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by nicoxz

ドコモが販促費積み増しで減益、シェア死守の徹底抗戦

by nicoxz
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はじめに

NTTドコモグループの2025年4〜12月期連結業績は、営業収益が前年同期比2.0%増の4兆6,597億円と堅調だった一方、営業利益は同10.6%減の7,454億円にとどまり、増収減益の厳しい結果となりました。さらに、2026年3月期通期の業績予想を下方修正し、営業利益は従来の9,660億円から830億円減の8,830億円としています。

「やられたらやり返す」と表現される同社の姿勢は、契約数シェアを落とさないために販促費用を大幅に積み増した結果です。本記事では、ドコモの業績悪化の要因と、シェア維持に賭ける経営戦略の行方を解説します。

業績悪化の二大要因

MNP競争激化による販促費の膨張

下方修正830億円の内訳で最大の要因は、MNP(モバイル番号ポータビリティー)競争の激化・長期化に伴う販促費の増加で、マイナス1,130億円のインパクトがあります。2025年4〜12月期だけでも、販促強化費用の増加は646億円の減益要因となっています。

携帯キャリア各社がMNPでの顧客獲得合戦を繰り広げるなか、ドコモは転入(ポートイン)を増やすためのキャッシュバックや端末値引きなどの販促施策を強化してきました。決算資料には「これまでになく競争は激化した」と明記されており、コスト増が利益を大きく圧迫しています。

端末購入プログラムの「想定外」

もう一つの大きな減益要因が、端末購入プログラムの収支悪化です。下方修正のうちマイナス300億円がこの要因に該当し、4〜12月期では454億円の減益影響が出ています。

ドコモの「いつでもカエドキプログラム」は、端末を残価設定型の分割払いで購入し、一定期間後に返却すると残りの支払いが免除される仕組みです。このプログラムへの新規加入が増加したことに加え、過去に販売した端末の早期返却も増えたことで、ドコモ側の費用負担が想定を超えて拡大しました。スマートフォンの高価格化が進むなか、消費者がプログラムを積極的に活用している結果とも言えます。

「シェア35%は必須」の経営判断

NTT島田社長の強い意志

NTTグループの島田明社長は「35%のシェアは必須だと思っている」と繰り返し表明しています。2025年9月末時点でドコモの契約数シェアは39.7%ですが、2025年3月末の40.2%から半年で0.5ポイント低下しており、じわじわとシェアが削られている状況です。

競合のKDDI(au)は31.3%、ソフトバンクは24.8%、楽天モバイルは4.2%という構図のなかで、ドコモは最大手としてのシェアを維持するため、利益を犠牲にしてでも販促投資を続ける判断を下しています。島田社長は「戦いには勝たないといけない」と述べ、徹底抗戦の姿勢を鮮明にしました。

競合各社との温度差

一方で、競合各社の戦略はドコモとは異なる方向に動いています。KDDIとソフトバンクの上期決算は増収増益となり、ドコモの「独り負け」が鮮明になりました。

ソフトバンクは「純増にこだわらない」と宣言し、短期解約の多い顧客よりも長期利用者を重視する方針に転換しています。KDDIも「数より質」への転換を進めており、単純な顧客数の争奪戦から距離を置き始めています。こうした競合の戦略転換によって、ドコモだけが販促費を積み増す構図が続けば、業績格差はさらに広がる可能性があります。

通信品質の巻き返し戦略

5G基地局を3倍ペースで増設

ドコモは販促費だけでなく、通信品質の改善にも大規模な投資を行っています。2025年度下期は上期比3倍のペースで5G基地局を構築する計画を実行中で、2026年度もこの3倍ペースを維持する方針です。

具体的な成果も出始めています。全国主要都市中心部では平均スループット(通信速度)が2024年3月比で約20%向上し、新宿駅周辺や池袋駅周辺では下りスループットが20%以上改善されました。鉄道路線でも、中央線快速の東京〜八王子間で約40%、総武線快速の東京〜千葉間で約50%の向上を記録しています。

国産優先方針の転換

5G品質改善に向けて、ドコモは基地局調達における国産優先の方針を転換し、約1,000億円を投じて海外メーカー製の基地局も積極的に導入する決断を下しました。通信品質で競合に後れを取っていた状況を、設備投資の加速で巻き返す狙いです。

2025年度末には通信品質を「他社並み」のレベルに引き上げ、2026年度にはナンバーワン奪還を目指すとしています。通信品質の向上が実現すれば、販促費に頼らない顧客獲得が可能になり、収益構造の改善につながる可能性があります。

注意点・展望

NTTグループの島田社長は「ドコモの業績は今年度がボトム(底)になる」との見通しを示しています。今後は長期間サービスを利用する顧客を増やすことで、解約率の低下と販促費の効率化を進め、2026年度・2027年度の成長につなげる考えです。

ただし、楽観は禁物です。ドコモが販促費を積み増せば競合も対抗する可能性があり、「不毛な反撃」の連鎖で業績がさらに悪化するリスクも指摘されています。アセット売却等による収支改善(プラス500億円)や住信SBIネット銀行の連結効果(プラス100億円)で一部を補っていますが、本業の通信事業での収益改善が本質的な課題です。

料金面では、2025年6月に実施された料金改定がシェアに影響を与えており、値上げした事業者がシェアを落とす一方、据え置いた事業者が健闘する構図となっています。今後の料金戦略も、業績回復の鍵を握る重要な要素です。

まとめ

NTTドコモは、MNP競争の激化に対して販促費を大幅に積み増す「徹底抗戦」の方針を取っていますが、その代償として2026年3月期は830億円の下方修正を余儀なくされました。端末購入プログラムの収支悪化も加わり、「独り負け」の状況が鮮明になっています。

一方で、5G基地局の3倍ペースでの増設や通信品質の改善など、中長期的な投資も着実に進めています。経営陣は「今年が底」との見通しを示しており、通信品質の向上による自然な顧客獲得と販促費の効率化が実現するかどうかが、ドコモ復活のカギとなります。

参考資料:

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