Research

Research

by nicoxz

ChatGPT一強時代の終焉へ、Google DeepMind復活の3つの布石

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

2022年末にOpenAIがChatGPTを公開して以来、AI業界はChatGPT一強の時代が続いてきました。しかし2026年に入り、その構図が急速に変わりつつあります。GoogleのAI研究開発組織「Google DeepMind(GDM)」が矢継ぎ早に成果を出し、市場シェアでもChatGPTを猛追しているのです。

その原動力となったのが、3年前の2023年4月に行われた組織統合でした。英国発のAI研究機関DeepMindと、Google社内のAI開発組織Google Brainを一つにまとめるという大胆な決断が、いま花開いています。この記事では、GDMの復活を「文化の衝突」「組織構造」「取捨選択」という3つのキーワードで読み解きます。

ChatGPTの市場シェアが急低下

数字が示す「一強の終焉」

ChatGPTの市場支配力は、具体的な数字で見ると明らかに低下しています。Apptopiaのデータによれば、ChatGPTのアプリ市場シェアは2025年1月の69.1%から、2026年には45.3%まで下落しました。一方でGoogleのGeminiは同期間に14.7%から25.2%へと急成長しています。

Similarwebの分析でも、ChatGPTのシェアは1年前の87.2%から68%に低下し、Geminiは5.4%から18.2%に拡大しています。データソースにより数値は異なりますが、ChatGPTのシェア縮小とGeminiの急伸という傾向は一致しています。

ユーザー数でも肉薄

Geminiは2026年1月に月間訪問数が20億回を突破しました。月間アクティブユーザー数は7億5,000万人に達し、前四半期の6億5,000万人から大幅に増加しています。ChatGPTの推定8億1,000万人にはまだ及びませんが、その差は急速に縮まっています。

注目すべきは、AIユーザーの5人に1人が複数のAIアプリを使い分けているという調査結果です。ChatGPTだけに依存する時代は終わり、用途に応じてツールを選ぶ「マルチAI時代」が到来しつつあります。

3年前の組織統合が復活の布石に

DeepMindとGoogle Brain――異なるDNAの融合

2023年4月の統合前、DeepMindとGoogle Brainはまったく異なる文化を持つ組織でした。

DeepMindは2010年にロンドンで設立されたAI研究機関で、汎用人工知能(AGI)の実現を目標に掲げていました。深層強化学習を先駆的に開発し、2015年に囲碁AIのAlphaGoが世界チャンピオンを破ったことで世界的に注目されました。基礎研究を重視し、長期的な視点でブレークスルーを追求する「アカデミック」な文化が特徴です。

一方のGoogle Brainは、Google社内で機械学習フレームワーク(TensorFlowなど)や自然言語処理技術を開発してきた組織です。プロダクトへの応用を重視し、Google検索やGmailなど実際のサービスに技術を組み込む「エンジニアリング」寄りの文化を持っていました。

「文化の衝突」がイノベーションを生む

この2つの組織を統合するにあたり、文化の衝突は避けられませんでした。しかし、この衝突こそがイノベーションの源泉になったと分析されています。

基礎研究に強いDeepMindの知見と、プロダクト開発に長けたGoogle Brainの実装力が一つの組織に融合されたことで、「研究成果をいかに早くプロダクトに落とし込むか」というスピードが飛躍的に向上しました。統合後の最初の大型プロジェクトが、マルチモーダルAIモデル「Gemini」の開発でした。「Gemini」(双子座)という名前自体が、2つの組織の融合を象徴しています。

「組織構造」の変革――R&Dから司令塔へ

統合によってGDMは、単なる研究開発部門からGoogleの「AI開発の司令塔」へと変貌しました。GDM CEO のデミス・ハサビス氏は「最も能力が高く、責任あるAIシステム」の開発を統括し、Google Brainのリーダーであったジェフ・ディーンはGoogle ResearchとGDMの双方を見渡すチーフサイエンティストに就任しました。

さらに2024年10月にはGeminiの開発チームもGDMに統合され、2025年1月には追加のAIチームもGDMに移管されるなど、AI関連の人材とリソースの集約が加速しています。「研究から開発者向けパイプラインの加速」を目的とした一連の統合により、意思決定の一元化が実現しました。

「取捨選択」の戦略――何をやらないかを決める

GDMの成功を語る上で見逃せないのが、「取捨選択」の戦略です。限られたリソースを最大限に活用するため、プロジェクトの優先順位を明確にし、成果が見込めない研究は大胆に打ち切る判断が行われました。

この取捨選択の成果が如実に表れたのが、Geminiシリーズの急速な進化です。2023年12月のGemini 1.0から、2025年11月のGemini 3 Proに至るまで、わずか2年で性能を大幅に向上させ、多くのベンチマークでOpenAIのGPT-5.1を上回る結果を出しています。

Googleの「エコシステム戦略」とOpenAIの課題

日常に溶け込むAI

Googleの最大の強みは、検索、Gmail、Android、Google Workspace、YouTubeなど、数十億人が日常的に使うサービス群を持っていることです。GeminiをこれらのサービスにAIを浸透させ、ユーザーが意識しなくてもAIの恩恵を受けられる環境を構築しています。

Appleとの提携やGmailへのAI統合により、Geminiは「わざわざ使いに行くAIチャットボット」ではなく、「生活に溶け込むAI」としてのポジションを確立しつつあります。

OpenAIの焦り

対照的にOpenAIは、ChatGPTに広告を導入する動きを見せています。これに対しGDM CEOのハサビス氏は、「AIアシスタントへの広告導入を急ぐことは、ユーザーの信頼を損なう可能性がある」と懸念を示しました。

また、Elon Musk氏のGrokも急成長しており、市場シェアは1年前の1.6%から15.2%に拡大しています。ChatGPTは単にGoogleだけでなく、複数の競合から同時にシェアを奪われている状況です。

注意点・今後の展望

ノーベル賞が証明した基礎研究の価値

GDMの復活を象徴する出来事として、ハサビス氏が2024年のノーベル化学賞を受賞したことが挙げられます。タンパク質構造予測AI「AlphaFold」シリーズの開発成果が評価されたもので、AI研究が科学的ブレークスルーに直結することを世界に示しました。

この受賞は、GDMが商業的な成功だけでなく、基礎科学への貢献という面でもリードしていることの証明です。

競争はまだ始まったばかり

ただし、Google一強への回帰を予測するのは時期尚早です。OpenAIは依然として最大のユーザーベースを持ち、エージェント機能や企業向けサービスでも攻勢を強めています。また、AnthropicのClaude、Meta AI、xAIのGrokなど、AI市場は多極化が進んでいます。

重要なのは、この競争が最終的にユーザーの利益につながることです。各社がしのぎを削ることで、AIの性能向上と低価格化が加速するでしょう。

まとめ

ChatGPT一強時代の終焉は、一企業の浮沈を超えた意味を持っています。3年前にDeepMindとGoogle Brainを統合するという決断が、「文化の衝突」によるイノベーション、「組織構造」の一元化による開発スピードの向上、そして「取捨選択」による効率的なリソース配分を実現し、GoogleのAI復活を支えました。

AI市場はChatGPT一強から多極化の時代へと移行しています。Google、OpenAI、Anthropic、xAIなどがしのぎを削る中、ユーザーにとっては選択肢が広がり、AIの活用可能性がさらに大きくなる時代が到来しています。

参考資料:

関連記事

最新ニュース