楽天モバイル独り勝ち、携帯契約数で勢力図に変化
はじめに
日本の携帯電話市場で、勢力図に大きな変化が生じています。2025年10〜12月期(第3四半期)の契約数動向を見ると、業界4位の楽天モバイルが7〜9月期比で約7%増と突出した成長を遂げ、2025年12月25日に全契約回線数1,000万回線の大台を突破しました。一方、業界最大手のNTTドコモはシェアの低下傾向が続き、ソフトバンクは顧客獲得戦略の見直しにより純減を記録。KDDIは微増にとどまりました。
かつて「3強1弱」と言われた携帯キャリアの構図は、楽天モバイルの急成長によって確実に変わりつつあります。本記事では、各キャリアの最新契約数データと背景にある戦略の違い、そして今後の業界展望について詳しく解説します。
楽天モバイルの急成長を支える3つの要因
1,000万回線突破とEBITDA黒字化の達成
楽天モバイルは2025年を通じて驚異的な成長ペースを維持しました。年初に約830万回線だった契約数は、2月末に850万回線、7月に900万回線、11月に950万回線と着実に増加し、12月25日にはついに1,000万回線を突破しています。2025年12月末時点の全契約回線数は1,001万回線となり、前年同期比で171万回線の純増を記録しました。
この成長は財務面にも好影響をもたらしています。楽天グループが2026年2月12日に発表した2025年度通期決算によると、モバイルセグメントの売上収益は前年同期比32.0%増の3,747億円に達し、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は前年同期比667億円改善の129億円を計上しました。これは携帯キャリア事業に参入して以来、初となる通期EBITDA黒字化の達成です。
「Rakuten最強プラン」の価格競争力
楽天モバイルの急成長を牽引しているのが、主力プラン「Rakuten最強プラン」の圧倒的な価格競争力です。このプランはデータ利用量に応じて3段階の料金が自動適用される従量制を採用しており、3GBまでは月額1,078円、20GBまでは月額2,178円、それ以上はどれだけ使っても月額3,278円(いずれも税込)という設定です。
大手3キャリアの無制限プランが月額7,000円前後であることを考えると、楽天モバイルのデータ無制限月額3,278円は極めて魅力的な水準です。さらに、専用アプリ「Rakuten Link」を利用すれば国内通話が無料でかけ放題になるため、通信費の大幅な節約が可能です。プラン体系が1種類のみというシンプルさも、料金プランの複雑さに不満を持つユーザー層の支持を集めています。
店舗網拡大と外国籍ユーザーの獲得
オンライン中心だった楽天モバイルの販売チャネルにも変化が見られます。「楽天モバイルショップ」での契約数は前年比約1.2倍に増加しており、実店舗での対面サポートを求めるユーザー層の取り込みに成功しています。
注目すべきは、楽天モバイルショップにおける外国籍の顧客の契約率が全体の25%を占めている点です。日本に在住する外国人にとって、シンプルな料金体系と低価格は大きな魅力となっており、多言語対応の強化が新たな顧客層の開拓に寄与しています。これは大手3キャリアにはない、楽天モバイル独自の成長ドライバーと言えるでしょう。
大手3キャリアの苦戦と戦略転換
NTTドコモ:シェア低下と830億円の下方修正
業界最大手のNTTドコモは厳しい状況に直面しています。2025年のシェア推移を見ると、3月末の40.2%から6月末に39.9%、9月末に39.7%と、四半期ごとにシェアが低下し続けています。2025年12月末時点の契約数は9,221万回線で、依然として業界最大の顧客基盤を持つものの、成長の鈍化は明らかです。
2025年度第3四半期決算では、営業収益こそ前年から924億円増の4兆6,597億円となったものの、営業利益は前年から885億円減の7,454億円に落ち込みました。MNP(番号ポータビリティ)市場での競争激化に伴う販促費用の増大が主因で、営業利益の通期予想を当初の9,660億円から8,830億円へと830億円下方修正する事態となりました。
ドコモはMNPで4か月連続のプラスを達成し、解約率は0.74%と低い水準を維持していますが、競合他社との価格競争で収益性が圧迫される構図が続いています。「ドコモMAX」プランは250万契約を突破したものの、楽天モバイルの価格攻勢に対する抜本的な対抗策はまだ見えていない状況です。
ソフトバンク:「量より質」への大転換
ソフトバンクは2025年10〜12月期に、スマートフォン契約で10万件の純減を記録しました。しかし、これは経営判断に基づく意図的な変化です。宮川潤一社長が推進する「サステナブルな経営」方針のもと、短期間でキャリアを乗り換えて特典を得る「ホッピングユーザー」の削減を目的として、長期利用が見込める優良顧客の獲得に戦略をシフトしました。
この戦略転換の効果は数字にも表れています。第3四半期のARPU(1ユーザーあたり月間平均収入)は3,750円で、前四半期の3,720円から上昇しました。サブブランドからメインブランドへのユーザー移行も進んでおり、契約者1人あたりの収益性は着実に向上しています。通期の売上高は第3四半期累計で5兆1,954億円と前年同期比8%増を達成し、契約数の純減にもかかわらず業績は好調です。
KDDI:堅実な微増で安定路線を維持
KDDIは2025年10〜12月期に微増を記録し、4社の中で最も安定した推移を見せています。2025年12月末時点の契約数は7,205万回線で、シェアは31.3%前後を維持しています。5G契約の浸透率が78.4%に達し、前期末の67.2%から大幅に上昇した点は注目に値します。
