フラット35が初の2%超え、住宅ローン金利上昇の影響と対策
はじめに
2026年1月5日、住宅金融支援機構は長期固定金利型の公的住宅ローン「フラット35」の最低金利が2.08%になったと発表しました。これは2017年10月の現行制度開始以降、初めて2%を超える水準となります。日本銀行が2025年12月に政策金利を0.75%へ引き上げたことが直接の要因ですが、この金利上昇は住宅購入者の返済負担を大きく増加させます。本記事では、フラット35金利上昇の背景、住宅ローンへの具体的影響、そして今後の見通しと対策について詳しく解説します。
フラット35金利の推移と現状
史上初の2%超え
2026年1月のフラット35の最低金利(借入期間21年以上、融資率9割以下)は2.08%となりました。2025年12月の1.97%から0.11ポイント上昇し、2017年10月の現行制度開始以降で初めて2%の大台を超えました。
2025年11月からの2ヶ月間で合計0.18ポイントもの急上昇となっており、金利上昇のペースが加速していることがわかります。
過去の金利動向
フラット35は過去に低金利の時代が続いていました。2016年8月には史上最低水準の0.90%を記録したこともあります。その後、緩やかに上昇を続け、2023年頃から1%台後半で推移していました。
2025年に入ってからは日銀の金融政策正常化を受けて上昇ペースが速まり、12月は1.97%、そして1月には2.08%と2ヶ月連続で大幅に上昇しています。
フラット35とは
フラット35は住宅金融支援機構が民間金融機関と連携して提供する長期固定金利型住宅ローンで、借入時の金利が返済終了まで変わらない安心感が特徴です。金利は金融機関によって異なりますが、10年物国債利回りを基準に決定されます。
金利上昇の背景:日銀の金融政策正常化
2025年12月の利上げ
日本銀行は2025年12月18・19日の金融政策決定会合で政策金利を0.50%から0.75%に引き上げました。0.75%となるのは1995年以来、30年ぶりの高水準です。
日銀は2026年以降も経済・物価情勢をみながら利上げを継続する方針を示しており、金融政策の正常化を着実に進めています。
長期金利の急上昇
日銀の利上げ決定を受けて、長期金利の指標となる10年物国債利回りは急上昇しました。2026年1月5日には一時2.125%まで上昇し、2005年6月以来、約19年7ヶ月ぶりに2%台に乗せました。
2025年12月30日時点で10年国債利回りは2.07%で終了しており、11月末の1.825%から0.245ポイントもの急上昇となりました。この長期金利の上昇が、フラット35の金利上昇に直結しています。
利上げの理由
日銀は、2026年の春季労使交渉に向けた初動のモメンタムと、賃金上昇の販売価格への転嫁が続き、「賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムは維持される可能性が高い」と判断しました。
2024年に入り、賃上げの動向などから2%の物価上昇目標の実現に見通しがついたと判断し、2024年3月にマイナス金利政策を解除、2024年7月に利上げを実施しています。
住宅購入者への具体的影響
返済額の増加試算
金利上昇は住宅購入者の返済負担を大きく増加させます。具体的な影響を試算してみましょう。
4,000万円を35年返済で借りた場合:
- 金利1.90%(2025年11月)の場合:毎月返済額 約12万8,000円
- 金利2.08%(2026年1月)の場合:毎月返済額 約13万3,000円
- 差額:毎月約5,000円、35年間で約210万円の負担増
わずか2ヶ月で毎月の返済額が5,000円増加し、総返済額では200万円以上の差が生じます。テレビ朝日の取材では、2ヶ月前より負担が150万円増加したケースも報道されています。
借入額別の影響
3,000万円を35年返済で借りた場合:
- 金利が1%上昇すると、毎月返済額は約1.4万円、35年間の総返済額は約587万円増加します
変動金利からの増加幅:
- 2024年7月以降の日銀の利上げにより、約3年前に変動型で4,500万円を借りたケースでは、毎月返済額は借り入れ当初に比べ合計で約1万4,000円増える試算となっています
世帯への影響
住宅ローンなどの負債を保有する世帯では追加利上げの影響が1世帯当たりで年間マイナス1.8万円となります。特に若年世帯では影響が大きく、29歳以下で年間マイナス5.0万円、30歳台で年間マイナス4.5万円となります。
住宅購入を検討する若年層にとって、金利上昇は大きな負担増となっています。
変動金利と固定金利の比較
2026年1月時点の金利水準
変動金利: 2026年1月1日現在、変動金利については2025年12月から引き続き金利を据え置いている金融機関が多く見られます。主な金融機関の変動金利は0.6〜0.7%台となっており、費用などを含んだ実質金利は約0.6〜0.9%です。
固定金利: 固定金利ではほとんどの金融機関が金利を引き上げています。固定期間選択型(10年)の主要都市銀行の金利(中央値)は2.650%となっています。
金利差: 2026年1月時点での変動・固定の金利差は年1.29%です。つまり「変動金利が年1.29%以上上昇し、それが35年間続くのであれば固定金利を使う方が有利」という計算になります。
変動金利の今後の見通し
日銀の2025年12月の利上げを受けて、多くの銀行は2026年4月に一斉に住宅ローンの変動金利の新規貸出金利を引き上げる可能性が高く、ほとんどの銀行が日銀の追加利上げと同じ0.25%引き上げる可能性が高いとされています。
既存契約者への影響が出てくるのは、2026年7月以降の可能性が高いとみられています。
固定金利への人気シフト
金利上昇局面を受けて、フラット35の申請件数は2025年7〜9月期に前年同期比50%増加しました。変動金利型の金利も上昇する中、返済額が変わらない固定金利型の人気が高まっています。
