美容医療「年10万円以上」が3割、韓国での施術経験者も2割超
はじめに
美容医療の利用が日本で急速に広がっています。レーザー治療やボトックス注射といった施術が、かつての「特別なもの」から身近な選択肢へと変わりつつあります。美容医療を経験した女性約500人を対象にした調査では、この1年以内に初めて利用した人が45%にのぼり、年間10万円以上を費やしている人は約3割に達しました。
さらに、韓国で美容医療を受けた経験がある人は約23%と、5人に1人以上が海外での施術を経験しています。新型コロナウイルス禍を経て「化粧よりも素肌を整えたい」という志向が広まり、「肌管理」という新しい概念が日本の美容文化を変えつつあります。本記事では、拡大する美容医療市場の実態と注意すべきポイントを解説します。
美容医療市場の急拡大
初めての利用者が45%を占める
調査で注目すべきは、経験者の45%が「この1年以内に初めて利用した」と回答している点です。美容医療が急速に裾野を広げていることを示す数字です。
従来、美容医療は一部の高所得層やメディアに出演する著名人の選択肢というイメージがありました。しかし、施術メニューの多様化と価格帯の拡大により、20代〜30代の女性を中心に一般層への浸透が進んでいます。特にレーザーによるシミ取りやIPL(光治療)、ダーマペンなどの比較的手軽な施術が入口となるケースが多くなっています。
年間10万円以上を費やす層が3割
年間の美容医療支出が10万円以上と回答した人は全体の約3割に達しています。これは決して少額ではなく、美容医療がエステやスキンケア化粧品と同列の「定期的な自己投資」として位置づけられるようになったことを示しています。
美容医療にかかった費用のトータル平均は10万円を超えており、定期的なメンテナンスを行う「リピーター」が増えていることがうかがえます。ボトックス注射は3〜6ヶ月ごと、ヒアルロン酸注入は半年〜1年ごとの再施術が推奨されるため、継続的な出費が発生する構造となっています。
韓国での美容施術が2割超に
「肌管理」文化の輸入
韓国で美容医療を受けた日本人が全体の約23%に達した背景には、韓国発の「肌管理」(ピブカンリ)文化の影響があります。韓国では美容医療を日常的なスキンケアの延長として捉え、レーザー治療や注入治療を定期的に受ける文化が定着しています。
SNSや動画プラットフォームを通じて韓国の美容情報に触れる若い世代を中心に、「肌管理」という概念が日本でも浸透しました。「化粧で隠す」から「素肌から整える」へという意識の変化が、美容医療への関心を高めています。
韓国渡航施術のメリットとリスク
韓国での施術が人気を集める理由は、価格の安さと施術の豊富さにあります。韓国では美容医療と脱毛がセットで提供されることも多く、同じ施術でも日本より低価格で受けられるケースがあります。
一方、韓国の美容医療の利用率は日本を大きく上回っています。ボトックスなどの神経調節剤注射の利用率は韓国が8%に対し日本は1.2%、ヒアルロン酸などの注入治療は韓国が6%に対し日本は0.4%と、大きな差があります。韓国の高い利用率が示す市場の成熟度は魅力的ですが、海外での施術にはアフターケアの問題や、万が一トラブルが生じた場合の言語・法的障壁といったリスクも伴います。
美容医療トラブルの急増
相談件数は5年で3倍に
美容医療市場の急拡大に伴い、消費者トラブルも深刻化しています。全国の消費生活センターに寄せられた美容医療サービスに関する相談件数は、2019年から2023年の5年間で約3倍に増加しました。2024年度には1万件を超え、危害件数も約1.8倍に膨らんでいます。
トラブルの内容は、施術後の後遺症への不十分な対応、カウンセリング時の説明と実際の施術内容の相違、高額な契約への誘導など多岐にわたります。SNS広告で集客し、来院後に高額な施術を勧めるケースも問題視されています。
厚労省が本格的な実態調査に着手
こうした状況を受け、厚生労働省は2025年11月、全国の美容クリニック約3,800施設を対象とした大規模な実態調査を開始しました。美容医療と保険診療の間を行き来する医師の実態を明らかにし、安全な施術環境の整備に向けた「公的報告制度」の創設も検討されています。
皮膚科や形成外科だけでなく、内科や外科など他の基本領域の学会に所属する医師が美容医療に参入するケースも増えており、施術の質の担保が課題となっています。
注意点・展望
美容医療を利用する際は、以下のポイントに注意が必要です。まず、施術前のカウンセリングで十分な説明を受け、リスクや副作用を理解した上で同意することが大切です。即日施術を強く勧められた場合は、一度持ち帰って検討する冷静さが必要です。
また、施術を受ける医療機関を選ぶ際は、担当医師の専門資格や経験を確認しましょう。美容外科や形成外科の専門医資格を持つ医師であるかどうかは、重要な判断材料です。
日本の美容医療市場は2025年に約12億ドル規模で、年率約10%の成長が見込まれています。市場拡大に伴う規制の整備と消費者保護の強化が、今後の健全な市場発展の鍵を握っています。
まとめ
美容医療は「特別な施術」から「日常的な自己投資」へと急速に変化しています。年間10万円以上の支出者が3割、韓国での施術経験者が2割超という調査結果は、市場の裾野が着実に広がっていることを示しています。
一方、トラブル相談の急増は見過ごせない課題です。安全で質の高い美容医療を受けるために、正しい知識を持ち、信頼できる医療機関を選ぶことが重要です。厚労省の実態調査と規制整備の動向にも注目していきましょう。
参考資料:
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