Tech Research Lab

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by nicoxz

2026年消費トレンド:感情を揺さぶる体験消費が加速する

by nicoxz
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はじめに

「抑えるほど発散したくなる」—この心理が、2026年の消費トレンドを読み解くカギになりそうです。

世界情勢の不安定化、物価高騰、AIの急速な普及など、現代人を取り巻くストレス要因は増す一方です。そんな中、怒りや不安といったネガティブな感情を「笑い」や「体験」に変換して発散させる消費行動が注目されています。

博報堂生活総合研究所やニッセイ基礎研究所、マーケティング専門家の分析をもとに、2026年の消費トレンドを展望します。

コスパ・タイパに続く「メンパ」の台頭

メンタルパフォーマンスとは

2026年は、コスパ(コストパフォーマンス)、タイパ(タイムパフォーマンス)に続く第3の消費スタイル「メンパ(メンタルパフォーマンス)」が急速に顕在化すると予測されています。

メンパとは、一言でいえば「ストレスからの解放」です。「選択のストレス」やSNSで広がる「失敗を許さない(したくない)心理」など、現代人はさまざまなストレスにさらされています。そうした心理的負荷の軽減を重視した、AI時代の新たな消費スタイルです。

苦労をキャンセルする消費

日経トレンディの2026年ヒット予測では、「苦労キャンセル界隈」がキーワードとして挙げられています。「苦労は買ってでもしろ」といわれた時代も今は昔。コストをかけてでも苦労を「キャンセル」して効率化するのが今流です。

生成AIが翻訳や買い物を瞬時に支援し、タイパが劇的に向上する中で、労せず一定以上の質の体験をもたらす商品やサービスが、次なるヒットの芽となっています。

感情を揺さぶる消費が広がる

「感情消費」の背景

博報堂生活総合研究所の酒井崇匡主席研究員は、2026年の動向について「感情を揺さぶる消費が広がる」と指摘しています。

物質的な豊かさが一定水準に達した現代社会では、商品やサービスの機能的価値だけでなく、感情的価値がより重視されるようになりました。Z世代を中心とした若年層は、商品やサービスが自分の気分をどう高揚させてくれるか、どんな体験を提供してくれるかをより重要視します。

ムード消費の拡大

日経トレンディの「2026年ヒット予測100」では、「ムード消費」が注目キーワードのひとつに挙げられています。商品の機能性だけでなく、その商品を使うことで得られる気分や雰囲気を重視する消費行動です。

例えば、マウスウォッシュブランド「ザ・ブレスコ」が5位に選出されましたが、これは単なる口腔ケア製品としてではなく、若者の「ムード消費」商品としてSNS売れが期待されているためです。

怒りや不安を笑いに変換

ストレス社会において、怒りや不安といったネガティブな感情をどう処理するかは重要な課題です。これらの感情を「笑い」に変換してエンタメとして消費する動きが広がっています。

愚痴を面白く発信することで、聞く側も遊び半分で付き合え、自分もメリハリをつけて気持ちを切り替えやすくなります。ただし、「怒り」がネット上で一番盛り上がるエンタメになっている現状への懸念も指摘されており、バランスが重要です。

AIとの距離感が問われる年

AIは「ツール」から「同僚」へ

2026年、AIは「ツール」から「同僚」へと進化すると予測されています。Bainのレポートでは、2028年に向けてAIエージェントが生み出す価値が29%にまで拡大すると予測されており、この動きが2026年に本格化する見込みです。

Metaは2026年までに、AIを活用した広告自動化を目指しています。広告主が製品画像と予算を入力するだけで、AIが広告全体を自動生成し、最適なターゲティングや予算配分の提案までを自動で行うことが予測されています。

リアル回帰の加速

一方で、AI時代だからこそ「リアル」への回帰が加速しています。生成AIの急速な普及やSNSのレコメンド機能が強化されたことで生活が便利になる一方、人間らしい温かみが失われ、時に不自由さを感じる機会が増えています。

そうした変化に対し、生活者はAIに代替不可能な領域として、実店舗との距離を縮めて安らぎを求めるようになっています。コンビニの「エンタメ」化など、リアルな場での体験価値が再評価されています。

AIで稼ぐ企業と取り残される企業

2026年は「AIで稼ぐ企業」と「AIがコストであり続ける企業」がはっきり分かれる年になると予測されています。AI活用に成功する企業は1.7倍の成長を遂げる一方、他社との差が加速度的に広がる「勝者総取り」の二極化が始まる可能性があります。

2026年の注目消費トレンド

推し活から「推され活」へ

「推し活」が広まる一方で、自分も「推される側」に回りたいという欲求が芽生えています。カラオケの新業態「VSING」など、誰もがステージの主役となり、推し活の対象になれるサービスが登場しています。

2026年には「推され活」という新しいトレンドが定着し、一般人でもリアルかつ気軽に自己承認欲求を満たせるサービスが活況となりそうです。

体験最大化主義の継続

2025年は物価高が続く逆風下でも大型ヒットが続出しました。「体験最大化主義」のマインドが大きく影響し、一回の体験で得られる対価を最大化しようと、予習・復習を欠かさない潮流が消費者から自発的に起こりました。

この傾向は2026年も継続すると見られています。

メリハリ消費の定着

ニッセイ基礎研究所によると、実質賃金がマイナスの状況下でも「メリハリ消費」が定着し、底堅い消費が続いています。2026年は実質賃金の改善が見込まれるものの、消費の総量が大きく伸びるとは限りません。

企業には、価格に見合った納得感の提供や、AIレコメンド、フリマアプリを通じた再流通の活用など、変化する消費者の「選択の仕方」への対応が求められています。

生活者の2026年展望

景気見通しは慎重

博報堂生活総合研究所の調査によると、2026年の景気が「悪くなる」と予想する人が増加し、「良くなる」はやや減少しました。物価高騰の影響を受けつつも、その中で楽しみを見出そうとする生活者の姿勢がうかがえます。

貯蓄志向の強まり

「来年お金をかけたいもの」として「ふだんの食事」が1位となる一方、「今年お金をかけたもの」と比較するとスコアは減少しています。来年は家計をより冷静に見直し、貯金など将来への備えに目を向ける側面も強まりそうです。

まとめ

2026年の消費トレンドは、「感情を揺さぶる体験」と「ストレスからの解放」がキーワードとなります。コスパ、タイパに続く「メンパ(メンタルパフォーマンス)」が第3の消費スタイルとして台頭し、心理的負荷を軽減する商品・サービスへの需要が高まります。

AI時代だからこそ、人間らしい温かみや実体験の価値が再評価される動きも加速しています。企業にとっては、機能的価値だけでなく感情的価値をどう提供するかが、消費者の心をつかむカギとなるでしょう。

消費者にとっては、メリハリをつけた消費行動を継続しながら、自分のメンタルヘルスに配慮した選択をすることが重要です。抑え込んだ感情を健全な形で発散させる体験への投資は、決して無駄ではありません。

参考資料:

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