ドコモ3G終了迫る、残存200万回線の争奪戦が激化
はじめに
NTTドコモが2026年3月31日をもって、第3世代移動通信(3G)サービス「FOMA」を終了します。2001年10月にスタートしたFOMAは、日本の携帯通信を大きく変えたサービスでした。ピーク時には約5,800万契約を誇りましたが、4G・5Gへの移行が進み、2026年1月末時点で約200万件の契約が残っています。
この残存回線をめぐり、競合キャリアが「1円スマホ」などの破格キャンペーンを打ち出し、激しい顧客争奪戦が繰り広げられています。シェア低下が続くドコモにとっては、自社ユーザーの流出をいかに防ぐかが喫緊の課題です。本記事では、FOMA終了の背景から各キャリアの動向、そして利用者が取るべき行動までを詳しく解説します。
24年の歴史に幕を下ろすFOMA
日本の3G時代を切り開いたサービス
FOMAは2001年10月に商用サービスを開始しました。世界に先駆けてW-CDMA方式を採用し、テレビ電話やiモードの高速化など、当時としては画期的な機能を提供しました。2003年には契約数が100万を突破し、2005年には1,000万契約を達成。2011年12月末には約5,796万契約というピークに達しました。
その後、2010年にスタートした4G LTE(Xi)への移行が急速に進み、FOMAの契約数は年々減少してきました。KDDIは2022年3月末に3Gサービスを終了し、ソフトバンクも2024年4月(石川県は同年7月末)に終了しています。ドコモは最後まで3Gサービスを維持してきましたが、ついに2026年3月末をもって24年の歴史に幕を下ろすことになります。
終了で何が起きるのか
FOMA終了後、3G専用端末では音声通話・データ通信のいずれも利用できなくなります。VoLTE非対応の機種では通話機能が完全に失われるため、緊急通報(110番・119番)も不可能になります。また、4G対応端末でも一部の古い機種では影響が出る可能性があり、ドコモは対象端末のリストを公式サイトで公開しています。
さらに個人ユーザーだけでなく、法人向けのM2M・IoT機器にも大きな影響があります。自動販売機の在庫管理、エレベーターの遠隔監視、決済端末、建設機械の位置情報把握など、FOMA回線を利用している産業機器は多岐にわたります。これらの機器も4G LTEやLTE-M対応のモジュールへの交換が必要です。
残存200万回線をめぐる争奪戦
競合キャリアの攻勢
約200万件の残存回線は、携帯キャリアにとって魅力的な獲得対象です。シニア層を中心とした3Gユーザーは長期契約の傾向が強く、一度獲得すれば安定した収益源になるためです。
ソフトバンクは「3G買い替えキャンペーン」を展開し、ドコモの3G端末からの乗り換えで対象スマホが一括1円で購入できる施策を打ち出しています。傘下のワイモバイルでも同様のキャンペーンを実施しており、ドコモの3Gケータイからの乗り換えで対象端末が一括1円となります。
KDDIは「3Gとりかえ割」「3Gとりかえ割プラス」を展開し、最大4万1,800円の割引を提供しています。最新のAndroid端末が一括1円で購入できるケースもあり、積極的な顧客獲得に動いています。
楽天モバイルも1円スマホキャンペーンを実施中で、月額料金が3GB 1,078円からという低価格プランと組み合わせ、コスト重視のユーザーへの訴求を強めています。
防戦一方のドコモ
一方のドコモは、自社ユーザーの流出を防ぐべく対策を講じています。「FOMA終了ファイナルキャンペーン」として、ドコモショップや量販店でFOMAからXi・5Gへ契約変更したユーザーにdポイントを進呈する施策を展開しています。また、「はじめてスマホ割」では、FOMAからの契約変更で最大12か月間、月額料金が550円割引になります。
しかし、ドコモのシェアは低下傾向が続いています。2025年3月末時点で40.2%だったシェアは、同年9月末には39.7%まで下がりました。格安ブランド「ahamo」は2024年9月に600万契約を突破するなど好調ですが、メインブランドからの流出を完全には補えていません。3G終了に伴う約200万件の顧客動向は、今後のシェア推移にも少なからず影響を与えるでしょう。
シニア層と産業分野への影響
高齢者のスマホ移行という課題
残存する3Gユーザーの多くはシニア層です。長年フィーチャーフォン(ガラケー)を使い続けてきた利用者にとって、スマートフォンへの移行は大きなハードルとなります。操作方法の変化に加え、料金プランの複雑さや端末選びの難しさなど、不安要素は少なくありません。
各キャリアはシニア向けのサポート体制を強化しています。ドコモは「ドコモスマホ教室」を全国のドコモショップで無料開催し、基本操作の習得を支援しています。また、スマホに移行しなくても4G対応のガラホ(見た目はガラケー、中身は4G)に変更するという選択肢もあります。物理的なボタン操作に慣れた利用者にとっては、ガラホが現実的な移行先となるケースも多いです。
産業用IoT機器の移行期限
法人利用においても、3G終了の影響は深刻です。FOMAモジュールを搭載した監視カメラ、決済端末、自動販売機、エレベーター管理システムなど、多くの産業機器が3G回線に依存しています。これらの機器は、サービス終了までに4G LTEやLTE-M対応のモジュールに交換する必要があります。
企業にとってのリスクは多方面にわたります。業務システムの停止、サービス提供の中断、セキュリティリスクの増大などが懸念されます。特に全国に分散配置されている機器(自動販売機やデジタルサイネージなど)の場合、交換作業のコストと時間が大きな負担となります。サービス終了まで2か月を切った現在、未対応の企業には早急な対策が求められています。
注意点・展望
乗り換え時の注意点
3Gからの乗り換えにあたっては、いくつかの注意点があります。まず、キャリアメール(@docomo.ne.jp)は原則として使えなくなります。ドコモの「ドコモメール持ち運び」サービス(月額330円)を利用すれば他キャリアでもメールアドレスを維持できますが、別途費用がかかります。
また、1円スマホなどのキャンペーンには条件が付いていることが多く、特定プランへの加入や一定期間の継続利用が求められるケースがあります。表面上の端末価格だけでなく、月額料金を含めた総コストで比較することが重要です。
今後の通信業界への影響
3Gの完全終了により、日本国内の移動通信は4G LTEと5Gの2本立てとなります。3Gに割り当てられていた周波数帯が解放されることで、4Gや5Gのネットワーク品質向上に活用される見込みです。
ドコモにとっては、3G終了を機にユーザーの流出を最小限に抑え、5G時代の競争力を高められるかが今後の鍵となります。2025年9月末時点でシェア39.7%と40%を割り込んでおり、KDDIやソフトバンク、さらには楽天モバイルとの競争は今後も激化していくでしょう。
まとめ
NTTドコモの3Gサービス「FOMA」は2026年3月31日に終了し、24年の歴史に幕を下ろします。残存する約200万件の契約をめぐり、au・ソフトバンク・楽天モバイルが1円スマホなどの施策で獲得攻勢をかけており、シェア低下が続くドコモは防戦を強いられています。
3G端末を利用中の方は、サービス終了前に4G・5G対応端末への移行が必須です。各キャリアのキャンペーンを比較し、月額料金を含めた総コストで判断することをおすすめします。スマホ操作に不安がある場合は、4G対応ガラホも有力な選択肢です。また、法人でFOMA回線を利用したIoT機器を運用している場合は、早急に4G LTE対応への切り替えを進める必要があります。
参考資料:
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