アシックス快走、時価総額3兆円でナイキ・アディダスに迫る
はじめに
アシックスの2025年は、米ナイキや独アディダスといった海外の「巨人」の背中を捉えた1年でした。2025年8月には株式時価総額が初めて3兆円を突破し、「選択と集中」を進める同社に対する市場の評価は高まっています。
かつてナイキやアディダスが支配してきたスニーカー市場で、アシックスは逆転劇を演じつつあります。高機能品へのシフトにより利益率は世界レベルに達し、株価はこの3年間で約7倍に急騰しました。日本発のスポーツブランドが世界市場でどこまで躍進できるのか、注目が集まっています。
2025年の業績好調
過去最高益を更新
アシックスは2025年12月期の業績予想を上方修正し、売上高が前期比17.9%増の8000億円、営業利益が同39.8%増の1400億円、当期純利益が同41.1%増の900億円と、いずれも過去最高を見込んでいます。
1〜9月期の営業利益は1276億円に達し、ランニングシューズの販売好調とインバウンド需要が業績を押し上げました。
オニツカタイガーの貢献
高級ブランド「オニツカタイガー」がインバウンド客に人気で、堅調に推移しています。特にアジアからの訪日客による購入が伸びており、ブランド価値の向上に寄与しています。
時価総額3兆円突破
好調な業績を背景に、アシックスの株式時価総額は2025年8月に初めて3兆円を突破しました。ただし、株価は高値警戒感から年末にかけて伸び悩み、上値を追うには需要予測の精度を上げ、経営効率をさらに高める必要があるとの指摘もあります。
ランニングシューズ市場での躍進
箱根駅伝でナイキを逆転
2025年の箱根駅伝では、出場選手が着用したシューズのブランド別シェアで、アシックスが25.7%に達し、ナイキ(23.3%)を逆転しました。トップはアディダス(36.2%)でしたが、長らく続いたナイキ1強時代に変化が生じています。
箱根駅伝はランニングシューズ市場のトレンドを左右する影響力を持っており、アシックスのシェア回復は今後の市場競争に影響を与える可能性があります。
シューズ戦国時代の到来
2025年の箱根駅伝は、ナイキ1強時代からの転換点となりました。アディダス、アシックスが復活し、プーマやOnも台頭する「シューズ戦国時代」に突入しています。
各社がカーボンプレート搭載の厚底シューズなど革新的な製品を投入し、競争が激化しています。
世界市場での位置づけ
ナイキ・アディダスとの差
2024年のスポーツ用品業界の売上高市場シェアでは、1位ナイキ、2位アディダスがダントツのトップ2を形成しています。ナイキの時価総額は11兆円を超え、アディダスの売上高は約2兆8550億円に上ります。
アシックスは売上高で世界7位にランクインしていますが、両社との差はまだ大きいのが現状です。
利益率では世界レベル
ただし、アシックスは高機能品シフトにより利益率を高めており、すでにナイキなどを上回る水準に達しています。売上規模では劣るものの、収益性の面では世界トップクラスの競争力を持っています。
「選択と集中」戦略
高機能品への特化
アシックスは「選択と集中」を経営の柱に据えています。競技用のパフォーマンスシューズに注力し、ファッション性よりも機能性を重視する戦略を取っています。
ランニングシューズでは、プロアスリートから市民ランナーまで幅広い層に支持される製品ラインナップを構築しています。
研究開発への投資
神戸に本社を置くアシックスは、スポーツ科学研究所での研究開発に力を入れています。人間工学に基づいた製品開発が、高機能シューズの競争力を支えています。
課題と展望
供給網の改革
需要予測の精度を上げ、サプライチェーンの効率化を進めることが今後の課題です。急成長に伴い、在庫管理や生産体制の最適化が求められています。
株価の高値警戒感
時価総額3兆円を突破した後、株価は伸び悩む場面も見られました。市場からは、さらなる成長を示すためにはもう一段の経営効率向上が必要との声が上がっています。
グローバル展開の加速
欧米市場でのシェア拡大も重要な課題です。ランニングシューズの本場である北米市場でどこまでナイキに迫れるかが、真の意味で「巨人に挑む」上での試金石となります。
ライバルの動向
ナイキの苦戦
一方、ナイキは近年苦戦を強いられています。コロナ禍後の需要予測を誤り、在庫調整に追われたほか、イノベーションの停滞も指摘されています。
アディダスの復調
アディダスは箱根駅伝でトップシェアを獲得するなど、ランニング分野で存在感を回復しています。「アディゼロ」シリーズがエリートランナーに支持されています。
新興勢力の台頭
スイスのOn(オン)やフランスのホカも急成長しており、ランニングシューズ市場の競争は多極化しています。
まとめ
アシックスは2025年に時価総額3兆円を突破し、過去最高益を更新するなど好調な業績を収めました。箱根駅伝ではナイキを逆転し、ランニングシューズ市場での存在感を高めています。
「選択と集中」により高機能品に特化し、利益率では世界レベルに達したアシックス。売上規模ではナイキ・アディダスとの差は大きいものの、着実に「巨人」の背中に迫っています。サプライチェーン改革とグローバル展開の加速が、さらなる飛躍の鍵を握ります。
参考資料:
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