「10億り人」の実像、億り人を超えた超富裕層投資家の素顔
はじめに
投資で資産1億円以上を築いた人は「億り人」と呼ばれます。その億り人をさらに超え、金融資産を10億円以上にまで膨らませた投資家が「10億り人」です。
日経ヴェリタスは2026年1月、167人の「10億り人」へのアンケート調査と、4人への詳細なインタビューを実施し、初めて10億り人の実像に迫りました。危機にひるまず、株高にも酔わない—彼らの投資哲学と行動パターンが明らかになっています。
本記事では、10億り人とはどのような人々なのか、どうやって資産を築いたのか、そして彼らの投資に対する考え方について解説します。
10億り人とは
超富裕層の定義
野村総合研究所の定義によると、純金融資産5億円以上を保有する世帯は「超富裕層」に分類されます。2019年の調査では、超富裕層は9.0万世帯で、全世帯のわずか0.17%でした。
10億り人は、その超富裕層の中でもさらに上位に位置する存在です。明確な統計はありませんが、資産10億円以上となると、さらに少数になると推定されます。
アベノミクス以降の富裕層増加
日本の富裕層・超富裕層の世帯数は、2013年のアベノミクス以降、一貫して増加しています。2021年の合計世帯数は、2019年の132.7万世帯からさらに15.8万世帯増加しました。
株高や資産インフレを背景に、「億り人」の仲間入りを果たす個人投資家が増え、さらにその先の「10億り人」に到達する人も増えています。
10億り人の投資哲学
危機にひるまない
日経ヴェリタスの取材によると、10億り人に共通するのは「危機にひるまない」姿勢です。リーマンショック、コロナショック、ウクライナ危機など、市場が大きく下落する局面でも、パニック売りに走らない冷静さを持っています。
むしろ、暴落時を「買い場」と捉え、優良株を割安で仕込む機会として活用する傾向があります。短期的な市場の変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資を続けることが、資産を大きく増やす鍵となっています。
株高にも酔わない
同時に、10億り人は株高局面でも浮かれません。相場が過熱している時こそ慎重になり、リスク管理を怠らない姿勢が特徴です。
「上がっているから買う」という群集心理に流されず、自分の投資基準に合わない銘柄には手を出さない規律を持っています。
長期投資と分散
10億り人の多くは、長期投資を基本としています。数日から数週間で売買を繰り返すのではなく、数年から十数年単位で保有し続けることで、複利効果を最大化しています。
また、分散投資によるリスク管理も重要視しています。一つの銘柄や資産クラスに集中せず、国内株、海外株、債券、不動産など、複数の資産に分散することで、特定の市場の下落による影響を軽減しています。
資産10億円への道
サラリーマンの生涯年収との比較
サラリーマンの生涯年収は1〜2億円程度とされています。資産10億円を築くには、給与収入だけでは到達が難しく、何らかの「大きなアクション」が必要です。
成長株への集中投資
10億り人の中には、成長株への集中投資で資産を大きく増やした人がいます。例えば、約20年前にAmazonやAppleに100万円を投資していたら、現在は7〜8億円になっていた計算です。
ただし、これは結果論であり、当時どの企業が伸びるかを見極めることは容易ではありませんでした。成長株投資には大きなリターンの可能性がある一方、リスクも高いことを認識する必要があります。
起業・事業売却
資産10億円を築くもう一つの王道は、起業して会社を成長させ、IPO(株式公開)やM&A(事業売却)で利益を得る方法です。スタートアップの創業者やオーナー経営者には、このルートで超富裕層になった人が多くいます。
相続・贈与
現実的には、相続や贈与によって資産を引き継いだケースも少なくありません。資産家の家系に生まれ、代々の資産を受け継ぎながら、さらに運用で増やしていくパターンです。
資産10億円の運用
「守り」の視点が重要に
資産1億円や5億円の段階では「増やす」ことに主眼が置かれがちですが、10億円という規模になると視点が変わります。最優先すべきは「ウェルス・プリザベーション(富の保全)」—資産をいかに守り、次世代へ継承するかという考え方です。
資産10億円があれば、保守的に年1%で運用しても年間1,000万円、標準的な3%なら年間3,000万円の収入が得られます。極端な浪費や投資の失敗がなければ、生涯お金に困ることはありません。
GPIFを参考にした運用
