機内モバイルバッテリー使用禁止へ、4月に新ルール導入
はじめに
旅客機内でのモバイルバッテリーの使用について、国土交通省が禁止する方針を固めたことが2026年2月18日に明らかになりました。持ち込み可能な個数も容量にかかわらず1人2個までに制限されます。機内での発煙・発火事故が相次いでいることを受けた措置で、国際民間航空機関(ICAO)の規制強化に合わせて4月にも航空法の告示が改正される見通しです。
スマートフォンの長時間利用に欠かせないモバイルバッテリーの規制は、旅行者に大きな影響を与えます。この記事では、新ルールの内容と背景、そして具体的な対策を解説します。
新ルールの具体的な内容
使用と充電が全面禁止に
新ルールでは、機内でのモバイルバッテリーの使用と充電がいずれも禁止されます。現行ルールでは、モバイルバッテリーを手荷物として機内に持ち込み、目視できる場所であれば充電も認められていました。しかし、新ルールでは充電だけでなく、モバイルバッテリーからスマートフォンやタブレットへの給電も禁止の対象となります。
ICAOはモバイルバッテリー本体の充電禁止に加え、使用そのものも禁止を打ち出す方針です。日本の航空法もこの国際基準に足並みを揃える形で改正されます。
持ち込み個数は最大2個まで
持ち込み可能な個数にも大きな変更があります。現行ルールでは、100Wh(ワット時)以下のモバイルバッテリーは個数制限なく持ち込むことができました。新ルールでは、容量にかかわらず予備電池と合わせて1人最大2個までに制限されます。
160Whを超えるモバイルバッテリーの持ち込みは引き続き禁止されます。また、モバイルバッテリーの受託手荷物(スーツケースに入れて預けること)は従来通り禁止のままです。
4月施行の見通し
3月中にICAO理事会で新ルールが正式に決定される予定です。それを受けて国交省が航空法の告示を改正し、4月からの施行が見込まれています。正確な施行日や細則は3月の発表を待つ必要があります。
規制強化の背景にある発火リスク
世界で500件以上の機内事故
米連邦航空局(FAA)の記録によると、過去20年間でリチウムイオン電池に起因する煙・火災・過熱の機内事故は500件以上発生しています。モバイルバッテリーに使われるリチウムイオン電池は、「熱暴走」と呼ばれる現象で急激に発熱し、連鎖反応によって火災や爆発に至る恐れがあります。
内部のセパレーターが破損するとショートが起きて高温になり、有機溶媒に引火して発火するメカニズムです。特に粗悪品や経年劣化した製品は、このリスクが高まります。
各国で進む規制強化の動き
日本に先行して、各国では規制強化が進んでいます。韓国では2025年から全航空会社を対象に、モバイルバッテリーや電子たばこを頭上の手荷物収納棚に保管することを禁止しました。台湾の主要航空会社も飛行中のモバイルバッテリーの使用や充電を禁止しています。
2025年1月には、離陸待機中のエアプサンの旅客機でモバイルバッテリーが原因とみられる火災が発生するなど、深刻な事例が相次いでいます。
中国製粗悪品の問題
発火リスクを高めている要因の一つが、安全基準を満たさない粗悪な製品の流通です。中国では2023年にリチウムイオン電池の安全基準が改定されましたが、改定前の基準で製造された安価なモバイルバッテリーが依然として市場に出回っています。安全認証マークのない製品は発火リスクが高く、特に注意が必要です。
旅行者への影響と対策
搭乗前の充電が必須に
機内でモバイルバッテリーが使えなくなるため、スマートフォンやタブレットは搭乗前にフル充電しておくことが重要です。空港のラウンジや充電スポットを活用して、出発前にしっかり充電しましょう。
機内コンセントの活用
多くの航空会社の中長距離路線では、座席にUSBポートやコンセントが設置されています。新ルール下では、機内の電源から直接デバイスを充電する方法が主要な代替手段になります。搭乗前に自分のフライトに電源設備があるか確認しておくと安心です。
バッテリー持ちの良い設定に
機内モードの活用はもちろん、画面の明るさを下げる、バックグラウンドアプリを制限するなど、バッテリー消費を抑える設定も有効です。長時間フライトでは、必要最低限のアプリだけを使用することで、バッテリーの持ち時間を大幅に延ばすことができます。
注意点・展望
国内航空会社の対応に注目
4月の告示改正に先立ち、国内の主要航空会社がどのような運用方針を示すかが注目されます。JALとANAは現時点では現行ルールを維持していますが、告示改正後は速やかに新ルールに移行する見込みです。具体的な案内は各航空会社のウェブサイトで随時更新されるため、搭乗前に確認することをおすすめします。
海外渡航の際は、渡航先や経由地の航空会社の規定も確認が必要です。国によって規制の内容が異なるため、最も厳しい基準に合わせて準備しておくと安心です。
まとめ
2026年4月から施行される見通しの新ルールにより、旅客機内でのモバイルバッテリーの使用・充電が禁止され、持ち込み個数も最大2個に制限されます。リチウムイオン電池の発火リスクへの対応として、国際的な規制強化の流れに日本も合わせた形です。
旅行者は搭乗前のフル充電と機内電源の活用を心がけ、不要なモバイルバッテリーは持ち込まないようにしましょう。3月のICAO理事会後に正式な施行日と詳細ルールが発表される予定ですので、最新情報に注目してください。
参考資料:
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