バークシャーがアマゾン株8割売却、テック離れの真意
はじめに
米投資会社バークシャー・ハザウェイが、2025年10〜12月期の保有銘柄リスト(13Fファイリング)を米証券取引委員会(SEC)に提出しました。その内容は市場に大きな衝撃を与えています。アマゾン・ドット・コム株の保有を77%も削減し、アップル株も3四半期連続で売却しています。
この動きは、ウォーレン・バフェット氏がCEOを退任する前の最後のポートフォリオ変更として注目されています。テック銘柄からの撤退は何を意味するのか、そして新たに取得した銘柄から見える投資戦略の転換について詳しく解説します。
バークシャーの大規模なテック株売却
アマゾン株を77%削減
バークシャーは2025年第4四半期に、アマゾン株を約1,000万株から約228万株へと77%削減しました。売却額は約17億ドル(約2,500億円)に達します。この大幅な削減は、バークシャーがテクノロジーセクターへの投資姿勢を見直していることを強く示唆しています。
アマゾンは近年、AI関連への設備投資を急拡大しており、2025年だけでもAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のインフラ投資に数百億ドルを投じています。こうした大規模な先行投資が、バリュー投資を基本とするバークシャーの投資哲学と合致しなくなった可能性があります。
アップル株も3四半期連続で売却
アップル株については、第4四半期に約1,030万株(約4%)を削減しました。売却額は推定27億ドル(約4,000億円)です。ただし、アップルは依然としてバークシャーの最大保有銘柄であり、約2億2,800万株、時価にして約620億ドル(約9.3兆円)を保有しています。
注目すべきは、アップル株の売却が2024年から始まり、すでに3四半期連続で続いていることです。バフェット氏は過去にアップルを「世界最高のビジネス」と称賛していましたが、ポートフォリオ全体のリバランスの一環として徐々にポジションを縮小しています。
新規銘柄と投資戦略の転換
ニューヨーク・タイムズ株を新規取得
テック株の売却と対照的に、バークシャーはニューヨーク・タイムズ(NYT)の株式を約507万株、時価約3億5,200万ドル(約530億円)を新規取得しました。これはバークシャーにとってメディア企業への新たな投資として注目されます。
ニューヨーク・タイムズは紙媒体からデジタルサブスクリプションへの転換に成功した代表的な企業です。安定した収益基盤と強固なブランド力は、バフェット氏が長年重視してきた「経済的な堀(モート)」を持つ企業の特徴と一致します。
その他のポートフォリオ変更
バークシャーは他にも重要な銘柄変更を行っています。シェブロンの保有株を約1億2,200万株から約1億3,000万株に増やし、エネルギーセクターへのコミットメントを強化しました。また、ドミノ・ピザに約40万株を追加投資し、ラマー・アドバタイジングにも新規ポジションを構築しています。
一方で、バンク・オブ・アメリカ株を約5,080万株(推定27億ドル相当)売却しており、金融セクターでもポジションの整理が進んでいます。
バフェット退任と後継者への引き継ぎ
最後の13Fファイリング
この四半期報告書は特別な意味を持っています。バフェット氏は2025年12月31日に95歳でCEOを正式に退任しました。つまり、今回の13Fはバフェット時代の最後の保有銘柄報告であり、彼の投資哲学が反映された最終的なポートフォリオの姿です。
13四半期連続の株式純売却
バークシャーは2022年10月以来、13四半期連続で株式の純売却を続けています。テック株の売却資金は現金ポジションの積み増しに充てられており、市場全体に対する慎重な姿勢が表れています。後継者のグレッグ・エイベル氏は、この潤沢な現金を活用した新たな大型投資の機会を模索することになります。
注意点・展望
今回のアマゾン株やアップル株の売却をもって、バークシャーがテクノロジーセクター全体を否定しているわけではありません。アップルは依然として最大保有銘柄であり、ポートフォリオ全体の約23%を占めています。
ただし、バフェット氏の売却は過去にも市場の転換点と重なることが多く、今回の大規模な現金化がマーケットにどのような影響を及ぼすかは注視が必要です。AI関連投資が急拡大するテクノロジーセクターにおいて、バリュー投資家の「撤退」は一つの警告シグナルと捉える見方もあります。
エイベル新CEOの下で、バークシャーの投資スタイルがどのように変化するのかも今後の焦点です。
まとめ
バークシャー・ハザウェイは2025年第4四半期に、アマゾン株を77%、アップル株を4%削減する一方、ニューヨーク・タイムズやシェブロンなどに新規・追加投資を行いました。この動きは、バフェット退任前の最後のポートフォリオ調整として、テクノロジーから伝統的な事業への回帰を示唆しています。
