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by nicoxz

AI研究者・今井翔太氏の原点はポケモンと読書2000冊

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はじめに

生成AIの急速な進化が社会を変えつつある2026年。テレビや書籍、政府の有識者会議などでAIの解説者として活躍の場を広げているのが、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)客員教授で株式会社GenesisAI代表の今井翔太氏です。

1994年石川県金沢市生まれの今井氏は、東京大学の松尾豊研究室で博士号を取得したAI研究の若きエキスパートです。その原点には、高校時代に没頭したポケモンゲームと、大学以降に読破した2000冊以上の書籍があります。ゲームで感じた「人間の知能の限界」と、読書で培った幅広い知識が、いかにしてAI研究への情熱につながったのかを探ります。

ポケモンからAI研究へ——意外な知的遍歴

ゲームで知った「人間の限界」

今井氏は金沢市の高校時代、ポケットモンスター(ポケモン)のゲームに深く没頭していました。単なる趣味にとどまらず、ポケモン等のゲーム大会で上位入賞するほどの実力を持つ本格的なゲーマーだったのです。

ポケモン対戦は一見シンプルに見えますが、実は高度な戦略性を要求されるゲームです。相手の手持ちポケモンの構成を読み、型や技の選択を予測し、複数のターンにわたる戦略を組み立てる必要があります。今井氏はこのゲームプレイの最前線で、人間の思考力や情報処理能力の限界を肌で感じていました。

そんな折、2016年にGoogle DeepMindが開発した囲碁AI「AlphaGo」が世界チャンピオンのイ・セドル九段を破るというニュースが世界を駆け巡ります。ゲームの奥深さを知り尽くしていた今井氏にとって、AIが人間の最高峰を超えた瞬間は衝撃的でした。この出来事がAI研究への道を決定づけることになります。

2000冊の読書が支える多角的視点

大学進学後、今井氏はもう一つの知的習慣を確立しました。2000冊を超える読書です。AI技術の専門書だけでなく、社会科学、哲学、経済学など幅広い分野にわたる読書が、今井氏の独自の視点を形成しています。

この多角的な教養は、AI技術を社会の文脈で語る能力に直結しています。技術の詳細を正確に理解しつつ、それが社会や経済にどのような影響を及ぼすかを論じられる点が、今井氏がメディアや政策の場で重用される理由の一つです。

学術キャリア——松尾研究室からの出発

強化学習とマルチエージェントの研究

今井氏は電気通信大学を卒業後、東京大学大学院工学系研究科に進学しました。指導教員は日本のAI研究を牽引する松尾豊教授です。2024年に同大学院で博士(工学)を取得しています。

専門分野は強化学習、特にマルチエージェント強化学習です。強化学習とは、AIが試行錯誤を通じて最適な行動を学習する手法で、AlphaGoにも使われた技術です。マルチエージェント強化学習は、複数のAIが協力・競争・交渉しながら行動を改善していくアプローチで、ポケモン対戦で培った「相手の行動を読む」感覚が研究に活きていると言えます。

現在は大規模言語モデル(LLM)などの生成AIにおける強化学習の活用にも研究領域を広げています。ChatGPTなどの生成AIの性能向上には強化学習技術(RLHF: 人間のフィードバックによる強化学習)が不可欠であり、今井氏の専門はまさに時代の最前線にあります。

著書と学術的貢献

今井氏の学術的な貢献は研究にとどまりません。2024年1月に出版した単著『生成AIで世界はこう変わる』(SBクリエイティブ)は東京大学で最も売れた書籍となり、ベストセラーを記録しました。生成AIの仕組みから社会への影響までをわかりやすく解説した同書は、一般読者にもAIの本質を伝える重要な一冊です。

また、強化学習の世界的な教科書であるR.Sutton著『強化学習(第2版)』(森北出版)の翻訳や、日本ディープラーニング協会の公式テキスト『ディープラーニング G検定 公式テキスト 第2版』の執筆にも携わっています。

30歳での起業と客員教授就任

GenesisAIの設立

2024年7月、今井氏は株式会社GenesisAIを設立し、代表取締役社長/CEOに就任しました。同社は生成AIを活用したビジネスソリューションの開発を手がけており、AIだけで業務が完結する新しいビジネスモデルの構想を推進しています。

今井氏はGenesisAIの代表として、文部科学省の生成AI利活用に関する検討会議にも出席しています。Google、Microsoft、Adobeといったグローバル企業と並んで意見を述べる立場にあり、日本のAI政策にも影響力を持つ存在になりつつあります。

JAISTの客員教授

2025年、30歳の若さで北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の客員教授に就任しました。出身地の石川県にあるJAISTでの教育活動は、金沢での原体験に始まる今井氏のキャリアが一つの円環を描いたとも言えます。テレビ東京の「いまからサイエンス」をはじめとするメディア出演も増え、AI研究の最新動向を広く社会に発信しています。

生成AI時代の展望——AIエージェントとDeepSeekの衝撃

AIエージェントの可能性

今井氏が現在注目しているのが「AIエージェント」の概念です。これは言語モデルをベースに、AIが問題解決のために必要な行動を自ら決定し、それに必要なツールを選択・実行して目的を達成する手法です。単にテキストを生成するだけでなく、実際の業務を遂行するAIの実現を目指しています。

博報堂メディア環境研究所のインタビューで今井氏は「社会全体の仕組みを変えていく必要性」を説いており、AIの進化に合わせて組織や教育のあり方を根本から見直すべきだと主張しています。

DeepSeekが示した新たな潮流

2025年1月に中国のスタートアップDeepSeekが公開したAIモデルは、業界に大きな衝撃を与えました。ChatGPTに匹敵する性能をわずか約8億円の開発費で実現し、さらに技術を論文で公開、モデルもオープンソース化するという戦略は、巨額の投資が必要とされてきたAI開発の常識を覆しました。

今井氏のような研究者にとって、DeepSeekの登場は生成AI技術の民主化を加速する重要な出来事です。オープンソース化により、より多くの研究者や企業がAI開発に参入できる環境が整いつつあります。

まとめ

今井翔太氏のキャリアは、ポケモンゲームへの没頭からAlphaGoの衝撃、松尾研究室での博士号取得、ベストセラー執筆、そして30歳での起業と客員教授就任へと、一見すると異色のルートをたどっています。しかし、そこには「知的好奇心を追求し続ける」という一貫した姿勢があります。

生成AIが社会の隅々に浸透し始めた2026年、今井氏のような技術と社会の両方を見渡せる研究者の役割はますます重要になります。AIエージェントの実用化やオープンソースAIの普及など、今後の展開に注目です。

参考資料:

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