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TACOからビッグMACへ:米中間選挙に向けた新投資戦略

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はじめに

2026年2月3日の米国株式市場は反落し、ダウ工業株30種平均は前日比166ドル安の4万9240ドルで取引を終えました。マイクロソフトやエヌビディアなどのハイテク株が売り込まれ、指数を押し下げる展開となりました。

こうした中、ウォール街では「TACOトレード」に続く新たな投資テーマとして「ビッグMAC」が注目を集めています。TACOは「Trump Always Chickens Out(トランプはいつも腰砕け)」の略で、トランプ大統領が強硬な政策を打ち出しても最終的には撤回するという前提に基づく投資戦略です。一方、ビッグMACは「Big Midterms Are Coming(大きな中間選挙が迫っている)」を意味し、11月の中間選挙に向けた政策リスクを織り込む新たなテーマとなっています。

本記事では、これらの投資戦略の背景と、2026年の米国株投資で押さえるべきポイントを解説します。

TACOトレードとは何か

用語の起源と意味

「TACOトレード」という言葉は、2025年5月にフィナンシャル・タイムズの記者ロバート・アームストロングが初めて使用しました。トランプ政権による「解放の日」関税をきっかけに始まった貿易戦争において、市場が「米国政権は市場や経済からの圧力に対する耐性が低く、関税が痛みを引き起こすとすぐに後退する」と認識し始めたことを表現したものです。

トレードの仕組み

TACOトレードは、関税発表後に株価が下落したタイミングで買い、関税が延期または緩和されて市場が反発した後に売却するという手法です。トランプ大統領が極端な脅しをレバレッジとして使いながらも、株式市場や経済全体への悪影響が見え始めると「腰砕け」になるという前提に基づいています。

マサチューセッツ大学アマースト校のアリン・デューブ教授は、この現象を「TACOサイクル」と名付けています。市場が最初はTACOを織り込むため株価は安定しますが、それがトランプ大統領をより強硬な行動に駆り立て、最終的に市場が「今回は本気かもしれない」と判断して株価が下落すると、再びTACOが発動するという循環です。

2026年の事例

2026年1月には、トランプ大統領がグリーンランドを巡って欧州同盟国に10%の関税を課すと脅したものの、スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラムで「取引の概念ができた」として関税を撤回しました。この動きは典型的なTACOパターンとして市場で認識されています。

ビッグMACトレードの登場

新たな投資テーマの背景

「ビッグMAC」トレードは、ネッド・デイビス・リサーチの米国チーフストラテジスト、エド・クリッソルド氏が提唱した概念です。「Big Midterms Are Coming」の略で、2026年11月の中間選挙に向けた政策変動リスクを捉えることを目的としています。

トランプ政権は中間選挙を意識し、物価抑制に向けた様々な施策を打ち出しています。原油価格、住宅ローン金利、クレジットカード金利、そして政策金利への働きかけが活発化しており、特に金融セクターへの政策リスクが高まっています。

業種別の影響

ビッグMACはTACOのような具体的な売買戦略というよりも、業種別の政策リスクを意識するテーマとして捉えられています。クリッソルド氏は「中間選挙に向けて業種固有の政策アクションがリスクとなる」と指摘し、住宅ローンやクレジットカード、金利全般を標的とした施策が金融セクターにとって最も明確なリスクだと分析しています。

一方、中間選挙年にはヘルスケアセクターが最も良好なパフォーマンスを示す傾向があり、このセクターには追い風が続く可能性があります。

中間選挙年のアノマリー

歴史的なパフォーマンス

米国の大統領選挙サイクルにおいて、中間選挙年は株式市場にとって最もボラティリティが高い年とされています。S&P500の年間平均下落幅は中間選挙年で19%に達し、他の3年間の平均13%を大きく上回ります。

CFRAリサーチのデータによると、S&P500は中間選挙年に平均18%の年間内調整を経験しています。1932年以降の中間選挙年における平均上昇率は5.8%にとどまり、大統領選挙サイクルの中では最も控えめなリターンとなっています。

選挙後の反発パターン

注目すべきは、中間選挙後のパフォーマンスです。U.S.バンクの過去60年間のデータ分析によると、中間選挙後12ヶ月間のS&P500平均リターンは16.3%に達します。1946年以降、中間選挙後の12ヶ月間でS&P500がマイナスになったことはありません。

