ペロブスカイト太陽電池で中国100社超が開発競争
はじめに
次世代太陽電池の本命として注目される「ペロブスカイト太陽電池」の量産競争で、中国企業が世界を大きくリードしています。中国では100社以上がペロブスカイト太陽電池の開発に取り組んでおり、車載電池大手のCATLやEV最大手のBYDといった巨大企業も研究開発に参入しています。
すでにGW(ギガワット)級の大規模生産ラインを稼働させた企業も登場し、2026年は本格的な価格競争の幕開けとなりそうです。本記事では、中国企業の最新動向と、日本企業の対抗戦略について詳しく解説します。
中国企業が量産で世界をリード
極電光能(UtmoLight)が世界初のGW級工場を稼働
中国スタートアップの極電光能(UtmoLight)は、江蘇省無錫市に世界初のGW級ペロブスカイト太陽電池の量産工場を稼働させました。年間180万枚のモジュール生産能力を持ち、超大型ペロブスカイトモジュールやBIPV(建材一体型太陽光発電)製品を量産しています。
同社は2024年11月に2.8平方メートルの大面積モジュールで450W・変換効率16.1%を達成。2025年3月には0.72平方メートルモジュールで18.1%の効率を記録し、同サイズでの世界記録を更新しました。量産品での変換効率20%達成を目標に掲げています。
協鑫光電(GCL)がIPOで資金調達へ
シリコン型太陽電池大手・協鑫集団の傘下企業である協鑫光電(GCL Optoelectronics)は、100MW級の量産ラインですでに安定した生産を実現しています。モジュールの歩留まり率は98.5%を超え、0.79平方メートルモジュールで出力118Wを達成しました。
さらに同社は、CATLやテンセントからの出資を受けて1GW級の新工場を建設中です。ペロブスカイト・シリコンタンデム型では変換効率26.36%のプロトタイプを開発し、2026年中の市場投入を目指しています。2025年内の香港IPOも計画しており、実現すればペロブスカイト太陽電池分野で世界初の上場企業となります。
CATL・BYDなど異業種からの参入
ペロブスカイト太陽電池の将来性に注目し、太陽電池以外の分野からの参入も相次いでいます。車載電池で世界首位のCATLは協鑫光電への出資を通じて研究開発に関わっています。EV最大手のBYDも独自にペロブスカイト技術の研究を進めています。
従来のシリコン型太陽電池大手であるジンコソーラー、トリナソーラー、LONGiも、シリコンの上にペロブスカイト層を重ねた「タンデム型」の開発を加速しています。ジンコソーラーは2026年までに変換効率34%の達成を目標としており、これは現行のシリコン型太陽電池の理論限界を大きく超える数値です。
ペロブスカイト太陽電池とは何か
従来の太陽電池との違い
ペロブスカイト太陽電池は、「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を持つ材料を発電層に使用した太陽電池です。従来のシリコン型太陽電池と比較して、いくつかの大きな利点があります。
まず、製造コストが大幅に低いことです。シリコン型が高温処理を必要とするのに対し、ペロブスカイト型は塗布や印刷といった低温プロセスで製造できます。次に、フィルム基板上にも形成できるため、軽量で柔軟な太陽電池パネルの実現が可能です。ビルの壁面や曲面にも設置でき、設置場所の選択肢が大幅に広がります。
課題は耐久性と大面積化
一方で、実用化に向けた課題も存在します。最大の課題は耐久性です。ペロブスカイト材料は熱や水分に弱く、長期間の屋外使用で性能が劣化しやすいという特性があります。太陽電池パネルに求められる20年以上の耐用年数を確保するための技術開発が各社で進められています。
もう一つの課題は、大面積モジュールでの効率維持です。小面積のセルでは25%を超える効率が達成されていますが、量産サイズのモジュールになると効率が低下する傾向があります。この「セルからモジュールへのスケールアップ」が量産化の鍵を握っています。
日本企業の対抗戦略
積水化学が2026年から販売開始
日本企業の中で最も先行しているのが積水化学工業です。同社は2024年12月にペロブスカイト太陽電池の量産化に向けた新会社「積水ソーラーフィルム」を設立しました。2026年3月から自治体向けの販売を開始し、2027年4月には年間100MW(10万kW)の製造ライン稼働を目指しています。
長期的には2030年にGW級(100万kW)の量産体制を構築する計画で、投資額は約900億円を見込んでいます。積水化学の強みは独自のフィルム封止技術にあり、軽量で柔軟なフィルム型ペロブスカイト太陽電池の実用化で差別化を図る戦略です。
パナソニック・アイシンも実用化間近
パナソニックホールディングスは2026年からペロブスカイト太陽電池の試験販売を予定しています。ガラス基板型の製品を中心に、建材との一体化を強みとした製品展開が見込まれています。
自動車部品大手のアイシンもペロブスカイト太陽電池の販売を計画しており、独自のガラス封止技術で耐久性の向上に取り組んでいます。キヤノンは耐久性を大幅に向上させる高機能材料を開発し、素材供給の面からこの市場に参入しています。
中国との差別化戦略
中国企業が圧倒的なスケールとコスト競争力で市場を席巻しつつある中、日本企業は価格競争とは異なる戦略を模索しています。三菱総合研究所のレポートでは、日本企業の勝ち筋として「海外展開」と「チームジャパン」での連携が提言されています。
具体的には、フィルム型の軽量・柔軟性を活かした差別化製品や、原料となるヨウ素の国内調達(日本は世界シェア2位)による供給安定性、そして高い耐久性技術がポイントとなります。
注意点・今後の展望
ペロブスカイト太陽電池の市場は急速に拡大していますが、いくつかの注意点があります。中国企業の量産品は変換効率が16〜19%程度であり、シリコン型の量産品(22〜24%)にはまだ及びません。ただし、シリコンとのタンデム型では30%超の効率が視野に入っており、次世代の主力技術となる可能性は高いです。
また、耐久性の問題は完全には解決されておらず、20年の長期保証を提供できるメーカーはまだ限られています。技術の進歩とともに改善が見込まれますが、導入を検討する際には実績データの確認が重要です。
2026年は、中国企業によるGW級量産の本格化と日本企業の市場参入が重なり、ペロブスカイト太陽電池にとって「元年」と呼べる年になりそうです。
まとめ
ペロブスカイト太陽電池の量産競争は、中国企業が100社以上の参入と大規模生産ラインの稼働で圧倒的にリードしています。極電光能のGW級工場や協鑫光電のIPO計画など、商業化が急速に進んでいます。
日本企業は積水化学を筆頭に、独自技術による差別化戦略で対抗する構えです。軽量フィルム型や高耐久性といった強みを活かし、中国との価格競争を避けつつ市場を開拓できるかが焦点となります。次世代エネルギーの覇権をめぐる日中の競争から目が離せません。
参考資料:
- 中国のペロブスカイト太陽電池メーカー、100MW級の生産ラインを構築 | 36Kr Japan
- 中国チーム、ペロブスカイト太陽電池で量産技術を確立 | 36Kr Japan
- ペロブスカイト太陽電池で世界初の上場、中国「協鑫光電」| 36Kr Japan
- UtmoLight starts perovskite module production at GW-scale facility | pv magazine
- Why China is leading perovskite solar commercialization | C&EN
- 積水化学工業がペロブスカイトを量産化 | SOLAR JOURNAL
- ペロブスカイト太陽電池の未来と日本企業の勝ち筋 | 三菱総合研究所
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