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の2001年度〜2022年度の収益率は年率3.38%です。資産10億円規模の運用では、大きく増やすよりも、長期的に大きく減らさない運用が重要とされ、GPIFと同程度の利回りを目指す考え方があります。
分散と安定
10億円規模の資産運用では、株式、債券、不動産、プライベートエクイティ、ヘッジファンドなど、多様な資産クラスへの分散が一般的です。また、税金対策や相続対策も重要なテーマとなり、専門家のアドバイスを受けながら運用する人が多くなります。
10億り人になるために
時間を味方につける
10億り人への道は、一朝一夕には開けません。長期にわたって投資を続け、複利効果を味方につけることが重要です。焦らず、着実に資産を積み上げていく姿勢が求められます。
市場の暴落を恐れない
市場の暴落は、長期投資家にとっては「買い場」です。10億り人の多くは、暴落時にこそ投資を継続・追加することで、その後の回復局面で大きなリターンを得ています。
自分の投資哲学を持つ
他人の意見やメディアの情報に流されず、自分なりの投資哲学を確立することが重要です。何を基準に銘柄を選ぶのか、いつ売買するのか、自分のルールを持ち、それを守り続ける規律が必要です。
まとめ
「10億り人」とは、投資で金融資産10億円以上を築いた超富裕層の個人投資家です。日経ヴェリタスの調査により、彼らに共通するのは「危機にひるまず、株高にも酔わない」冷静さであることが明らかになりました。
10億り人への道は、成長株への集中投資、起業・事業売却、長期の複利効果など、様々なルートがあります。しかし共通するのは、長期的な視点、リスク管理の徹底、そして自分なりの投資哲学を持つことの重要性です。
資産10億円規模になると、「増やす」から「守る」への視点の転換も必要です。ウェルス・プリザベーションという考え方で、資産を次世代に継承していく—それが10億り人の新たなステージです。
参考資料:
関連記事
野村アセット初の外部社長に大越昇一氏が就任へ
野村ホールディングスが傘下の野村アセットマネジメント社長にJPモルガン・アセット・マネジメント元社長の大越昇一氏を起用。グループ外からの初のトップ人事の背景と資産運用業界への影響を解説します。
ROE改善で注目の日本株を見つける方法
日本企業の「稼ぐ力」を示すROEが改善傾向にあります。東証の資本効率改善要請を背景に、ROEを活用した銘柄選びのポイントとランキングの読み解き方を解説します。
ROE改善で「稼ぐ力」大幅アップ、ランキングで注目銘柄探し
日本企業のROE改善が加速し、海外投資家の注目を集めています。資本効率を軸にした銘柄選びの考え方と、ROEランキングの活用法を個人投資家向けに解説します。
「セル・アメリカ」で日本株に追い風、資金シフトの背景
米国株から資金が流出する「セル・アメリカ」トレードが加速。日本株への追い風と金相場の乱高下の背景、投資家が注目すべきポイントを解説します。
日銀ETF時価100兆円突破、売却計画と投資への示唆
日銀が保有するETFの時価総額が100兆円を突破しました。簿価約37兆円に対し含み益は60兆円超に達しています。100年超の売却計画の全容と、個人投資家が学べるポイントを解説します。
最新ニュース
中国全人代を前に習近平の軍粛清が止まらない理由
3月の全人代開催を控え、習近平政権による軍高官の粛清が加速しています。張又侠の失脚、100人超の将校排除の背景と、人民解放軍への深刻な影響を解説します。
「ECの死」到来か、AIショッピングエージェントの破壊力
「SaaSの死」に続き「ECの死」が叫ばれています。AIショッピングエージェントがECビジネスをどう変えるのか、AmazonとWalmartの異なる戦略から読み解きます。
ハイアット東京を1260億円で取得、REIT最大規模
ジャパン・ホテル・リートがハイアットリージェンシー東京を国内REIT史上最大の1260億円で取得。好調なインバウンド需要を背景に、ホテル投資市場が過去最高を更新する中での大型案件を解説します。
メキシコが週40時間労働へ憲法改正、残業超過で3倍賃金の衝撃
メキシコが週40時間労働への憲法改正を承認。残業超過で3倍賃金の義務化が日本企業の製造拠点に与える影響と対応策を、段階的スケジュールとともに解説します。
楽天グループが金融3社統合へ、10月めど再編の全容
楽天グループが楽天銀行・楽天カード・楽天証券の金融3社を2026年10月をめどに統合する再編計画を発表。金利上昇時代の競争激化を背景に、エコシステム強化とコスト削減を狙う大型再編の詳細と課題を解説します。