中間選挙年の底値から1年後には、S&P500は平均32%上昇しているというデータもあります。この「選挙後ラリー」は、政治的不透明感の解消と、政権が任期後半に向けて景気刺激策に転じる傾向を反映しています。

2026年の特殊性

2026年は大統領任期の6年目(2期目の中間選挙年)にあたり、S&P500は平均12.4%上昇するというデータがあります。また、西暦の末尾が6の年は1966年以降プラスで終わっており、複数のアノマリーが重なる年となっています。

直近の市場動向

ハイテク株の調整

2026年2月の米国市場では、ハイテク株への売り圧力が強まっています。マイクロソフトは1月29日に時価総額3570億ドル(約54兆6600億円)を失い、2020年3月以来の大幅下落を記録しました。AI向け投資が過去最高に膨らむ一方、クラウド事業の売上成長鈍化が嫌気されたためです。

エヌビディアもDeepSeekショックで5930億ドルの時価総額を失うなど、AI関連銘柄への期待と懸念が交錯する展開となっています。ただし、アナリストの多くは両銘柄を「買い」評価としており、調整局面での押し目買いを推奨しています。

TACOトレードの限界

TACOトレードには構造的な問題も指摘されています。投資家がトランプ大統領の「腰砕け」を織り込んで株を買い支えるため、株価下落が小幅にとどまり、政策変更を促すほどの市場圧力が生じにくくなっています。1月のS&P500が2026年の上昇分を帳消しにした際には、TACOの効果が弱まりつつあるとの見方も出ました。

2026年の投資戦略

押し目買いのタイミング

日本のアナリストも含め、多くの専門家が2026年は「押し目買い」戦略を推奨しています。東海東京インテリジェンス・ラボの長田清英氏は「高値から10〜15%下落したら買い増しするのがいい」とアドバイスしています。20%を超える暴落を待っていると、買い場を逃す可能性があるためです。

中間選挙のアノマリーに基づけば、8月から10月にかけては特に「仕込みのチャンス」となりそうです。株式相場は10月頃を底に反転し、年末に向けて上昇基調をたどる傾向があります。

分散投資の重要性

野村證券のアナリストは、2026年の政治・経済状況を「不安定」と評価し、リスク回避的な戦略を推奨しています。業種や地域の分散を意識したポートフォリオ構築が重要です。

S&P500連動の投資信託を積み立てている投資家に対しては、「淡々と続けるべき」との助言が一般的です。短期的には調整があっても、米国経済と企業の成長力は健在であり、長期では右肩上がりが続くとの見方が支配的です。

注目セクター

中間選挙年に相対的に強いパフォーマンスを示すヘルスケアセクターは注目に値します。また、政権の物価抑制策の影響を受けにくいセクターを選好することも一つの戦略です。

注意点と今後の展望

政策リスクへの備え

中間選挙まで約40週間あり、政権が新たな業種別規制を導入するリスクは継続します。特に「完璧な価格付け」がされている市場では、ネガティブサプライズに対する下落リスクが高まります。

投資家は個別銘柄の政策リスクを精査し、過度に集中したポジションを避けることが重要です。TACOへの過度な依存は危険であり、政策が本当に実行される可能性も常に念頭に置く必要があります。

議会の行方

予測市場では、民主党が下院を奪還する確率が78%、共和党が上院を維持する確率が66〜68%と見込まれています。分断政府(ねじれ議会)となれば、トランプ政権の政策実行力は制約を受けることになります。

歴史的には、分断政府下では大規模な政策変更が困難になるため、市場にとってはかえって安定要因となる傾向があります。

まとめ

2026年の米国株式市場は、TACOトレードからビッグMACへと投資家の関心が移行しつつあります。中間選挙年特有のボラティリティと、選挙後の反発パターンを理解することが、今年の投資戦略を考える上で重要です。

短期的には8〜10月にかけての調整局面で押し目買いを狙い、長期投資家は積立投資を継続するというのが、多くの専門家の推奨する基本戦略です。ただし、政策リスクへの警戒と分散投資の原則は常に意識しておく必要があります。

中間選挙という政治イベントに振り回されすぎず、経済のファンダメンタルズを重視した投資判断を心がけましょう。

参考資料:

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