イラン攻撃で日経平均急落、原油高と市場の行方
はじめに
2026年3月2日、東京株式市場は激しい動揺に見舞われました。米国とイスラエルによるイラン攻撃を受け、日経平均株価は一時1,500円を超える急落を記録。終値でも前週末比793円安の5万8,057円と、5営業日ぶりの反落となりました。
背景にあるのは、エネルギー輸送の大動脈であるホルムズ海峡の事実上の封鎖です。原油価格はブレント原油が一時85ドル、WTI原油が75ドル台に急騰し、世界経済への波及が懸念されています。この記事では、市場混乱の経緯と日本経済への影響、そして今後の見通しを解説します。
イラン攻撃と市場急落の経緯
軍事行動の発端と展開
日本時間2月28日午後、米国とイスラエルはイラン全土の複数の軍事拠点に対する空爆を開始しました。トランプ大統領はイラン政権による「差し迫った脅威」の排除と自国民の保護を目的として説明しています。
これに対しイランは、周辺国の米軍基地やイスラエルに対する報復攻撃を実施。戦火は急速に拡大しました。イラン革命防衛隊は3月2日、世界のエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖を発表。同海峡を通過するタンカーが攻撃を受け、航行は事実上停止に追い込まれました。
日経平均の値動き
3月2日の東京市場は、週末の米国株安と中東情勢の緊迫化を受けて売り一色で始まりました。朝方に伝わった米原油先物価格の急騰が追い打ちをかけ、日経平均の下げ幅は一時1,500円を超えました。
その後、原油価格に関する過度な不安がやや後退したことで買い戻しが入り、終値は793円安(1.35%安)の5万8,057円まで下げ幅を縮小しました。しかし翌3日も売り圧力は続き、1,778円安と大幅続落し、約11か月ぶりの下げ幅を記録しています。
セクター別の明暗
業種別では33業種中9業種のみが上昇しました。原油高の恩恵を受ける鉱業、石油・石炭製品が上昇した一方、燃料コスト増が直撃する空運業が最も大きく下落。証券・商品先物取引業、銀行業も値下がり上位に入りました。また、非鉄金属や海運業は資源価格の上昇を背景に堅調な動きを見せています。
原油急騰とホルムズ海峡封鎖の衝撃
原油価格の動向
ホルムズ海峡の封鎖報道を受け、原油価格は急騰しました。国際指標のブレント原油先物は2024年7月以来となる1バレル85ドルに達し、WTI原油先物は前週末比12%超の上昇で75ドル台を記録しています。
アナリストの間では、海峡封鎖が長期化し、戦火が近隣産油国に拡大した場合、原油価格は1バレル100ドルを突破するとの見方も出ています。エネルギー市場の混乱は原油だけにとどまらず、カタールの国営エネルギー企業が施設への軍事攻撃を理由にLNG(液化天然ガス)の生産を一時停止。欧州の天然ガス先物は45%急騰し、米国の天然ガス価格も約5%上昇しました。
日本のエネルギー安全保障への影響
日本にとって、ホルムズ海峡の封鎖は極めて深刻な問題です。日本は原油輸入の9割超を中東地域に依存しており、同海峡は文字通り「エネルギーの生命線」です。世界の海上輸送原油の約20%がこの海峡を通過しています。
封鎖が長期化した場合、ガソリン価格や電気・ガス料金の高騰が避けられず、家計への直撃が懸念されます。ブルームバーグの報道によれば、原油高に伴い日本でもインフレが加速する恐れがあります。一方、日本は254日分の石油備蓄を保有しており、短期的には供給途絶に耐えうる体制を整えています。
世界市場への波及と投資家の対応
米国市場の反応
米国市場でも動揺は広がりましたが、日本市場ほどの急落には至りませんでした。ダウ工業株30種平均は一時600ポイント下落したものの、終値では約70ポイント安まで回復。S&P500種指数はほぼ横ばいで取引を終えています。
エネルギー関連株は逆に上昇し、エクソンモービルやシェブロンが約4〜5%高となりました。防衛関連株にも買いが集まり、地政学リスクの高まりを反映した物色が見られます。
リスク回避の動き
投資家のリスク回避姿勢は、安全資産への資金シフトとして表れています。金価格は上昇し、米ドルも買われました。為替市場では円が対ドルで一時157円台まで下落。通常、地政学リスク時には「安全通貨」として円が買われますが、今回は日本のエネルギー調達リスクが意識され、円売り圧力が強まる場面もありました。
注意点・展望
今後の市場動向を左右する最大の要因は、ホルムズ海峡の封鎖がどの程度の期間続くかです。短期間で封鎖が解除されれば、原油価格は落ち着きを取り戻し、株式市場も回復に向かう可能性があります。
しかし、封鎖が長期化すれば影響は深刻です。エコノミストの分析では、原油価格が1バレル120〜130ドルで持続的に推移した場合、日本の2026年GDPは想定比0.6%程度押し下げられるとの試算もあります。輸入コストの増大は貿易赤字の拡大を通じて円安圧力をさらに強め、スタグフレーション(景気後退とインフレの同時進行)のリスクが高まります。
投資家にとっては、中東情勢の推移を注視しつつ、エネルギー関連株や防衛関連株など、地政学リスクの恩恵を受けるセクターと、空運・化学など打撃を受けるセクターの選別が重要になります。
まとめ
米国・イスラエルによるイラン攻撃とホルムズ海峡の事実上の封鎖は、世界の金融市場に大きな衝撃を与えました。日経平均は一時1,500円超の急落を見せ、原油価格はブレント85ドル、WTI75ドル台へと急騰しています。
日本は原油輸入の大半を中東に依存しており、封鎖の長期化は経済全体に深刻な影響を及ぼしかねません。当面は中東情勢と原油価格の動向を注視しながら、エネルギー安全保障や備蓄の活用を含めた冷静な対応が求められます。
参考資料:
- 日経平均大引け 5日ぶり反落 793円安の5万8057円 - 日本経済新聞
- 日本市場:株急反落、米国のイラン攻撃でリスク回避 - Bloomberg
- Oil prices surge, but no panic yet, as Iran war continues - NPR
- US stocks recover, gold rises and oil surges as war with Iran spreads - CNN
- ホルムズ海峡封鎖で日本のインフレ加速の恐れ - Bloomberg
- ガソリン・電気代高騰の恐れ ホルムズ海峡封鎖 - 時事通信
- 原油価格、一時12%急騰 ホルムズ海峡事実上封鎖 - IG証券
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