マルチブランド戦略を展開するKDDIは、auブランドとUQ mobile、povoの3ブランドで幅広い価格帯をカバーすることで、楽天モバイルの低価格攻勢に対して一定の防御力を維持しています。付加価値ARPU(マルチブランド)は前期末比で70円増の1,340円となり、通信以外のサービス収益の拡大にも成功しています。
注意点・展望
楽天モバイルの急成長は目覚ましいものの、今後の課題も少なくありません。契約回線数1,001万回線は業界全体の約4.3%にすぎず、大手3キャリアとの規模の差は依然として大きい状況です。人口密集地域での通信品質の確保や、プラチナバンド(700MHz帯)の本格運用による通信エリアの拡充が急務とされています。
楽天モバイルは2026年をネットワーク強化の年と位置付け、2,000億円超の設備投資を計画しています。都市部や地下鉄の5G化・増強を加速する方針で、通信品質の改善が今後の成長持続のカギとなるでしょう。一方で、EBITDA黒字化を達成したとはいえ、営業利益ベースでは依然として赤字であり、大規模な設備投資との両立が経営上の課題として残ります。
大手3キャリアにとっては、楽天モバイルの成長をどこまで許容するかが戦略上の重要テーマです。NTTドコモはMNP獲得の強化とARPU向上の両立を図り、ソフトバンクは「量より質」の方針を貫き、KDDIはマルチブランド戦略で安定成長を目指すという、三者三様のアプローチが続くと見られます。2026年度以降も、携帯キャリア4社の競争はさらに激化する見通しです。
まとめ
2025年10〜12月期の携帯キャリア契約数は、楽天モバイルの独り勝ちという結果になりました。年間171万回線の純増で1,000万回線を突破し、通期EBITDA黒字化も達成した楽天モバイルの勢いは、日本の携帯電話市場の勢力図を確実に変えつつあります。
一方、NTTドコモはシェア低下と収益圧迫、ソフトバンクは戦略的な純減、KDDIは微増と、大手3社はそれぞれ異なる課題に向き合っています。各社が打ち出す差別化戦略の成否が、今後の市場シェアの行方を左右することになるでしょう。消費者にとっては、競争激化による料金低下やサービス向上が期待できる状況であり、自身の利用スタイルに合ったキャリア選びがますます重要になっています。
参考資料:
- 楽天モバイル、契約数が1,000万回線を突破(楽天グループ公式)
- 楽天グループ2025年度通期決算ハイライト
- 楽天モバイルがEBITDA黒字化を達成(ケータイ Watch)
- 携帯電話契約数・シェア 2025年12月末(InfraExpert)
- ドコモの第3四半期決算は増収減益(ケータイ Watch)
- ドコモ、2025年度営業利益を830億円下方修正(ITmedia)
- スマホ契約「10万件純減」も思惑通りのソフトバンク(Business Insider Japan)
- 楽天モバイル、2026年は「ネットワーク強化の年」に(ITmedia)
- 携帯キャリアのシェア 2025年9月末(InfraExpert)
- 携帯電話契約数(TCA公式)
関連記事
楽天モバイル独り勝ち、大手3社がホッパー対策で明暗
2025年10-12月期の携帯契約で楽天モバイルが7%増と独り勝ち。1000万回線突破と通期黒字化を達成する一方、大手3社は解約対策にシフトする構図を解説します。
NTTドコモ減益続く、5G基地局の遅れと巻き返し策
NTTドコモが2期連続の減益見通しを発表。5G基地局数がKDDI・ソフトバンクの半分にとどまるなか、基地局3倍増計画で通信品質の改善を図る。携帯シェア低迷の背景と巻き返し戦略を解説します。
ドコモが830億円下方修正、販促費増と競争激化の全貌
NTTドコモが2026年3月期の営業利益予想を830億円下方修正。MNP競争の激化による販促費増や端末返却プログラムの想定外コストなど、業績悪化の背景と今後の戦略を解説します。
ドコモが販促費積み増しで減益、シェア死守の徹底抗戦
NTTドコモが2026年3月期の営業利益予想を830億円下方修正。MNP競争激化に伴う販促費の増加と端末購入プログラムの収支悪化が直撃した背景と、シェア維持に賭ける経営戦略を解説します。
「やられたらやり返す」ドコモ、販促費増で減益も徹底抗戦の構え
NTTドコモが契約数シェアを死守するため販促費を大幅に積み増し、営業利益が10%超の減益に。業績予想も830億円下方修正した背景と、携帯キャリア競争の激化、今後の巻き返し戦略を解説します。
最新ニュース
JR東日本「JRE GO」で新幹線予約が最短1分に刷新
JR東日本が新幹線予約の専用サイト「JRE GO」を発表。会員登録不要で最短1分の予約を実現し、不評だった「えきねっと」からの転換を図ります。
アンソロピックのClaude、需要急増で障害発生しChatGPT超え
米AI企業アンソロピックのChatbot「Claude」が前例のない需要で大規模障害を起こしました。OpenAIの軍事契約への反発でChatGPTからの乗り換えが急増し、米App Store首位に。
バフェット氏、株主総会の質疑に登壇せず アベル新体制へ
バークシャー・ハザウェイの2026年5月の株主総会で、ウォーレン・バフェット氏が名物の質疑応答に登壇しないことが判明。新CEO グレッグ・アベル氏による新体制の全容を解説します。
ドコモが830億円下方修正、販促費増と競争激化の全貌
NTTドコモが2026年3月期の営業利益予想を830億円下方修正。MNP競争の激化による販促費増や端末返却プログラムの想定外コストなど、業績悪化の背景と今後の戦略を解説します。
GMから消えた3000人が映す米EV政策の逆回転
GMのEV専用工場「ファクトリー・ゼロ」で大量解雇が進行中。EV税制優遇の撤廃や排出規制の緩和により、米国のEV産業は「電池砂漠」と化しつつあります。その実態を解説します。