ダイフクがヒト型ロボットに参入、完全無人化へ
はじめに
物流用搬送機器で世界首位のダイフクが、ヒト型ロボット(ヒューマノイド)の開発に本格参入します。社内に専門組織を立ち上げ、3年後にも実証に入る計画です。
ダイフクは半導体大手TSMCをはじめとする世界中の工場・倉庫に搬送システムを提供しており、マテリアルハンドリング(マテハン)の売上高で9年連続世界1位を誇ります。その同社がヒューマノイド領域に踏み出す背景には、物流業界が直面する深刻な人手不足と、「完全無人化」という壮大な目標があります。
ダイフクのヒューマノイド戦略
東京Lab・京都Labの二拠点体制
ダイフクは先端技術の研究開発体制を急速に拡充しています。2025年11月に京都市左京区に「京都Lab」(約900m²)を開設したのに続き、2026年3月11日には東京都港区に「東京Lab」(約1,000m²)を開設しました。
東京Labでは開設当初約30名の体制でスタートし、2027年度には50名に拡充する計画です。京都Labと合わせると2027年度には約140名の研究開発体制が整うことになります。両拠点ではITエンジニアやAI専門人材を新たに採用し、社内の設計・開発部門と連携してフィジカルAIやロボット基盤モデルの研究を進めます。
フィジカルAIとロボット基盤モデル
ダイフクが特に注力するのが「フィジカルAI」の分野です。フィジカルAIとは、現実世界の物理法則を理解し、実環境で自律的に動作できるAI技術を指します。これをマテハン設備に組み込むことで、従来はプログラムされた動きしかできなかった機器が、状況に応じて柔軟に対応できるようになります。
その中核技術となるのがロボット基盤モデルです。大規模言語モデルがテキスト処理で汎用性を発揮するように、ロボット基盤モデルは多様な物理的タスクに対応できる汎用的なロボット制御を実現します。ダイフクはこの技術を自社のマテハンシステムに統合し、仕分けや梱包といった人手に頼っていた作業の自動化を目指しています。
物流業界が求める「完全無人化」
未自動化領域への挑戦
ダイフクの下代博社長は「物流における未自動化領域をヒューマノイドで変えていきたい」と明言しています。現在の物流倉庫や工場では、搬送や保管の自動化は進んでいるものの、仕分け・梱包・検品といった作業には依然として人手が必要です。
これらの作業は形状やサイズが不定の商品を扱うため、従来の産業用ロボットでは対応が難しい領域でした。ヒト型ロボットであれば、人間と同様の動作が可能なため、既存の作業環境を大きく変更することなく導入できる可能性があります。
2030年の完全自動化を目標
ダイフクは2030年をめどに「完全自動化」の実現を目指しています。同社の強みは、搬送機器を単体で提供するのではなく、工場や倉庫のシステムを一貫して提案できる点にあります。ヒューマノイドを加えることで、搬送から仕分け、梱包まで一連の工程を無人で完結させるソリューションの構築が視野に入ります。
まずは米国や中国で開発が先行するヒューマノイドを用いて研究・検討を進め、将来的には自社の用途に最適化した仕様のロボットを独自開発する方針です。
急拡大するヒューマノイド市場
2025年は「量産元年」
ヒューマノイドロボット市場は急速に拡大しています。三菱総合研究所の分析によると、ヒューマノイドの世界市場規模は2025年の54.4億米ドルから年平均50%の成長率で拡大し、2029年には275.4億米ドル(約4兆円)に達すると予測されています。
2025年は「量産元年」とも呼ばれ、中国のAGIBOTやUnitreeが市場シェアの首位を争い、テスラも「Optimus」で参入を本格化させています。AGIBOTが世界シェア31%、Unitreeが27%を占めており、ホスピタリティ、製造、物流の各分野で商業導入が進んでいます。
物流ロボット市場の成長
より広い物流ロボット市場で見ると、世界の倉庫ロボット市場は2026年の73.5億米ドルから2034年には254.1億米ドルへの成長が見込まれています。国内でも物流ロボット市場は2023年の約357億円から2030年には約1,238億円への拡大が予測されており、人手不足を背景とした自動化投資の加速が続いています。
注意点・展望
実用化までのハードル
ヒューマノイドの物流現場への本格導入には、まだ複数のハードルが残されています。バッテリーの持続時間、複雑な環境での安定動作、導入コストの低減などが主な課題です。ダイフクが3年後の実証を目標としているのは、こうした技術的課題を段階的にクリアする必要があるためです。
マテハン世界首位の強み
一方で、ダイフクには世界中の工場・倉庫に搬送システムを納入してきた実績があります。2024年12月期の連結売上高は5,632億円を超え、世界24の国と地域に現地法人を展開しています。現場のニーズを熟知した同社がヒューマノイドを開発することで、実用性の高いソリューションが生まれる可能性があります。
米中メーカーとの競争は避けられませんが、マテハンシステムとの統合という独自の価値提案ができるのはダイフクの大きな強みです。
まとめ
ダイフクのヒューマノイド参入は、マテハン世界首位の企業が「完全無人化」に向けて本格的に動き出したことを意味します。東京Lab・京都Labの二拠点体制で研究開発を加速し、フィジカルAIとロボット基盤モデルを核にした次世代の物流ソリューションを構築する方針です。
物流業界の人手不足が深刻化するなか、ヒューマノイドによる仕分け・梱包の自動化は大きな市場ニーズがあります。3年後の実証、2030年の完全自動化実現に向けた取り組みから目が離せません。
参考資料:
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