導の変動が大きくなっていると伝えました。

この局面では、相場全体を一気に買い上げるというより、既に十分売られたセクターへ選別的に資金が向かいやすくなります。2月以降の市場では、防御株と景気敏感株が同時に買われる珍しい局面もありましたが、3月後半に入ると「実体経済が持つなら景気敏感株」「原油高や地政学リスクが続くなら防御株」という二極化が進んでいます。素材や資本財が買われるのは、後者ではなく前者のシナリオに賭ける投資家が一定数いるためです。

注意点・展望

注意したいのは、景気敏感株への資金流入をそのまま全面高の前触れとみなさないことです。素材や資本財は、景気が持ち直す局面では強い一方、原油高によるコスト増や関税、需要失速が重なると業績が急に悪化しやすい特徴があります。Schwabも、マテリアルズとインダストリアルズはいずれも景気循環や通商政策の影響を強く受けると警告しています。

また、PERが下がったとはいえ、米国株全体はまだ長期平均を少し上回っています。歴史的なバーゲンセールではありません。特に景気敏感株は、指数全体より割安でも利益予想の下方修正が始まると「安いまま下がる」ことがあります。中東情勢がインフレ再加速につながれば、FRBの利下げ期待が後退し、バリュエーション再拡大は起きにくくなります。

今後の焦点は、1. 4月以降の決算で利益成長の広がりが確認できるか、2. 原油高や運賃上昇が企業マージンを圧迫しないか、3. S&P500が200日移動平均線を明確に回復できるか、の三つです。これらがそろえば景気敏感株への資金移動は本格化しやすく、逆にどれかが崩れれば、今回の買いは短期の戻りに終わる可能性があります。

まとめ

米国株は2026年3月の調整で、少なくともバリュエーション面ではかなり呼吸がしやすくなりました。3月19日時点のFactSetデータでは先行PERは20.3倍まで低下し、3月下旬には20倍割れが意識される局面に入っています。過去10年平均に接近したことで、投資家は「高すぎて買えない」から「選別すれば買える」へと見方を変えつつあります。

その資金が向かっているのが、素材や資本財などの景気敏感株です。背景には、製造業の底堅さ、AIの周辺需要、インフラ投資の継続があります。ただし、これは楽観一色の相場ではありません。利益成長が本当に広がるかどうかを見極めながら、バリュエーション修正後の市場を選別していく段階に入ったと理解するのが適切です。

参考資料:

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