将来の金利上昇リスクを避けたい借り手が、固定金利を選択する傾向が強まっていることがわかります。
今後の金利動向と見通し
日銀の利上げ継続方針
日銀は正常化のプロセスにおいて、経済・物価が見通しに対してオン・トラックであり、大きく軌道を外さなければ、ある程度定期的な間隔で政策金利の水準を調整していきたいと考えています。その間隔は半年程度が目安ではないかと見られています。
2026年4月の展望レポートでは、予測期間が2028年度まで延び、物価が見通しに沿った動きなら、淡々と緩和度合いの修正を検討したいというのが日銀執行部の考え方だと想定されます。
中立金利への道のり
日銀の推計によれば、中立金利は1.0%から2.5%の間にあると考えられています。現在の政策金利0.75%は、依然として金融緩和的な水準であり、今後も段階的な利上げが予想されます。
植田日銀総裁は「中立金利の推計値の下限までには少し距離がある」と述べており、さらなる利上げ余地があることを示唆しています。
専門家の予測
今後の政策金利について、一部の専門家は以下のような予測を示しています。
- 2025年度:0.75%
- 2026年度:1.25%
- 2027年度:1.5%
このペースで利上げが進めば、フラット35の金利も2027年度には2.5〜3.0%程度まで上昇する可能性があります。
長期金利の動向
長期金利(10年国債利回り)は、日銀の政策金利だけでなく、米国の金利動向や世界経済の状況にも影響を受けます。2026年も米国の金融政策や地政学的リスクなどが日本の長期金利に影響を与える可能性があります。
住宅購入者が取るべき対策
金利タイプの選択
固定金利を選ぶべき人:
- 金利上昇リスクを避けたい
- 返済計画を確実に立てたい
- 長期的な安心を重視する
変動金利を選ぶべき人:
- 当面の返済額を抑えたい
- 繰り上げ返済を積極的に行う予定
- 収入増が見込める
現在の金利差は1.29%ですが、今後の利上げペースによっては、この差が縮小する可能性もあります。自身のライフプランとリスク許容度を考慮して選択することが重要です。
借入額の見直し
金利上昇局面では、当初予定していた借入額を見直すことも重要です。金利が0.5%上昇するだけで、総返済額は数百万円単位で増加します。
対策:
- 頭金を増やして借入額を減らす
- 返済期間を短縮する(30年から25年など)
- 購入予算そのものを見直す
繰り上げ返済の活用
変動金利を選択した場合、金利上昇に備えて繰り上げ返済を積極的に行うことが有効です。元本を減らすことで、将来の金利上昇による影響を抑えることができます。
借り換えの検討
既に住宅ローンを借りている人は、借り換えを検討する価値があります。ただし、借り換えには手数料がかかるため、総返済額で比較して判断する必要があります。
借り換えを検討すべきケース:
- 現在の金利と新規金利の差が0.3%以上
- 残りの返済期間が10年以上
- ローン残高が1,000万円以上
家計の見直し
金利上昇による返済負担増に備えて、家計全体を見直すことも重要です。
具体的な対策:
- 固定費の削減(通信費、保険料など)
- 緊急時の貯蓄を確保
- 収入増加の方策を検討
注意点と留意事項
「5年ルール」と「125%ルール」の落とし穴
変動金利型住宅ローンには「5年ルール」(5年間は返済額が変わらない)と「125%ルール」(返済額の増加は従前の1.25倍まで)がありますが、これらは元本返済が進まず、未払い利息が発生するリスクがあります。
金利が急激に上昇した場合、毎月の返済額の多くが利息に充てられ、元本がほとんど減らない状況に陥る可能性があります。
総返済額での比較が重要
住宅ローン選びは金利だけでなく、事務手数料や保証料なども含めた総返済額で比較して選ぶべきです。金利が低くても、諸費用が高ければトータルで割高になる場合があります。
長期的な視点が不可欠
住宅ローンは最長35年という長期の契約です。目先の金利だけでなく、ライフプランの変化(転職、出産、教育費など)も考慮に入れて判断する必要があります。
専門家への相談
住宅ローンは複雑な金融商品であり、個々の状況によって最適な選択は異なります。ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーなど、専門家への相談も検討すべきです。
まとめ
2026年1月のフラット35金利が2.08%となり、現行制度で初めて2%を超えたことは、日本の住宅ローン市場における大きな転換点となりました。日銀の金融政策正常化が進む中、今後も段階的な金利上昇が予想されます。
金利上昇は住宅購入者の返済負担を大きく増加させ、4,000万円の借入では2ヶ月間で総返済額が200万円以上増加するケースもあります。特に若年世帯への影響が大きく、慎重な判断が求められます。
変動金利と固定金利の金利差は現在1.29%ですが、2026年4月以降、変動金利も上昇が見込まれており、固定金利への人気がシフトしています。今後の日銀の利上げペースによっては、2027年度にはフラット35が2.5〜3.0%程度まで上昇する可能性もあります。
住宅購入を検討している方は、金利タイプの慎重な選択、借入額の見直し、繰り上げ返済の計画など、総合的な対策を講じることが重要です。既に住宅ローンを借りている方も、借り換えの検討や家計の見直しを行い、金利上昇に備えるべきでしょう。
長期的な視点で、自身のライフプランとリスク許容度を考慮し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、最適な住宅ローン戦略を構築することが求められています。
参考資料:
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