投資家にとっては、バークシャーのポートフォリオ変更を単なる売買として見るのではなく、市場全体のバリュエーションやリスクに対する「賢人の判断」として参考にすることが重要です。今後のエイベル体制下でのバークシャーの投資方針に引き続き注目していきましょう。
参考資料:
- Warren Buffett Dumped Shares of Amazon, Apple, and Bank of America - The Motley Fool
- Warren Buffett dumps $1.7 billion of Amazon stock - Finbold
- Berkshire trims Apple stake but keeps the stock as a $62 billion anchor - AppleInsider
- Berkshire Hathaway: Apple and BofA Sales Fund Purchases - Morningstar
- Berkshire Hathaway invests in The New York Times - Sherwood News
関連記事
Amazonのグローバルスター買収 通信衛星戦略と競争環境整理
Amazonは2026年4月14日、Globalstarを総額115.7億ドルで買収すると発表しました。狙いは衛星通信網、Band n53の周波数、Apple向けサービス、そしてDirect-to-Device市場です。Starlink先行の構図の中で、Amazon Leoが何を得て何が課題として残るのかを整理します。
AI相場失速でM7再調整 巨額投資と高金利が揺らす市場心理の行方
M7の時価総額縮小を招いたAI投資回収不安と高金利・地政学リスクの全体像と市場再評価
TACOからビッグMACへ:米中間選挙に向けた新投資戦略
「トランプはいつも腰砕け」を意味するTACOトレードに続き、中間選挙を見据えた「ビッグMAC」戦略が注目を集めています。2026年の米国株投資で押さえるべきポイントを解説します。
アップル株が復活、AI出遅れからの反転上昇を解説
AI開発の出遅れから株価を落としていたアップルが、2025年後半に急反発。エヌビディアを上回るパフォーマンスを見せる背景を、投資家心理と市場動向から読み解きます。
AI半導体株高が再点火した理由 世界株高を支える成長と危うさの正体
日経平均は4月14日に5万7877円へ反発し、米ナスダックも戦争ショック後の下げをほぼ吸収しました。なぜAI・半導体株に資金が戻るのか。TSMC、ASML、Broadcom、半導体ETF、原油高との綱引きを手掛かりに、世界株高の持続条件と崩れやすさを解説します。
最新ニュース
ブラジルがBYD「奴隷労働」認定を撤回した背景と波紋
ブラジル政府が中国EV大手BYDを「奴隷労働」企業に認定後わずか2日で撤回し、認定を主導した労働監督局長を解任した。カマサリ工場建設現場で163人の中国人労働者がパスポート没収・賃金搾取の被害に遭った事件の経緯と、中国との外交関係を優先する政治判断が労働者保護を揺るがす構造的問題を読み解く。
AI半導体株高が再点火した理由 世界株高を支える成長と危うさの正体
日経平均は4月14日に5万7877円へ反発し、米ナスダックも戦争ショック後の下げをほぼ吸収しました。なぜAI・半導体株に資金が戻るのか。TSMC、ASML、Broadcom、半導体ETF、原油高との綱引きを手掛かりに、世界株高の持続条件と崩れやすさを解説します。
Amazonのグローバルスター買収 通信衛星戦略と競争環境整理
Amazonは2026年4月14日、Globalstarを総額115.7億ドルで買収すると発表しました。狙いは衛星通信網、Band n53の周波数、Apple向けサービス、そしてDirect-to-Device市場です。Starlink先行の構図の中で、Amazon Leoが何を得て何が課題として残るのかを整理します。
ANA人事騒動は何だったのか 1997年対立と統治改革の起点
1997年のANA人事騒動は、若狭得治名誉会長、杉浦喬也会長、普勝清治社長の対立が表面化し、社長候補の差し替えまで起きた統治危機でした。背景には規制緩和下での旧運輸官僚主導と生え抜き経営のねじれがありました。1999年の無配、取締役31人から19人への削減、スターアライアンス参加へつながる改革の意味を読み解きます。
ANAとJALの上級座席競争を需要回復と機材更新戦略から読む
ANAは2026年8月受領の787-9に個室型ビジネスクラス「THE Room FX」を載せ、JALは2027年度から737-8で国内線ファーストクラスを全国展開します。訪日客4268万人、訪日消費9兆4559億円、国内旅行消費26兆7746億円の時代に、航空会社が座席を上質化する収益戦略を読み解きます。